第40話 モウリ王国に集う人材

 モウリ城(元ナガス城)は、伊勢の外れに位置する。

 オウナガが紀伊半島に用意した新居城は、石山本願寺跡地に建てられた物で畏怖堂々した巨城であった。

 オウナガの意気込みを感じる。


 ※史実では、豊臣秀吉が大阪城を築いた場所である。


 和泉のイケイケサイカ衆は壊滅させた。

 富が集中する堺港も王国内になった。


 ※雑賀衆さいかしゅう根来衆ねごろしゅうは種子島で武装した強力集団との史実ですが、この世界では種子島に鉄砲伝来せず甲賀の協力で開発したモウリ以外鉄砲を知らない設定です。

 従って根来忍軍も火薬は勿論鉄砲も知りません。


 延暦寺や本願寺を焼き滅ぼした、魔神モウリ▪ヨリを心底恐れネゴロ衆オオタ衆達は絶対服従の低姿勢。

 クマノ衆にユカワ衆は、恐れへつらう感じだった。

 神道の大御所、キタハタ家アリマ家ホリウチ家の仏閣で無い3家は好意的態度で、モウリ王国ヨリ王を認めた。

 気が重く嫌々行った謁見は、思いの外順調に終った。

 名実共に紀伊半島は、モウリ王国になった。


 伊賀に甲賀、根来と忍集団が軒並み配下に加わった。

 伊賀衆は戦闘特化、甲賀衆は技術特化、新参で信用が今一置けない根来衆は、奇人天才の類いを集める為、また情報収集の為に全国に派遣した。



「モウリ王!堺に奇人と言うか天才と言うか…理解不能な奇人が居りました」

 ネゴロ衆が早速連れて来たのは、かみなりを造った為、人心を惑わすとの騒乱罪で和泉所払いの処罰を受けた、シラガ▪ゲンと言う青年だった。

「モウリ王!是非このシラガ▪ゲンを取り立てて下され!お役に立ちます!」

 ガラス菅に着いた取っ手をクルクル回すと、ガラス菅内にイナズマが走った。

「おう!見事なカラクリ!仕官を許す!モウリ城のウリモ▪コブ流星隊隊長の基で技術を磨け」

「はっ!慎んでお受け致します」


「大殿!伊賀衆にカトウと言う変人が居るぞ」

 サルが思い出したように教えてくれた。

「カトウ?どんな奴だ?」

「呼んで来る!待ってて」


 暫くしてサルトビが連れて来たのは、ミイラの様に痩せこけた不気味な男だった。

「大殿様!飛びカトウに御座います!」

「飛びカトウ?何が出来る?」

「御前失礼します!」

 着いて行くと、カトウは俺の目の前、石山城天守閣から飛び立った。


 カトウは細長い手足を拡げ、ダブついた忍び装束が風をはらみ、見事に滑空しムササビの様に空を飛んで居る。

「見事な技だ!トビ▪カトウ!お主も特別に取り立てる!流星隊隊長のウリモ▪コブの部下になれ!」

「はっ!慎んでお受け致します!」


 同じ様な鳥人間が備前を追放され、根耒衆に連れられてやって来た。

 名をウタ▪コウキチ、飛行機を組み立て備前京橋から見事に飛んだそうだ。

 騒乱罪で牢獄に捉えられ、百姓町民ならば死罪の所豪族だった為、備前国追放で済んだそうだ。

 残念ながら実際飛んだ飛行機は、破壊焼却されたそうだ。

「ウタ▪コウキチ!流星隊員として取り立てる!流星隊隊長のウリモ▪コブの配下になれ」

「はっ!有り難き幸せに存じます」



 越後では見世物で有名人との自動人形師、カラクリ▪イエモンが最後にやって来た。

 彼はモウリ王国で奇人変人天才を配下に取り立てて居る、との情報を頼りに単身弟子を引き連れ訪ねて来たそうだ。


 情報収集として根来衆は役に立つ、越後や出羽で次々燃える水が発見されたとの情報だ。

 実物も手に入れて来たそうで、実際見ると期待に反し臭い泥水だった。

 処分に困った臭い泥水は、コブの所に丸投げした。


 酒の蒸留装置の改造で、簡単にシラガ▪ゲンが揮発油ガソリン灯油軽油重油に精製したそうだ。

 其々の油の特性を研究し、コブ達流星隊は、臭い泥水の有効性に逸早く気付き、原油を安価で独占買い付けに成功した。

 俺の出来る事って、研究開発の資金を無尽蔵に与える事位か。

『流星』『雷神』『火星』には劣るが、攻撃用『火炎ビン』だけでも与えた資金以上の価値ある大発明だ。

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