第2話 はじまり
気持ちのいい風が吹く草原。
優しく身体を包むような風が吹いている。寒くも暑くもないちょうどいい風。とっても気持ちい。
あと、どこからかいい香りもする。花の香りだろうか?何の香りなのかはわからないが。リラックスできる香りがあたりに漂っている。ちなみに見渡す限り花は――たくさんありすぎてどの花の香りなのかはわからない。一面緑。花はいろいろなところに咲いている。ポツンと咲いているものもあれば。一カ所に固まっているような花もある。
現在の俺は疲れた身体を癒すために、大自然に囲まれる場所へと旅に出た――という事ではない。気が付いたらここに居たである。確か先ほどまでは雪降る中で寒かった気がするが。今はちょうどいい温度。あと――俺は大学から帰るところだったはずなのだが……どうなっているのだろうか?そうそう確か夜だった。今はどう見ても――昼まだ。太陽が真上にあるし。なんか太陽っぽいのが3つくらい見える気がするが――気のせいかな。
現状を説明するなら――何だろうか。ちなみに俺。自慢ではないが。いろいろなところにすぐ馴染むことが出来る。まるでその場所にずっといたように即なじめるので、今のところそこまでパニックではない。いや――まあそこそこパニックだがね。顔には出ていないと思う。
とりあえず考えてみる。今の現状を。考えられることは――俺自身が記憶喪失?でここに来るまで。来たまでの過程をすっかり忘れている。ってのは――考えにくい。いやあるかもしれないが。うーん。である。あとは――異世界に飛ばされた?これこそありえないか。
本当に突然の出来事だったと言えばいいのか。
少し前まで居た場所から突然全く知らない土地、場所に移動していたら普通は驚くと思う。間違いなく驚く。絶対驚く。驚かない人はいないだろう……だよな?だって今まさに俺がその状況だから。だから訂正しよう。すぐ馴染むとか言っていたが。これはさすがに馴染めない。無理がある。何が起こったのか今すぐ誰か説明してほしい。
俺はなんとか冷静を保ってはいるが、頭の中では……。
「ここどこだ?」
「なんだここ?」
「えっ?えっ?えっ?えっ?えっ?」
「いやいやいやいやいや、マジでどこ?」
「————あっ、夢か。頬をつねればいいか」
たくさんの言葉がくるくる回っていた。そんな中とりあえず頬を力強く引っ張ってみる。
ギュゥゥゥ……。
音が聞こえるのではないかと思うくらい。力一杯頬を引っ張ってみた。千切れるくらい強めに引っ張ってみた。そしたら――普通に目が覚めた。なんだただ俺は疲れていただけで、寝てしまっただけだったか。
となるかと思ったが。そんなことはなく。全く同じ光景が広がっていた。大自然気持ちい風が。良い香りが漂っている。
「めっちゃ痛いのに、目が覚める感じもない……か」
片方の頬を触りつつつぶやく俺。そして再度頭の中はいろいろな言葉がくるくると回り。
「なにがどうなったんだよー!?」
「わけわかんねー!!」
今度は少し声にも出た。叫んでみたが。特に誰かが返事をしてくれることもなかった。
緑一杯の草原の真ん中でちょっと片方の頬を赤くした男。
とりあえずわかったこと。ここ現実世界っぽくはない。ってもしかして天国?地獄ではない気がするが――ってそう考えると俺――死んだ?なるほど。
「——あれ?俺落ち着いてきた?」
草原の中1人でつぶやく俺。つい数分前までは馴染めるかー。だったが。まさかのちょっとだけパニックのち……こんな状況にも既に身体が慣れだしているみたいだった。
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