第32話 鬼が来た!

「サヨ様、鬼が配下に当用されたいと、登城お目通りを願って居ります!いかが致します?」

「鬼だと?」

 なにかと便利な伝令係りのセタがあわてたように一報を入れて来た。

「鬼か……言葉は理解できるのか?」

「はっ、流暢に受け答え出来て居りました」

「面白そうだ目通り許す!連れて来い」


 ***


 オウナガ勢に平定されたカガ▪イケイケ宗に先導されたイケイケ一揆衆はひそかにエッチュウに逃げ延び、エッチュウ▪イケイケ宗に合流、大勢力となりジン▪ナガシロを旗頭とした。


 オウナガがモウリ城に登城し、冷や汗をかいていた頃、オウナガ軍はエッチュウイケイケ宗討伐に向かった。

 オウナガが疲れを癒して居るうちに、勢いに乗ったオウナガ軍はカガ▪エッチュウ連合イケイケ宗を壊滅させ富山城を降伏させ占拠した。


 ここまでは上出来オウナガも満足の結果だったが、戦禍のどさくさ紛れにスギ▪ケンシンの勢力が天神山城、魚住城、松倉城等を滅ぼし占拠していた。

 貸し与えた銃弾を使い果たしたオウナガ軍はエッチュウを二分したスギ勢力とにらみ合い状態だそうだ。


 戦禍を逃れヒダを越え、遙々モウリ国に逃げて来たコウモウ▪マルコと名乗る赤い頭髪に青い目をした、自称薬師から聞いた話だ。

 コウモウ▪マルコは一報が鬼と告げられたのがもっともとうなづける、赤ら顔に赤くうねるクセのある頭髪、それに青い瞳の180㎝を越える異形の大男だった。


 ※紅毛人こうもうじんとは当時はオランダ人の事を言いポルトガル人やスペイン人を南蛮人と呼んでいた事と分けられた言葉だそうです。

 紅毛人は後に白人全体を呼ぶ言葉になります。


(昔話の鬼とは、かく在らんと思わせる容姿だな)

「エッチュウから来たそうだが、ふんどし以外にも特産品が有るのか?」

「フンドシ?の事は知りませんが、私は薬を特産品にすべく活動してまいりました」


 ※それまで6尺のサラシを巻き付ける、難儀で面倒な下着と違い、布の端に紐を縫い付けた物で、尻側後に布を垂らす様に紐を腹に締め、布を股を被う様に引き上げ、前に結んだ紐の内側を通し拡げて前に垂らす、画期的な下着越中褌えっちゅうふんどしである。


「コウモウ▪マルコとやら、薬師ならばヨリ大殿の病を完治させてみよ!

 ヨリ大殿は毒を塗った懐剣で刺された!

 解毒は間に合い傷も心の臓には届いて居なかったが、毒の影響と深い傷で未だに意識が朦朧として居られる」

「状態を診させて頂き、薬を調合したいと思います」

「完治させる自信があるのか」

「お話を伺い予想するに、萬金丹と強壮剤液を服用すれば経ち処に回復するものと思われます」

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