第21話 オウナガの提案

「殿様!弟テツがとんでも無い勘違い、大変なご無礼申し訳御座いません!」

「もとは姉ちゃんが…『テツ!!』」

「ん?テツ、ナオがどうした?」

「い、いえ…とんだ勘違い…申し訳御座いません!かくなる上は我が荒瓦一族、命に代えてお仕え致します!」


「ナオには説明したが、硝石が豊富に産出するイシ山に、荒瓦衆で砦を築き、この薬筒を量産して貰いたい!」


 コブの弟子達が、工夫した仕込み薬筒(薬莢やっきょう)、黄銅(真鍮しんちゅう)の筒に火薬と3㎜鉄玉10個入れた物、薬筒のお尻には小さな火打ち石2個並べ仕込んで居る。


 鉄砲の上部取手を引くと、薬室が現れ薄い鋼板仕込みの後部摘まみも押される、薬筒を鉄砲薬室に仕込み、取手を戻しポッチを押し発射、取手を引くと、空の薬筒を引っ掻け取り出される、薬筒を仕込み撃つ、薬筒に合わせ改良した鉄砲は、効果的に連続撃ちが出来るようになった。


 バラ玉仕込みは、元の火筒単玉は飛距離と命中率の悪さ、10メートルなら当たるが、30メートル離れると全く当たらない、鉄筒を1メートル長くすれば50メートル100メートル先まで命中率は上がるが、鉄砲の取り扱いが手軽に出来なくなる。


 全長30㎝の形状を変えず、威力命中率向上の為の工夫だ。


 テツとナオが納得、薬筒の量産を請け負ってくれた。

 薬筒実物から、型取りした鋳型に黄銅を流し込む、出来た薬筒のバリにヤスリ掛け、これが殆どの仕事になる。

 黄銅の作り方は、荒瓦の鍛冶屋が知ってた、銅と亜鉛半々より銅が多い、って「勘で造るんかい!」流石職人?


 仕上げは、直径3㎝の鉄筒に入れて、嵌まれば良品完成だ。

 荒瓦衆は、全員手裏剣など、武器は自作するそうで、鍛冶仕事は男女問わず全員出来るそうだ。

 特に黄銅は元の銅より、低い温度で溶けるそうで、城下の鍛冶屋で黄銅を造れば、後は野鍛冶で十分鋳型鋳造出来るそうだ。

 ナオが熱心に説明してくれたが、途中から理解するのを諦めた。

 野鍛冶が何やらサッパリ分からん。



「殿!オウナガ大殿様が、お越しです!お通しして良いでしょうか?」

「なにぃ!オウナガ大殿が、来てるのか?」

「はい、何か急ぎの用だとか」

「……ナオだけ残って!テツ、悪いが荒瓦衆と隠れてくれ!」

「「はっ!」」



 やって来た、オウナガ大殿に上座を勧めた所、辞退された。

「城の主、モウリ殿が座って下され!」


 オウナガ大殿は、大男と思って居たが、室内で対面すると俺の顎下の位置にオウナガの頭が来る、意外に小男だった。

 上から見下ろす感じ、オウナガ威圧を感じて居るようだ、顔の汗を拭くのが忙しい。


 予想外な発言、オウナガが俺に同盟を申し込んで来た、

 しかも、俺の配下に降るとの申し出、何か裏が有りそう……。

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