第20話 書けた!(見直し大事)
それから、いろいろな小説を食べたひなは、一人称で書き直すことにしたのでした。
モコりんは、お茶をだしたり、休憩を取るように声をかけたりして、ひなの執筆をサポートしました。
◇
「できた! 今度こそきちんとした童話ができたよ!」
ひなはドキドキしながらプレビューを押しました。
そこには、美味しそうなりんご飴が浮かんでいました。
「じゃあ、投稿するね」
「ちょっと待ってよ!」
モコりんは、投稿しようとしていたひなを止めました。
「なんで?」
「なにか見落としているかもしれないよ。みちのさんに見てもらったら?」
そう言われては仕方がありません。みちのさんに連絡をとりました。
◇
「できたの? じゃあ見ましょうか」
みちのはひなの家までやってきて言いました。
「じゃあ、ひなちゃん。声に出して読んでみて」
「えっ? 声に出すんですか?」
「そうよ。いいから早く」
ひなは恥ずかしかったのですが、いつも協力してくれているみちのが言うので、声に出して読んでみました。
「どうだった?」
「漢字の間違いや脱字が見えました。あと所どころ読みづらいところがありました。特に語尾とか……」
「そうね。読みづらい所はうまく書けていないところよ。読みやすいように直してみて」
ひなは漢字を直したり、「だった」を「でした」にしたり、難しい背伸びをした言い回しを簡単な言葉に直したりしました。
「出来ました」
「どう? よくなった気がしない?」
「はい! すっきりしました」
「ひなちゃん。この物語、どんな人に特に読んでほしいかな」
「どんな人に? 子供とか、大人も読んで欲しいし……」
「子供に読んで欲しいのね。この漢字子供が読めるかな?」
「難しいですね。ひらがなにした方がいいですか?」
「そうねぇ、ルビ振りましょうか」
「ルビ、ですか?」
ひなは聞いたことがない単語だったので、頭を
「ほら、漢字のうえにフリガナが付いてる時あるでしょ。あれよ」
「ああ。ありますね」
「あれがルビっていうの。カクヨム記法を出して」
ひなは、スマホの右上のマークを押し、その後左上のノートのマークを押しました。
「ここにルビってあるでしょ。漢字の後ろにカーソルを合わせたら、ルビの枠を押して。 《 》 の二重カッコがでたでしょ。 その中にひらかなを入れるの」
ひなは言われフリガナを入れました。
「じゃあ、プレビューを押して」
「わあ、フリガナが付いてる」
「そう、それがルビよ。難しそうな漢字にルビをふってね」
ひなは、頑張ってルビを振りました。
「できました」
「あとはね。そうね、『・・・』は「……」の三点リーダーに変えてね。よく分かんないけどそういう決まりなの。…は偶数で使ってね。これも良く分からないルール」
「よく分からないルール、多いんですね」
「そうね。でも覚えておいてね」
ひなは言われた通り直しました。
「じゃあ、もう一回読んでみて」
今度はすらすら読めました。
「はい、よくできました。完成ね」
ひなの前には、キラキラと光るようなきれいなりんご飴が浮かんでいます。
「きれい。これを私が作った作ったのね」
「そうね、さっきの状態よりおいしそうでしょ」
「はい!」
「できたと思ってからも見返すことが大事なのよ。分かったかな」
「はい! ありがとうございます」
ひなは、一番最初のりんご飴を思い浮かべました。あの濁った形の悪い飴が、こんなにステキになったのがなんだか不思議でした。
◇
「みちのさん、ありがとうございます。これで投稿しても大丈夫ですよね。じゃあ、押します。見ていて下さいね」
ひなが、公開のボタンを押そうとした瞬間です。
「待って!ひなちゃん」
みちのは、ひなを止めました。
「何でですか? こんなにキレイなのに」
「早く出せばいいという事はないわ。まだ足りないものがあるのよ」
「足りないもの……ですか?」
「そう。それを知らずに始めると、どんなにいいものでも目に止められず、読まれない地獄に落ちるのよ」
「読まれない地獄……」
ひなはあの時のバケモノを思い出し、ブルっと体を震わせました。
「なにが足りないのですか?」
「ひなちゃん。お店の準備が出来ていないわ。お店を飾り付けましょう。屋台まで行くわよ」
と言うと、ひなを連れて外へ出たのでした。
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