第39話 苦勝の結果

 不死身の様な妖怪ジジイ、流石のモモチも俺に蹴り跳ばされた状態からピクリと動かない。

 ぶっ倒れそうな疲労紺倍ひろうこんばいの身体にむち打ち、残心、構えを解かない。

 マルコ達鬼が取り押さえ、状態を確認している、喉を押さえ瞼を開き、胸に耳を置き生死確認を終えたようだ。

「ヨリ様、息絶えた様子です!」

「そうか……」

 俺は戦意は無いが、尚も回りを取り囲む伊賀衆を睨んだ。

 伊賀精鋭20人が、一斉に土下座した。


「ん?どう言う事か?代表者、説明せよ!」

「お恐れながら、それがし後任モモチが、大殿様にご説明させて頂きます。

 耄碌もうろくして居たが、いまだ伊賀最強のモモチを打ち滅ぼされたモウリ大殿に、伊賀1000は配下に加えて頂きたく、厚かましくも平伏して居ります!」

「そうか…金で動く伊賀衆が、金以外で動くと言う事か?」

「はっ!かねてから、荒瓦衆を配下に加え重用されて居ると聞き及んで居りました!

 戦国の世の移り変わり、伊賀衆の今後をかんがみモウリ大殿に仕え運用して頂くのが、伊賀の生き残るすべと考えました」


「……そうか…伊賀衆の仕官許す!」

「はっ!!有り難き幸せに存じます!この者達各々50の忍軍を従える精鋭!残して置きます!それがしは伊賀に返しモウリ大殿に仕えし事徹底して来ます!」


 成り行きを静観していたナオ達が俺を取り巻き、マルコ達が俺の腕をもみ出した。

「情け無い!初陣の若武者じゃあるまいに、力を入れ過ぎ剣から手が離れん」

「あの一瞬の気の緩みが生死を分ける死闘でした、当然です」

 安堵と心地良さから微睡まどろんで居たようだ。

 揉み解され弛緩した腕から剣が落ち、俺はナオの膝枕でいつしか熟睡していた。



 膝枕のナオには申し訳無いが、スッキリとは程遠い寝起きだった。

 心の奥底にとどこおる固いしこりが気になった。



 天神山城は、天守閣屋根瓦からゆっくり消火不能の延焼、時間をかけ全焼したそうだ。

 女子供に雑兵は投降、焼け残った城壁を盾に尚も好戦の構えのナガ▪カゲトラに向け、サヨが雷を一撃大勝利終戦とあいなったそうだ。



 オウナガは、スギ氏勢力圏越後攻略に備え兵力増強をはかるとか「善きに計らえ」と言い残しモウリ精鋭隊と伊賀精鋭を引き連れモウリ城に帰城する事にした。


 早目の大休止を決め、覇気の無い俺を心配し、サヨが話し掛けて来た。

「大殿?どうかされました?」

「サヨ達が頑張ってくれて居た頃、伊賀の頭目モモチと死闘してた」

「はいっ!見事討ち取られたと聞き及んで居ります」

「一瞬の気の緩みを許されない、正真正銘の死闘だった。

 最後にモモチ老人、体力の限界で俺の剣にわざと貫かれ、ズブズブ進み一太刀俺は見舞われた!

 その時鬼気迫るモモチの狂人の目が焼き付いて離れてくれん」

「大殿の事、暫く休養されたら復活されます」

「なら…良いが、暫くサヨが城主代行で差配してくれ、全権を託す!

 モリ▪ハンベにウリモ▪コブ!コウガ▪テツもサヨを盛立て励んでくれ!」


 サヨ達は頷くに留め、多くを語ろうとしなかった。



 居城に返った俺に、更に面倒な報告が入った。

「モウリ大殿、モウリ王国配下がお目通りしたいそうで謁見希望して居ります!」

 知らぬ間にオウナガ達、俺の王国を造り上げていた。

 紀伊に和泉河内大和、伊賀に伊勢志摩、紀伊半島全てがモウリ王国との事だそうだ。


(こんなに要らん!モウリ城だけでも手に余る位なのに)

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