服を着ることで生まれるエロスもある
「服、わざわざ買ってきてくれてありがとう! これで水着or全裸生活とおさらばできるよ!」
「遅くなってごめん。本当は真っ先に用意すべきだったんだろうけど、色々あって混乱してて……」
「気にしてないよ! 何から何までお世話してもらってるんだから、感謝しかないって!」
撮影会の翌日、ライオが買ってきてくれた服に着替えていたモモは、色々と面倒を見てくれる彼へと改めてお礼を言っていた。
変な噂が立つことを防ぐために女性ものの服を買うことができなかったわけだが、それでも数日ぶりにまともな服を着ることができて喜ぶ彼女に対して、ライオがこう問いかける。
「あのさ、昨日着た水着を作ったスキル? っていうのがあるじゃない? あれで普通の服とかは作れないの?」
「う~ん……作れるとは思うんだけど、何でもかんでも無限に作れるってわけでもないみたいなんだよね。その辺は私もいまいち把握できてないから、確認中なんだ」
「そっか……」
昨日、モモが披露してくれたオレンジ色のビキニを作ったスキルを使えば、衣類に関しての問題は解決するのではないか?
そう考えてそのスキルについて彼女に聞いてみたライオであったが、神から与えられたその技能についてはモモ自身もまだ完璧に内容を理解できているわけではないらしい。
グラビアアイドルとしての活動で使う衣装しか作れないのか、はたまた布地面積や凝った作りになっている服を制作することができないのかはわからないが、今はあの程度のビキニを作ることで精一杯ということなのだろう。
確かにそのスキルをむやみやたらに使えるのであれば、服屋でも経営すればいいもんな……と、思ったところでこの件について考えることを止めたライオは、そこで自分が買ってきた服を身に纏ったモモの姿を目にして全身を強張らせる。
「うん……まあ、胸がキツイけど、大方は問題なしかな。ありがと、ライオ」
「ああ、うん。それは、良かった……!」
シンプルな無地の黄色いTシャツとショートパンツ、それがライオが買ってきた服だ。
女性であるモモのために服を買っていると思われぬよう、自分が着てもおかしくないような衣類を購入したわけなのだが、それを着た彼女の姿は今までよりもずっとまともなのにまともじゃないという意味不明な状態になっている。
どどんっ、と張り出たモモの胸。この二日間で幾度となく露わになった肌や谷間を目にしたそこが、また新しい衝撃をライオに与えている。
その山脈がシャツの胸部分を大きく押し上げているせいで丈が短くなっており、意図せずモモのへそが露出している上に服もまたパツパツ状態になっているのだ。
俗に言う乳カーテン状態になっているモモの姿の破壊力に言葉を失うライオであったが、下半身も結構すごい。
自分と彼女との尻のサイズ差を考えていなかったせいかやっぱり桃のような丸みが見て取れる感じになっているし、そこから伸びる太腿の健康的な肉付きにも目を引かれてしまう。
(さ、去れっ、邪念っ! 消えろ色欲っ!! 神との誓いを思い出せ、僕っ!)
乳カーテン&へそ出しルック&太腿露出状態という、服を着ても……というか、服を着たことで発現してしまったエロスと直面したライオは、必死にそれを頭の中から追い出そうとしている。
そんな彼の葛藤を知ってか知らずか、モモはぺろりとシャツを捲り上げると水着で隠された乳房を見せつけてきた。
「下着に関しては昨日作ったこの水着で代用するよ。洗濯要らずだから、これ一着でどうにかなると思う」
「ぶっふっ!?」
いちいち見せなくていいというツッコミを口にすることもできず、盛大に噴き出すライオ。
隠されていたものが露わになるというのはずっとそれが見える状態にあることとは別のエロスがあるのだなと、また一つ余計な知識を得てしまった彼が咳き込む中、真剣な表情を浮かべたモモがその場に正座しながら口を開く。
「あのさ、ライオ……あなたには本当に感謝してる。急に現れた私の面倒を見てくれたり、ご飯や着るものを用意してくれたりしただけじゃなくて、グラビアの撮影にも協力してくれた。何一つ不満はないし、心の底からありがとうって思ってるんだけど……あと一つだけ、我がままを聞いてもらってもいい?」
「な、何……?」
グラビア撮影の時と同じくらい真剣な様子を見せるモモに気圧されつつ、彼女の要求が何であるかを尋ねるライオ。
深呼吸を行って心を落ち着かせたモモは、彼の顔を真っ直ぐに見つめながら言う。
「昨日撮影した写真……あれを、街に売りに行かせてほしいの!」
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