第36話 松倉城攻め

 険しい山岳ヒダ越えを無事終え、モウリ軍は北に進む。

 やがて北に神通川を背負い、豊富な水量の広い堀に囲まれた美しい城『富山城』が見えて来た。


 モウリ一行はオウナガ連合軍に合流し東に向けて進軍する。


「大殿!加勢に感謝する!!」

 やつれた顔のオウナガが嬉しそうに言った。

 守りが固く難攻不落の山城、松倉城を攻めあぐねて居た様子が如実に伺える。


 嬉しそうなオウナガに反し同盟軍トクガは、モウリ援軍の少なさにガッカリした様子を隠しもしない。


 隅の方でボソボソ話してる。

「オウナガ殿?300少々の僅かな援軍、大殿は何を考えて居るのだ?」

「トクガ殿は、モウリ大殿の精鋭隊の実力を見たことが無いのであったか?」

「モウリ精鋭隊?」

「モウリ流星隊25名で容易く城は潰せる!モウリ鉄炮隊300で10000の軍勢を打ち負かせる!!」

「信じられん……」

「魔神ヨリ殿を侮るな!更に恐怖の大王サヨ様が居られる…それに見馴れぬ鬼、新な配下…魔神が鬼を引き連れ加勢に来て下された!!この戦は大勝利に終わる事確実だ!!」



 魔神とか恐怖の大王とかボソボソ聞こえるが、ヨリは気にせずオウナガに言った。

「オウナガ殿、これから出丸を消滅させる、その後降伏勧告の使者を送り降伏無き場合三の丸を消滅させる、出来れば本丸は残したい!交渉出来るな?」

「はっ!出丸を消滅出来るなら、降伏勧告は容易き事!愚図る様なら全て消滅させても良いとそれがしは思いますぞ!」


 ※松倉城は、松倉山中腹(360㍍付近)に建設された山城、本丸に二の丸三の丸それに出丸、ぐるりを石垣で固められた難攻不落の山城だ。


 凡そ400㍍先に見える出丸を眺めサヨ、シンスケ、サスケと六人の隊員が攻撃準備を始めた。

 荷運び兼遊撃隊員6人が増員され、サヨ遊撃隊は9人になっている。

 出丸まで凡その距離400㍍「30㎝小型の『いかづち』必中の間合いだ!」


 巨漢モウリ▪ゴゴの血をひくヨリの異母妹モウリ▪サヨも12歳にして167㎝と大柄で将軍鎧を装着したサヨは見栄えが良い。


 オウナガトクガ連合軍が見守る中、ヨリの女性にしては低い声が辺りに響いた。

「『いかずち』発射!!!」

 シンスケ達8人が一斉に雷を発射した。

 安価で簡単に製産可能な雷、発射訓練の練度は豊富だ!

 600㍍以上の距離では、推進火薬の量の関係で命中率が落ちる『雷』だが3~400㍍では必中確実、目標の出丸は8発の初撃で無惨な状態になり、二撃三撃で消滅した。


 僅か1分の攻撃で出丸消滅、一瞬静寂辺りが無音になった。

 数拍の後うめき声が起こり、勝鬨の大歓声に変わった。

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