第37話 モモチとの死闘【1】

 松倉城に向けて降伏勧告の使者が送られた。

 ただちに無条件降伏の返答が返って来た。

 為すすべのない爆破攻撃は、実際体験すると大袈裟に流れるうわさ以上の恐怖だったようだ。

 攻撃中、冷静沈着をもっとうとし強いられる戦国武将の妻達が、恐怖で泣き叫んで居たそうだ。

 城主コウジ▪ヨリツナを切腹させ、オウナガはマエダ▪イヌチヨの軍を残し魚津城攻めに向かった。


 モウリ精鋭隊の応援があれば、軍をいても魚津城天神山城の陥落は容易たやすいとの思惑だった。

 松倉城の支城である魚津城、城主カワダ▪ナガ(スギ氏)は抵抗する事無く城を明け渡した。

 難攻不落を誇る本丸、松倉城を初めに陥落させる戦術を考えたオウナガの知略の勝利だった。


 松倉城もう一つの支城である天神山城(※備前和氣の天神山城、他にも同名の城は多いが混同無きよう)、ナガ▪カゲトラ城主の強固な抵抗に合い天下に知らしめる為、仕上げは派手に雷神攻撃で締め括る事になった。


 ***

『鬼殺し』と銘打つ二重毒、失敗例皆無の必殺技術を打ち破られた伊賀忍軍頭目モモチは、オウナガの責めのふみを勘違いして受け取った。

 請け負った仕事を貫徹すべくモウリ▪ヨリの動向を伺っていた。

 高齢の為耄碌もうろくし判断力を欠いたモモチ頭目の命令に、疑問を持ちながら伊賀忍軍は忍のおきて従うしかなかった。

 ***


「大殿!モウリ▪ヨリに強固に逆らえば悲惨な結果に終わると、天下に知らしめる為、雷神で全て瓦礫に変えましょう!!」


(女子供を含め皆殺しにする必要が有るのだろうか……)

 オウナガの提案にヨリは迷った。

(恨み骨髄の延暦寺を焼き滅ぼしたのとは訳が違う……焼く?)

「そうだ!!オウナガ殿、攻撃手段は任せて貰うぞ!」

 天神山(松尾山)は標高163㍍だが平地からは90㍍と低い山だ。

 頂上に建つ天神山城も規模的には砦並の小城である。


「流星隊!火星小一発あの城に射つ準備!!

 オウナガ殿!城を焼く!焼け出され逃げて来る女子供は見逃せ!

 逃げて来る兵は投降を促し、敵対無き場合は捕虜とせよ!!」

「「「はっ!!」」」

「オウナガ殿、布陣整えば知らせよ!」


 俊敏に布陣が整った。

 飛距離の短い重い火星でも、500㍍では仕損じる事はないだろう、まして飛距離を延ばす為開発させた『火星小』威力は半減したが1㎞の命中率は格段の物になった。

「コブ隊長!天守閣目掛け発射せよ!!」

 シュゴーーーーーッ

 火を噴いて火星小が飛んで行った。


 到達地点は少し上に反れたようだが、天守閣屋根瓦に命中!炎上した。

「頭!済まねぇズレた…」

「いや!上出来だ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る