第28話 タダ▪シンゲン没っす

 ミカワのトクガと同盟を結び、勢力を増したオウナガだったが、ミヨシにイケイケ衆それにシンゲン相手に、迂闊に動く事が出来ず均衡状態が長く続いて居た。


 トクガはミカタ原の合戦でタダに惨敗ノダ城に逃げ帰り、落城寸前にオウナガの援軍で持ち直し、均衡を保っている状態だった。


 今や絶対の信頼を置く、大殿モウリ▪ヨリが星を読み、タダ▪シンゲンの病死を予言した。

 均衡状態でも、我慢して居ればきっと勝機は生まれる!


 必死に耐え抜いて居たオウナガに待望の『タダ▪シンゲン没っす』の朗報が入った。


 タダ方は漏洩しないよう、ひた隠ししたが、隠し事は何処からか漏れるものだ。

 待ちに待った、勝機を掴んだオウナガ勢の快進撃が始まった。


 最初に最大の邪魔者、タダ勢のタカト城を攻め滅ぼしタダ勢の壊滅を謀った。


 更にトクガと共に、ミヨシを打ち破り、本願寺に肉薄した。


 ここで、延暦寺と同じ状態になった。

 本願寺のクソ坊主は、イケイケ衆を煽り、オウナガはイケイケ一揆と僧兵の散発攻撃に疲弊した。


 困った時のモウリ頼み「助けてモウリえもん!」と言ったかは定かで無い。

 オウナガの腹心、筆頭家老のシバ▪アツイエが、救援要請の使者としてやって来た。


 アツイエは大判5000枚を携えて居た。

 この大金は、『長筒散弾鉄砲』5丁と『薬筒』5000発の代金だそうだ。


 暫し考えた。

(大判5000枚は法外な金額、技術買取りも含めた金額だな…)

 ハンベが耳打ちして来た。

「殿!販売は止めて、貸し出しにされては如何か?」


 ハンベ改め、筆頭家老モリ▪ハンベの提案を即採用した。

「『鉄砲』5丁の貸し出し代大判500枚と『薬筒』5000発の空薬筒5000の返却を約束するなら消耗費大判50枚、計大判550枚で、貸し出しする!終戦後速やかに全てを返却せよ!」


 アツイエも販売は、ダメ元で言った様で、大判5000枚で、オウナガは貸し出しを希望して居た様だ。


「アツイエ!貴様大殿を愚弄するか!!帰れ!!」

 青くなったアツイエだが、配下の家老ごときに舐められてはと、ハンベは問答無用で追い返した。


 数日後オウナガが、大慌てで馬を駆けやって来た。


 平謝りのオウナガに。

「アツイエの詰め腹は要らんが、二度と使者に寄越すな!!」

 畳に、額を押し付けるオウナガを見て思った。

 2年前は、オウナガは雲上人だった。

(やり過ぎて恨みを買っては今後やり難くなる)


「大判5000枚もの対価で、僅かな鉄砲の貸し出しを望まれたオウナガ殿に、抜りがあった訳では無い」

「はっ!そのお言葉、有り難く頂戴致します!!」


「鉄砲に、これからの戦の在り方を、変えてしまう可能性に、逸早く気付かれたオウナガ殿に『短筒散弾鉄砲』を進呈する」


 ナオが鉄砲を持ち、サルが薬筒50発箱を持ち、やって来た。


 予想すらして居なかった進呈品に、オウナガは大喜びだ。


 オウナガ本人との打ち合わせ、作戦詳細を煮詰め、一月後オウナガ勢は海から攻める。『長筒散弾鉄砲』100丁と『散弾薬筒』5000発の貸し出しも決まった。

 大判振る舞いに見せて、チャッカリ大判5000枚は頂いた。

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