人類が引き起こした戦争によって汚染され、交配した世界。そんな世界に降り立った二柱の女神は気まぐれに奇跡という名の呪いを与える。また、自分たちが預かる世界の人間をこちら側に召喚することも決めた。
そうして召喚者たちと協力しながら、人類が己の罪を精算する日々が始まる──。
ゲーム原案ということで、本作はポストアポカリプスを舞台とした物語の始まりを描いています。戦争によって汚染された世界に、異世界者を召喚する。その召喚される側がプレイヤーなのでしょう。
特筆すべきは、これを読んだ読者(制作者)が思い描く想像の幅です。作中、名前は上がるものの深く掘り下げられることのない単語や人物の数々。また、薄暗い洞窟や汚染された雨に烟るビル群なども細部まで描写されることはありません。
普通の小説であれば瑕疵となりうるそれらも、本作がゲーム原案であることを鑑みると途端に「想像の余白」となって、読者である私の想像力を掻き立ててきます。登場人物たちが歩いている「ファクトリー」「地下道」とは? 彼ら彼女らの見た目は? などなど。そこに想像し、創造して色を付けるのは“読者”あるいは“クリエイターさん”なのでしょうね。
そうした情景の余白もさることながら、しっかりと練り込まれた世界観における人々のこれからも想像することができます。人間と召喚者たちの軋轢、軍部、警察の怪しい動き。それらの伏線だけが示されていて、それをどう活かすのか。思わずその先を描いてしまうのは、下地にある退廃的な世界観だけはきちんと描かれているからでしょう。
この終わりから始まる世界に生きる人々をどう動かすのか。それも“読者”、“クリエイターさん”次第なのでしょう。
読み物としてもそうですが、何より発想の起点として読んでみるべき作品。プレイヤーはどうやら奴隷という底辺からのスタートの様子。読者さんはどんな“続き”を描くのでしょうか…? 思わず創造(想像)してしまう、そんな不思議な作品です!