第18話 リリー 8
「出店調査よ」
渋る警備員をまあまあして、賑やかになった孤児院の門前、出店の人たちが挨拶してくれる中を経営者顔して闊歩する。
わたあめは無い。だけど小さなカステラに似た焼き菓子屋台は人気で、子供が集ってる。
「賑やかね」
けっこう出店が並んでいて、見応え十分の神社祭りを思い出す。石投げとか、弓で景品を射る屋台、甘さ控えめ飴屋さんもあるよ!
その立ち並ぶ屋台の端っこ、どの店よりもやる気なく簡易的に地面に布が広げられた店に赤毛を発見した。
おや? あれはファンくん?
雑に並べられた南国のお土産品。そばかす商人の店の前に、ファンくんが先客でお買い物していた。
「いらっしゃい!」
店員でもない私の背後からの呼び掛けに、本物の店員とファンくんがきょとんとしていたけれど、そこもまあまあして商品を見てみよう!
「あ、これって…」
見たことある。
南国のお土産って、過去世も現在世もどーしてこー似たり寄ったりな雰囲気を醸し出すのだろう。
何かの種の人形が藁の色違いの腰巻きを巻いている。絵の具で描かれたにっこり笑顔。
かわいいじゃん。
「じゃあこれを頂こうかしら」
私の即決にファンくんは目を丸くしてたけど、お揃いで買っちゃう?
もしかしたらこの南国の人形は、御守りかもしれない。ピンクの紐が巻かれているこの子は、持つ人の恋愛成就のサポーターかも…。いや、絶対そうに違いない。
(そう考えると、何運のサポーターを選ぼうかな…。恋愛は、相手が現れてからが勝負だから…取りあえず、友情運?)
黄色は金運。青は仕事運、緑は健康運、友達運て、どれ?
私の数少ないお友達のピアンちゃんは、お仕事が忙しくてなかなか学院に来ない。悪役同盟ではなく、そろそろ普通に友達の輪を広げたい……ん?
輪?
(あれ? この形って、円?)
商品を広げた大きな風呂敷。その下に、どこかで見たことのある模様がはみ出ていた。
「……」
土の地面に石でガリガリ描いてある。
どこだった?
円、異国語の羅列、この模様…あ!
独り言が漏れ出てた。私の呟きに「え?」って二人がこっちを見つめる。
「魔方陣?」
ハッと地面を見たファンくんが、「駄目だ!」と聞いたことのない大声を出した。
ーーカッ!!!
「!?」
「姫様!!」
ルールさんの怒鳴り声、眩しくて目も開けられない程ピカッと光ったこれは、セオさんを飲み込んだあれと同じもの?
「………………?」
目を開けると、フラッシュのせいでぼんやりした視界。シパシパを繰り返して見回すと、辺りに人影は全く居なく、見晴らしのよい草原に座っていた。
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