第38話 モモチとの死闘【2】

「殿!安全な後方に移動して下さい!!」

 ナオが誘導する。

 御付きの者は、ナオにサルそれにマルコと弟子のアオニとアカニ3人の鬼達。


 俺は今日に限ってナオの勧めで、鎧下に鎖帷子くさりかたびらを装着してる結構重い。

 動きが緩慢かんまんになる程では無いが、鎧と合わせると25㎏ほどになる。

 それにサヨの勧めで『爆裂玉小癇癪玉かんしゃくだま』を10個無理矢理持たされた。

 子供の拳程の『爆裂玉ばくれつだま』と違い、威力は落ちるが『癇癪玉かんしゃくだま』はビタ文銭位の大きさの球体(ピンポン玉より一回り小さい)だ。

 散弾銃、雷と共に癇癪玉はサヨ遊撃隊の標準装備だ。



 味方陣営から離れるのを待っていた、モモチ達伊賀精鋭20人が無言で俺達を取り囲んだ。


「俺を暗殺仕掛けた落とし前も無き内に、誰の指示か知らんが新な襲撃!伊賀の里壊滅確実に実行する!!」

「モウリ大殿、このじじいは耄碌もうろくモモチだぞ」

 サルが、こっそり教えてくれた。

「お前がモモチか!オウナガから俺に詫びを入れるよう書状が届いたはず!無視して尚も襲う理由を知りたい」

 俺の問い掛けに伊賀者20人は、戦闘意欲を無くしたようだ。

 モモチが突然俺に襲い掛かった。

 サルとナオのクナイ攻撃をすり抜け、マルコの金棒を飛び越え俺に肉薄してきた。


 モモチの濁った狂気の瞳孔に少しビビりながらタケ▪ツヨリから奪った銘刀長剣を構えた。

 アオニとアカニ両鬼が時間差でモモチに金棒攻撃を繰り返す、流石伊賀の頭目二人を相手にせず俺に向かって来た。

 ナオが爆裂玉をモモチに投げつけ、飛び退いたモモチと俺の間合いが開いた。

 ナオとサル、それにマルコ達5人の攻撃を苦もなく反らし、あくまで狙いは俺の命。

(やべぇ!勝てそうな気がせん!!)

 極限状態下、精神がおかしくなってしまいそうだ。


『ヨリ!相手を冷静によく見ろ!枯れ果てた手足、命が消える寸前の老人だぞ!

 呼吸を見て感じないか?息切れ酷くぶっ倒れる寸前だぞ!!』

「親父か?オヤジが指導してくれて居るのか?」

 親父の声が聞こえなくなった。


 冷静に観察するとモモチは、たしかに動きに精悍せいかんさが無くなっている。

 モモチと目が合った。

(仕掛けて来る!)

 長く持たないと、最後の攻撃に討って出たようだ。

(守りに徹しないと、下手に剣を振ると負ける)

 切っ先をモモチから反らさず構える、肩で息をしながらも5人の攻撃を逃れ飛び上がって俺に攻撃して来た。


 俺の銘刀に自ら貫かれ、ズブズブ俺に肉薄執念でついに一撃が俺に入った。


 ガキンッ!!

 異音がし、柄から手を離し抱き着くモモチから逃げようとした。

「ん?」

 剣の柄から手が離れない、柄に両手が張り付いたようだ。

「くっ!」

 俺は貫いたモモチを蹴り跳ばし、何とか離れる事が出来た。

 傷の確認、モモチの最後の一撃は、ナオの勧め鎖帷子が防いでくれて居た。

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