第4話 落ちこぼれ

 20XX年12月。

 あたりは白く雪が積もっている。多分だが。軽く30センチ以上は積もっているだろう。雪の中に足を踏み込めば足首が簡単に埋まり。膝下くらいまで雪に埋まる。この状況で、除雪されていない道を歩くのはなかなか大変だ。あと行きはまだ明るかったが。今は暗くなったためさらに歩きにくくなった。

 ちなみに人が歩き。雪が踏み固められているところもあるのだが。そこはそこで、凍りだしているのか。雪に埋まることはなかったが。かなり滑りやすく歩きにくかった。だから俺は踏み固められていない場所を歩いていた。


 ちなみに、このあたりの地域はほとんど雪が積もらない地域だが。今年の冬はいつもより寒さが厳しいからか。まだ年内にもかかわらず。すでに2回雪が積もっていた。まあ天気予報などで、寒気が平年以上に強いとか言っていたからだろうが。にしてもここまで降るとは思わなかった。

 天気すら俺の邪魔をしてきているらしい。


 子供の頃なら、雪合戦や雪だるま作ったり。これだけ雪があればかまくらを作ったりして楽しんでいたかもしれないが。今の俺には雪を楽しむ余裕はなかった。むしろ邪魔な存在だった。本当に邪魔だ。


 何故なら、俺、烏森かすもりかおるは、現在就職活動に大苦戦中だからだ。

 俺は大学4年。周りはほとんどが内定をもらっている時期にまだ就職活動中。極寒の中今日も大学のキャリア開発部とか言う場所。書類の書き方や面接の練習などいろいろサポートしてくれるところがあるのだが。そこに行っていた帰りである。

 あっ、そうそう、午前中はとある企業の最終面接だったため。午後から大学の方に来た。ちなみにその面接では――。


『いやー、実はね。とってもいい子が見つかってね。君には悪いんだけど。他で頑張ってくれたまえ』


 面接室に入るなりニコニコとおっさんにそんなことを言われて、とりあえずこちらも笑顔を作り。ニコニコと撤退。即帰ったという結果である。

 『そんなことあるのかよ』と言われそうだが……いや、実際先ほど大学のキャリア開発部の担当職員からも言われたか。

 その際に、俺が何か失礼なことをしたのではないのか。やら、何で最終面接で何回も落ちるんだよ。とか。めっちゃ警察の取り調べのように、キャリア開発部の職員に聞かれたが……俺は何もしていないし。いつも通り。本番までにちゃんと面接の練習もしたし。新聞、ニュースのチェックとか。何を聞かれてもいいように準備もしていた。あと勉強だって筆記試験は既に終わって通過していたが。その後も毎日ずっとしている。でもだ、さらっと数秒で俺は蹴飛ばされた。

 ちなみに俺が何か話す場は今日はなかった。入る。言われる。さようなら。だったからな。ってか、このパターンが多い。俺は基本順調に試験などは進んで行く。そして面接も1回目はほぼほぼ進むことは進む。


 でもちょっと過去を振り返ると。


『ごめんね。』

『他にもたくさんあるから。これをバネに頑張ってくれ』

『今回はなかったことにしてくれ』

『採用人数間違っててねーごめん!』

『私急遽面接役になったのですが。採用をやめることになったことを伝えるようにと――』

『次頑張ってくれ。応援しているよ』

『君はいい人材だよ。他でも十分やっていけるよ』

『今回は縁がなかったということで』


 ……嘘だろ?そんなこと普通ないだろ?おかしいだろ?っていう理由をほぼほぼ毎回聞き。さようならが数十社あったりする。

 はじめの時は、こんなことがありまして――とキャリア開発部の職員に話していたが。それが続けば、まあ俺に問題があると思われだして、何回も面接とかの練習をを強制的にさせられたが――結果は問題なし。むしろ完璧と毎回言われる結果。

 でもだ、就職先がずっと決まらない俺だった。


 また俺はキャリア開発部内では、かなり超目立っていたのか。有名人というのか。どの職員に担当が当たっても「あー、また君か」という表情で出迎えられるという。

 そうそう、そういえば今日は『あと決まっていないの君1人なんだよ。君が決まったら今年の4年生は早々と就職率100%。だからそろそろやる気出してくれ。ホント1人なんだよ』とかなんとか、普段は見ないような大学のお偉いさんも居たような……っか、俺以外既に全員決まっている?ほんとかよ。と思ったが。もう12月。そんな可能性も無くはないのか。

 いやさ、自分で言うのもだが。俺めっちゃ頑張ってるんですけど?これ以上どうしろというね。俺ははじめから業種も何も絞らずに、どんどん受けている状況なんですけど?まあそんなこと口にはせず。笑顔でニコニコ場の空気を平和なものにしようと俺は頑張っていたが――まあ、とにかく、俺は現状就職先が全く決まらないだった。


 ちなみにだが。既に100社弱受けている俺だったりする。これマジで。下手したら100超えているかもしれない。

 あと、これはいい訳になるかもしれないが。俺は特にこれといってアピールする事がなかった。長年していることも無ければ、趣味と言えるものもなかった。そこまで深く何かに没頭したことがない人生だった。ただ普通に生きて――そのままとりあえず大学まではやってきたが。大学に入り。この先の進路が決まるのかふと不安になり。周りから焦り過ぎやら言われつつも。大学1年の後半くらいの時期から自己分析?というのだっけか。とりあえず出来る準備を全てして、大学や学外で行われる対策講座。とかいうものには出れる限り全て参加し準備をしてきた。

 友人に遊びに誘われても、それより講座だ。家でも毎日ずっと勉強していた。気が付いたら周りには友人はいなかったが――でも俺は先の事を考え黙々とできることをした。それもあって、面接で大学時代の事を聞かれると――だが。それ以外の事は難なく話せるレベルまでの練習や。勉強は出来た。 


 まあ自分のアピールをするならで、しいて言えば、俺はどこでも即馴染めるということはあるが――まあこれがアピールなのかわからなかったので。あまり言うことはなかった。

 昔からだが。俺は初めてやること。行くところでもいつも通り過ごすことが出来る。って、そんなの普通の事かもしれないが。まあ俺は普通の事が出来ると思っている。

 小学校では何もするにも。どこに行っても社会見学や修学旅行でも普通にどこに行っても緊張とかなく。話すこととか。いろいろすることは出来た。

 中学校でも違う小学校の人らが居ても、まあ日常会話というのか。接するのには問題なかったし。学校生活。部活動、その他――そうそう、職場体験とかでも普通に言われたことを出来たし。大人の輪にも入れた。

 高校の時でも、中学同様他行の生徒とも普通に接することは出来たし。部活も普通に加われたし。と、特に生活するうえで、人との接し方。輪に入ることに関しては。普通に出来ていた。

 だから俺は普通の事は出来ると思っていた。でもこれと言って、普通に過ごしてくる以外何もせずに大学まで来て、どこでも馴染みやすいというか。初めてのところでも緊張しない。って、こんなのよくよくあることだろうから。個人のアピールにもならないよな。みんな社会では普通に馴染んでいるから毎日があるんだし。などと、自分はアピールすることがないと気が気が付き。不安になったから、早くから就職活動をしていた。ちなみに就職活動中も緊張というのはほとんどなかった。どこに行ってもいつも通りだった。だから、いつも問題なしと思い活動をしていたのだが――。

 

 まあなんかいろいろ無駄に語ってしまったが。とりあえず、俺はいろいろ早くからしているのに、ホント春が全く見えない状況にいる俺だった。

 現実って……残酷というのか。まあ自分が悪いからこうなっているのだろうが。にしても、社会に俺は入れてもらえる気配すらなかった。

 そうだよ。社会に入れてもらえる雰囲気がないから、俺のどこでも馴染みやすいということは誤りだな。普通の事が出来ない人間だったらしい。これは訂正だな。先ほどの俺嘘だったらしい。俺は馴染めない子らしい。よし。OK。訂正終了。


 ってことで、話を戻し。先ほどもキャリア開発部の職員というか。大学のお偉いさんの話をしたと思うが。気がついたら周りの他の学生らは、いつの間にか内定もらい。今では、卒業論文を作るのが大変やら言っていたが……なんだろうね。俺だけ決まらないこの状況だよ。

 ちなみに俺も就職活動と同時に卒業論文を作っていたので、かなりハードな生活だった。卒業論文も来月には提出なのだが。まだ半分ほど、こちらは就職活動が落ち着いたら。と思い計画を立てててやっていたのだが。就職活動が全く終わらない現状で、結局同時進行になり。ぐちゃぐちゃに……こちらもバタバタである。まあでも卒業論文は何とかならなくもないような感じだが。でもバタバタに変わりはない。

 

 基本今の俺の生活は、日中は説明会に行ったり。試験を受けに行ったり。帰ってきたら次の試験対策や予定チェックなどをしながら卒業論文である。そしてたまに大学で講義もまだる。ホントバタバタの生活だ。とにかくどちらか終わらせないと。と思いやっていたが。

 両方終わらない。自分の力の無さというか。いろいろて泣けてくるよ。食事や睡眠時間を削りに削っても何も片付いていかない最近だった。


 そして現在、雪降る中。午後から大学に行っていた。ちなみに夜であり。周りはすでに真っ暗。キャリア開発部に寄っていろいろ言われ。その後は、卒業論文の添削を頼むため。教授棟。先生らの部屋がある建物にも寄って、って、まあ時間的に担当の先生はさすがに留守だったので、部屋の前にあるポスト?というのか。課題などを提出するところがあるのでそこに入れてきた。そして今、一人暮らしちゅうのアパートへと帰るところである。


 今日も朝から面接行って。その帰りに大学。なかなかの長距離移動で疲れた。そしてめっちゃ寒い。夜になりさらに寒い。風があるので、雪は容赦なく俺の顔を攻撃してくるし。本来ならちょっと雪か風が弱くなるまで大学内の建物で待機とかしたいのだが……明日も朝からまた予定があるため。早く帰って準備がしたい。なので足元に気をつけながら駅へとちょっと早足で向かっていたのだった。マジで寒い。


 そして、もうすぐ駅と思った時だった。急に爆音のエンジン音が遠くから――と思ったら、あっという間に目の前が明るく。眩しくなった。あとは、けたたましい音が聞こえたような――と思った時だった。

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