第5話 だからここどこ?

「……」


 ここはどう見ても草原。大自然のど真ん中。あっ、海外かな?どこかの国立公園的な?もしかしたら俺、知らない間に飛行機とか乗って海外に――って、それはないか。あまりにも生き物の気配がなし。それがね。快晴だが。ちょっとおかしい気がするんだよ。3つね――太陽っぽいのが。

 まあとにかく、何もないところに突如やってきた俺は再度深呼吸。あれから横になり。目を閉じてみたら……普通にちょっと寝てしまうほど気持ちの良い場所だった。今も吹いている風がとっても気持ちいい。なんか。気持ちが温かく。安心するような風がまだ吹いている。


「……っか俺。もしかしてかなり疲れて爆睡中?うん、寝てる?寝てるよな間違いなく」


 とか思い再度頬をつねり。引っ張ってみたが……やっぱり目は覚めない。景色も変わらない。頬に痛みがあるだけだ。何でこんなに夢の中で痛みがはっきりしているのだろうか?まあいいか。そのうち起きるだろう

 

「ってそういえば。帰り道の時に何か眩しかったような――あっ。あれか。雪で何か光が反射――って、なんかうるさかったような――まあそこは気にしなくてもいいか。駅の近くだった気がするし。もしかしたら列車の走行音だったかもしれないし」


 俺はそんなことをつぶやきつつ立ち上がると。もう一度周りを確認する。やはり何もなく大自然のど真ん中。草原が続く――じゃなかった。


「——うん?あれは――木?だよな」


 先ほどパッと見たときは気が付かなかったが。遠くに。ホント遠くに――1本の木が見えた。ってか、結構離れているが。でもそこそこの大きさに見えるので、もしかしたらかなりの巨木かもしれない。そういえば草原のど真ん中だが木は近くに無い。あるのは俺の背丈より低い草花だけ。あとは地面が見えていたり。たまに石。岩があるくらいだ。だからふと遠くに見つけた木がとても異様というか。何かを感じた俺だった。


 結局俺はまるで木に来いと言われているような感じがしたので、巨木というのか。ポツンと何もない草原に生えているどでかい木に向かって歩くこととした。


 ちなみに今の俺は、急いで家に帰りたかった――が。さすがに全く現状がわからない。自分が知らないところに居るため。頭の隅っこでは『仕方ない。今は帰れないかな。うん。仕方ない。仕方ない』と、夢の世界というのか。いや、今も普通に現実世界かもしれないが。勝手に夢と思い。いろいろ現実逃避中だったりする。ってか『就職活動や卒業論文を気にしなくていい』と、頭の片隅で思っている自分がいた。いや、それだけ追い詰められていたんだよ。マジで、今は帰れない。作業できない理由がある。だから気にしなくて良い。っか再度になるが俺は今手ぶらだし。だから何もできないと確定させておこう。

 っか、本当に俺はどこにいるのだろうか?


 そんなことを思いつつしばらく歩いていると……って、全然巨木に近づかない。本当に巨木までは遠かったらしい。かなり歩いているのに、ちょっとずつ木が大きくなるだけ。もっとあっさり到着するかと思ったが。まだ半分来たかわからないくらいだった。でもまあ暑くも寒くもないため。歩いているのにはちょうど良かった。


 すると突然だった。人工物が目に飛び込んできたのだった。


「————あれ?線路?」


 草原のど真ん中に突然人工物がこんにちは。


 明らかに自然の物ではないものが見えてきた。はじめは何かわからなかったが。近近くへと行き確認すると人工物は線路だった。ちょっと錆びている古い?線路が伸びていたが、俺の知ってるいる線路ではない気がした。うまく言えないが。線路幅がめっちゃ狭い。普段見てきた線路って、まあ跨げる幅だとは思ったが。今俺の目の前にある線路は跨ぐというか。普通に歩いていたらその歩幅で跨げる線路幅だった。おもちゃだろうか?とか思ってしまう狭さ。とにかく俺が知っている線路幅の半分くらいの線路が突然現れたのだった。

 

 ってか。おもちゃと言ったが。しゃがんでよく線路を見てみると、しっかりとした鉄のレールが敷かれている。ちゃんとまっすぐ敷かれているし。メンテナンスもされている感じだ。あと――完全に錆びているのではなく。現役?と思わせる感じが少しだがあった。

 そうそう、線路内に入ってから言う事ではないかもしれないが。普通は線路があるなら。人が立ち入らないように柵などがあるはずだが……ここの線路は普通に今俺は跨っているし。この線路はとくに柵などもなく出入り自由というか。大自然。草原のど真ん中に普通に敷かれている。違和感がかなりあるが――いや、でもそういう鉄道もあるか。湿原の中を走る鉄道とかあった気がするし。

 そういえば近くに踏切らしきものはないか。って、こんな人も動物も居ないような場所に。あと、普通にどこでも渡れるような状況で踏切はいらないか。あっ、あと、架線もない。ってことは電気が流れていないということだから――電車というより。ディーゼル機関車とかいうやつが走っているのだろうか?それとも蒸気機関車?SLとかか?


「使われているか――微妙だな」


 俺はそんなことをつぶやきつつ。線路の先を見ると、ちょうど目指していた巨木の方に線路は伸びていた。これは偶然なのか。本当に木に呼ばれているかはわからないのだが。俺は線路の上を歩いていくことにした。ちなみに反対側の線路はまっすぐ大自然を突き抜けていた。あまりに草原が広いからか。その先はどうなっているのかはここからでは見えなかった。ってか、線路の上を歩くということは、もしかしたら猛スピードで何かが走ってくる場所なのかもしれないが。今のところ見晴らしもいいし。音が聞こえたらさすがにわかるだろうということでそのまま歩いた。

 にしてもここは風の音と草が揺れる音しか聞こえない。めっちゃ静かで平和な場所だ。だからこの線路は廃線かな?と思いつつ。線路やずっと先に見える巨木や、周りの景色を見つつ俺は進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る