第30話 モウリ▪サヨの掌握采配術

 気絶しているのに、皆の声が聞こえる気がする。

「殿!!お気を確かにぃ!!!」

 筆頭家老モリ▪ハンベが絶叫してる。

「アケミツの短刀、毒を仕込んでる!!」

 ナオの声だ。

「伊賀の毒だ!心配無い、この毒なら解毒剤持ってる!」

 サルのくせに、役に立つじゃ無いか。


 誰か口移しで、薬を入れてる?ナオかな?


「素早い服薬!解毒はこれで大丈夫」

「ただ、心の臓を傷付けている可能性が」

 ハンベか…

「確かに心臓の位置だが、刺さった深さから、心臓には届いて居ない!」

 ナオの声だな…


 俺は…助かるのか?

「殿が普通の女の胸なら、危ない所だった!!物凄く胸筋を鍛えて居られて、厚い胸筋が短刀を防いだようだ」

「流石ヨリ姉様!!凄い胸部装甲」

 それ、誉め言葉?全然嬉しく無いぞ!サヨか?


「後は、止血薬と化膿止め薬…これと、これだな」

 ナオって凄かったんだ!ありがとう。

「流石甲賀忍者、効果的な医療!治療薬も豊富に持ってるな!!」

 サルも、ありがとう。

「二人!お手柄だ!伊賀と甲賀の治療薬で、殿は一命を取り留めた!!良くやった!」


 朦朧もうろうとした意識で、ここまで聞いて安心したのか、完全に意識を手放した。



 ***



「ヨリ姉様が、私サヨを代理に指名された?ハンベさん!それ確かな事?」

「サヨ殿のこと…『後は、異母妹サヨ』と殿がハッキリ仰って居ました」


「分かった!だけど、ヨリ姉様が意識を取り戻すまで、政策は保留に!現状維持よ!」

「はっ!現状維持に勤めます!」


「ヨリ姉様を、安心して医療任せられるのは、コウガ▪ナオと、サルトビ▪スケサ、お二人以外居ない!頼んだよ!」

「「はっ!お任せ下さい」」


「アケミツの処分、おそらく誰かの陰謀、凶行の指示を出した者が居るはずよ!拷問してでも吐かせて!!」

「サヨ様!今弟コウガ▪テツが訊問してます!」


「急がせて!ヨリ姉様にした事、100倍にして返す!!詰まらん真似を許す訳に行かないよ!!」

 ナオの弟、コウガ▪テツの巨体がやって来た。

 近くで見ると、ナオとは全く似て居ない、恐ろしい面構えの巨漢だった。

 サヨは少しビビった。



「今全て吐きました!!」

「報告して!」

「アケミツをそそのかせ、毒を仕込んだ短刀を渡したのは、アズチ▪オウナガの筆頭家老シバ▪アツヨリ、貴奴きゃつは、殿に恥を掻かされたと逆怨みして居ったそうだ」


「アズチ▪オウナガに書状を送れ!内容は………」




 書状全文

 *********

 アズチ▪オウナガ殿

 その方の家臣、シバ▪アツヨリの陰謀、毒の短剣で我が殿モウリ▪ヨリの暗殺を謀った!

 実行犯、タケチ▪アケミツが自白したものなり。

 殿モウリ▪ヨリは瀕死危篤状態にある。

 非常に遺憾に思う!

 アズチ▪オウナガ殿が、もし陰謀に加担されて居たなら、モウリ一族総出で貴公を滅ぼす所存!!


 我が殿モウリ▪ヨリにもしもの事が有れば、優しいヨリとは、私モウリ▪サヨは違う事と、お心得下さいます様に!!


 城主モウリ▪ヨリ『城主代理モウリ▪サヨ』

 *********




 カガ、イケイケ宗クソ坊主とイケイケ一揆衆を、壊滅寸前のオウナガに、サヨからの書状が届いた。


 モウリ大殿からの、書状と一目で分かる物。

 同盟のトクガに、家臣一同何事かと見守って居る。勿論アツヨリも。


 書状を拡げ一読、さっとオウナガの顔が青ざめた。

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