第18話 兵器開発製造所

 兵器開発製造所は不思議な建物群だ、屋根の無い巨大な土蔵としか表現出来ない外壁には一ヶ所しか扉が無い、鉄製の扉を通ると広場の中、逆に壁の無い屋根と柱だけの長屋が3棟続く、最奥には強固な土蔵が10棟並んで建って居る。

 土蔵には硝石、硫黄、木炭粉、等の火薬の材料や完成兵器が、各々分類収納されている。


 火薬を扱う為火気厳禁、灯りは太陽光のみ、冬は暖を取る術の無い働き辛くなる作業所だ。


 入口の鉄扉の横に、外壁のコブの様に建って居る土蔵が、コブ達が寝起きする夏は涼しく冬は暖かい、熱中すると寝食を忘れる彼等を、暖かく包み家事一般行う賄い婦付き生活棟である。


 今まで手に入れた、膨大な財力に物を言わせ、突貫工事で完成させた施設、この工事に携わった大工に職人は膨大な人数で、旧タケ٠ツヨリ統治時代の緊縮財政から、一気に空前絶後の好景気、殆どの領民に恩恵が行き渡り、新領主モウリ٠ヨリの人気はうなぎ登りであった。

 ヨリにすれば、無くなっても惜しげの無いアブク銭の一部を使い、強力な攻撃兵器を、秘密裏に大量生産出来る場所が欲しかっただけの行為だった、統治領民の受けを狙った訳では無かったが、時代がヨリを贔屓した様に全てが良い方に転んだ。



 サブロとゴンゾが目を輝かせ『火筒』を見て居る。

「火薬噴射でこれが飛ぶのでなく、爆発させて玉を飛ばす!画期的!!これは気付かん発想だ!」

「少ない火薬で、効率良く物を飛ばす!凄い!!」


 コブは、火筒の一つをバラし、構造を見いってる。

「火打ち石での着火は、爆裂玉や雷神火星と同じだな…簡単な構造鉄筒での改良増産直ぐに出来るぞ!!」


「この改造火筒は『鉄砲』と命名する!」


「頭…テッポウ…良い!!鉄砲か!!格好良い名だ!!」

 コブ師匠や、サブロゴンゾ技士の弟子達も、新技術の火筒を見ながら、あぁでも無い、こぅでも無いと夢中になってる。


「連発するには、火薬を込めて玉を込める…のじゃダメだ!火薬と玉を纏めた物を造り、それを込めるだけにすれば……ダメか?着火をどうする」


「玉は一個じゃ無くても、小さい玉10個とか一気に多数の玉撃ち出せば、一回の発射が強力になる?狙わないでもどの玉か当たる…威力より命中率が上がるぞ!!」


(これはダメだ、弟子達も似た者集団、俺やナオの存在忘れてる)

「ナオ、こいつら、こうなったら、もう何も聞こえん!城に戻って話をしたい」

「はい、凄い集団ですね」


 弟子の一人を掴んで、出口に向かい「確り鍵を掛けて置け!!」と言い残し、天守閣に向かった。



「奇人揃いで驚いたで有ろう」

「殿様の配下らしい人達、好感持てます」

「俺の配下らしい?……俺も変人奇人のたぐいってか?」

「いえいえ!発想とか閃きを、更に追及される姿勢です…只者じゃ無い人達?」

「ふっ、只者じゃ無い変人奇人揃いと言う事か」

「…そうなりますか、そうですね」


 何か、このナオと言う忍者、人心掌握の術でも俺に使ったのか?非常に好ましく感じる。

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