第44話 建設的なこと【3】

「ヨリ姉様!この『天空壱航空機』を量産させ編隊を組み敵に爆裂玉を降らせる『空爆』ってワクワクしません?」

 キヨの構想『天空壱』の編隊で敵方の城又は布陣に、迅速にかつ集中的に空から爆裂玉を降らせる『空爆構想』は想像を絶する画期的攻撃方だ。

「空から爆裂玉を降らせる!出来たら無敵だな!!」

「出来たらでは有りませんよ、直ぐに叶う新戦力ですわ!」

 空を飛ぶカラクリは凄いと思うが、俺は大袈裟な異音を響かせて飛ぶ『天空壱』の有用性が理解出来て居なかった。


 俺やヨリと違い、コブやゴンゾ達の『流星』や『雷神』それに甲賀衆による鉄砲や薬筒の製造を身近に見て育ったキヨは、私達とは違った物が見えるようだ。


 キヨは『天空壱航空機』の実用化将来性を見据え、量産化を急がせて『天空壱』が5機になり『カトウ天空戦闘隊』が結成され、順調に訓練が始まった半年後の話。



 薩摩の国に有名な船大工一門がいた。

 その名はオウテキ家、名門船大工の7男として生まれながら船大工の修業をサボり奇行を繰り返すシチロウは、親方衆からひんしゅくをかっていた。

 大量の銅板を買い込んで、何やら船とは違うと思われる事を始めた事により、ついにシチロウは当主から勘当オウテキ家から追放された。

 勘当され当座の金子も使い果たしてしまった。

 シチロウは奇抜な才能以外はボンボン育ち、食べ物を手に入れる算段掻っ払いも出来ず行き倒れ寸前になった頃、運良く情報活動中のネゴロ衆に拾われネゴロ▪タイチボウに連れられ石山城改名『紀伊城』にやって来た。


 タイチボウから謁見の要請があり、面白い男を見付けたと側近のナオを通じて連絡を受けた。

 王となった俺は、軽々しく目通りを許す訳に行かないそうだ。

 直ぐに面白い男を見たかったが、緊急で無い謁見との事で3日後に会う事になった。

「王様!面白い男を連れて参りました。シチロウ挨拶を!」

「モウリ王様!お目通りありがとうございます、私はオウテキ▪シチロウと申します」

「王様、このシチロウは名門船大工オウテキ家の七男で有りまして、蒸気船を考案模型を持参して居ります!」


 サルトビが持参した模型を受け取り、俺に渡した。

 木彫りの船に銅製の平たい湯タンポが積まれ、湯タンポから二本の鉄棒が伸びて船尾から突き出している。

 良く見ると二本の鉄棒は中空になっている。

「このカラクリが蒸気船と言う物か?」


 実演したいとかで浴室に移動、水に浮かべると鉄筒からブクブク泡が出てきた。

「これで釜に給水が完了しました、これから釜を熱します!」

 シチロウは模型船の湯タンポ(蒸気釜らしい)の下に短い火の点いたロウソクを入れて手を離した。

「おっ?おおっ!!動いた!」

 小さな船は湯槽ゆぶねの中をスイスイ進んでいる。

「大型の船に大型蒸気釜を搭載、木炭で強く熱すれば高速で動く蒸気船になります!」

「これは風に頼る帆船とは違う…凄い!直ぐに実用船の造船に取り掛かれ!」

「モウリ王様がそう言って下さると思い、既に伊勢湾に船大工と鍛冶屋を招集し蒸気船造船所の目処もついて居ります!造船の許可宜しいですか?」

「許可する!」

「有り難う御座います!モウリ王国に来て良かったです!お陰で夢が叶います」



(この船は凄い!殺し殺されの殺伐とした武器と違う!!海運の革新広く万民の役にたつ建設的な発明だ!!俺はこれを望んでた)



 ***

 第一部終了です

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る