第22話 アワア山延暦寺焼き討ち【1】

「モウリ大殿!提案と言うか要望だが、憎っくきクソ坊主の巣窟アワア山延暦寺に流星降らせて貰えんだろうか」


 条約の取り決め後、オウナガが俺に対して「モウリ▪ヨリ、モウリ殿」から「モウリ大殿」に呼び名が変わった。


 一戦しては、安全な寺に逃げ帰る、それの繰り返しにオウナガ相当腹を立てて居る様子だ。

 しかし勇猛なアズチ▪オウナガと言えど、出陣前は不動明王や毘沙門天に祈る、信心深い常識人、神社仏閣を攻撃出来ない普通人だ。


(流石オウナガ殿、そう来たか!俺に対応させればクソ坊主共、簡単に焼き尽くし、愁いを残さんとの要望か?もとより言われんでも、クソ坊主の巣窟延暦寺は焼き滅ぼす!)


 親父の代から、神仏に祈る習慣は無い!

 俺達は『群盗団』神仏には頼らん!基より俺達は悪党だ!極楽黄土には縁が無い!冥府魔道、地獄落ちは覚悟の上だ。


「そんな事?新しい術、全てを焼き尽くす『火星』をご披露しますよ!」

「儂は、ミヨシにイケイケ百姓共、それにシンゲン対応の為、動けん」

「もう暫く頑張って居れば、シンゲンは病死する」

「な、何と?陰陽道『星読み』か?大殿!!」

「そう、思っていて……」


 ヨリは延暦寺を焼き滅ぼし、その先クソ坊主の巣窟本願寺攻めに邪魔な、タダ▪シンゲンの暗殺を荒瓦衆に命じた所だった。


 ナオとテツ達、荒瓦忍軍こうがにんぐんの情報収集、現状把握は秀でた物が有り、最大邪魔者イケイケ衆の排除方、最も効果的な手順を勝手に始めてくれている。

 その最初の取り組みが、睨みを利かす最大勢力、タダ▪シンゲンの暗殺だった。


 終着点は、モウリ国を豊かで平和にする事だ、そこに向かう為の策略陰謀は、攻めて来ればぶっ潰す俺達みたいな単純な群盗団には不可能、ナオ達は優秀なブレーンかつ実働部隊だ。

 薬筒造りに向いている、器用な集団だが、そんな単純作業だけでは勿体無い優れた能力を持っていた。


 荒瓦忍軍とすれば、荒れ地と瓦礫しか無い里、唯一硫黄が産出するが臭い硫黄の利用法など誰も知らない物、売れる訳でも無く一族が戦国の世を生き残る為、世界に向けて諜報活動をし、頭目の姉ナオが接触を試みモウリ▪ヨリに仕官する事こそが、生き残りを賭けた大勝負だった。

 各国に恐れられて居る、モウリ陰陽術は火薬を利用しているのでは?と、頭目テツと姉ナオは一族の知識で、早い時期に推測していた。


 コブの弟子達が鉄砲300丁完成させ、荒瓦衆こうがしゅうが薬筒1万発完成させた。

 その間コブ達は、油を仕込んだ特種雷神『火星』を1000本完成させて居た。



 出陣に先駆け、荒瓦衆に鉄砲献上の功績を称えた。

「テツ!荒れ地と瓦礫の名は、優秀なお前達に相応しく無い!今後は『甲賀忍軍』と名乗れ!!意味は亀の様に万年目出度まんねんめでたく栄える忍び一族だ!!」

「はっ!有り難き幸せ!以後我ら一族『甲賀忍軍』とし、私はコウガ▪テツと名乗ります!!」



 本拠地モウリ城の守りは『流星』『雷神』の扱いに長けたサヨ達と、ナオが率いる『甲賀鉄砲隊』100人、それにカンベやキヘイ、カケル、タケル達武闘派500人が常駐している。



 今回進軍するのは『流星隊』と名付けた、コブ師匠とサブロ、ゴンゾ技士達と弟子10人の隊。


 実質この『流星隊』で延暦寺を壊滅させる。


 コウガ▪テツ率いる『鉄砲隊』と名付けた50人の甲賀衆と100人の志願兵には、全員鉄砲を装備させて居る。


『鉄砲隊』は、逃げ出た僧兵を撃ち取る役目だ。


 最前列を行くのは『護衛隊』ハンゾが率いる唯一武士らしい隊200人は、剣と剣薙刀を装備している。


 俺?俺の役目……お飾りかな?

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