第43話 建設的なこと【2】

 鉄じゃない金属で作られた機体は、巨大だが非常に軽いようで、4人の弟子によって工場から押されて土蔵の大扉から外に出された。


 固く平にならされた巾10㍍滑走路が2㎞程真っ直ぐ続いている。

 機体は一番端に設置された、設置されて機体の凡その寸法が巾10㍍全長7㍍と推測された。

 トビ▪カトウが俺の前に走って来て緊張した声で「モウリ王様!これより『天空壱航空機』飛行実験を開始致します!」と

 直立不動で報告をした。


 機体に取り付けられた梯子はしごを上り、操縦席にトビ▪カトウが納まった。

 カトウは、複雑な格子に透明硝子が組み込まれた、上部屋根を後部から引っ張り出し、前部窓に引っ付け固定したようだ。

 操縦席は硝子屋根で密閉された。

「あの密閉は意味が…あぁ風防か……風を防がないといけない程高速になるのか?」

「ヨリ姉様!あのギヤマンはソーダ硝子で無く、安全なツブツブに破れる石英硝子なんですよ…凄く高価ですけど」

 キヨがまた理解出来ない高度な説明をしてくれた。



「飛行準備終ったようです、カトウが合図を送っています、ヨリ姉様実験初めの合図、手を上げて貰えます?」

 促されたので、手を上げてみた。

 カトウが深々とお辞儀し、直後機体後部から炎が噴射した。

 例の鬼の遠吠えが辺りに響き渡った。

『流星』や『雷神』のシュバーーを思い描いて居ると予想外、意外にゆっくり『天空壱』が動きだした。

「成る程!長い滑走路この為に必要なのか」

「ゆっくり飛び立たないと、操縦者が潰れたり首の骨が折れて死んじゃうそうで、わざとユックリ飛び立つようにしています」


(発射の勢いで操縦者が潰れる?そんな事が有るのか?)

 ※第二次大戦中、ガソリンエンジンのプロペラ機での飛行速度限界を越える為ドイツが開発した、V1号パルスジェットはパイロットが発射Gで首の骨を折り死亡する事故が続出有人を断念し、V2号無人ミサイルに変更したとか。

 複雑なエンジンのガソリンプロペラ機を飛び越え、火炎ビンに使えない不要な灯油を燃料に使う、非常に簡単構造のパルスジェットを鬼才集団が開発効率的飛行速度度外視、吸気弁すら考える事無く能力が非常に落ちるが安全なパルスジェットエンジンが開発されたのは必然的な事であった。

 現在灯油給湯設備はパルスジェット装置で行われて居ります。



「ウ"ォンウ"ォン」と響く唸りが「ウォ~~~ウォ~~~」と変わり。

 1㎞程滑走し『天空壱航空機』は見事空に向け飛び立って行った。

 飛び立ってしまうと『天空壱』の速い事!あっと言う間に煙を残し何処かに消えてしまった。

「ヨリ姉様!暫くすると、最高速度でこの上を通過します!飛び去った方向を注意して見ていて下さい!」


 キヨが言っていた通り、僅かな時を待つ内東の空から例の鬼の遠吠えが聞こえて来た。

 異音が響いたと思って見ていると「ヒュン」と一気に『天空壱』が通り過ぎた。

「速!!一瞬で見えん様になった!!凄い速度だな!」

「ヨリ姉様!無事着陸したなら、本日の飛行実験は終了です!」


 キヨが言っている内『天空壱』が降りて来て、着陸と同時に火を噴くのが止まり徐々に速度が遅くなり、やがて『天空壱航空機』が停止した。

 離陸程距離は必要で無いようで、着陸には700㍍程の距離で止まっていた。

 風防を開け、トビ▪カトウが飛び降り俺の前に走って来た。

「トビ▪カトウ!見事な操縦、天晴れであった!!」

「はっ!お誉めの言葉有り難う御座いまする!」

 初対面不気味なミイラに見えたカトウだったが、無邪気な笑顔が子供みたいに可愛かった。

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