第5話 使えない者の使いよう
元百姓を雇って良かった、空き地を耕し人参やカブ
一方戦闘訓練は、微妙だ。
俺達が剣術を、正式に習って居ない我流剣法の弊害、指導が上手く行かない、精々素振りを毎日させる位だ。
実際戦場で戦えそうなのは、165㎝と他の者より少し上背のある、カンベとキヘイそれにイサの3人位、贔目に見てイサク、ゴサク、リスケ、カケル、タケルの5人までは何とか使える。
後の者は、戦場に出したら即死んでしまう事が予想される。
貧農の村、子供の頃も手伝いが忙しく、チャンバラ遊びする暇が無かったとか、貧乏は嫌だね。
やせ細って貧相だった志願兵達だったが、訓練して腹一杯飯を食う暮らしで、見る間に体つきが変わり、逞しくなって来た。
体格が良くなって来ると、百姓は貧相でも自分の体重以上の米俵60㎏を平気で担ぐ力持ち揃い、剣に振り回される感じが無くなり、剣を軽々ブン回し始めた。
「セタ!一走り村の鍛冶屋に依頼!竹輪状に空洞の1メートル鉄棒の先に剣を付ける、剣50振りは支給する、特種槍50本発注して来てくれ!製作費は大判10枚」
剣を支給、加工賃1000万文の大判10枚、鍛冶屋は大喜びで引き受けたそうだ。
さっと造った試作の槍を、セタが持って帰って来た。
俺は、槍を持ち突き斬り凪ぎ払いをやってみた。
「少し重いが扱い易い新兵器だ!」
カンベ、キヘイが珍しそうに見ている。
「扱い方を良くみて置け!」
俺はユックリ、突き斬り凪ぎ払いをやってみせ、カンベにやらせてみた。
「この赤い印が上になる様に握る…そう!それで良い」
ユックリ遣って見せたのが良かった様で、同じ様な扱いが出来た。
「カンベ!上手いじゃないか!その調子で繰り返し、少しずつ早くして見ろ!」
【して見せて、言って聞かせて、させて見て、誉めて遣らねば人は動かじ】by山本五十六
モウリ٠ヨリには、人の扱いに天付の才が有った。
総鉄製の
へっぴり腰の、上達しない40人に支給し、俺とカンベが前で模範演技、皆の訓練が始まった。
モウリ軍勢は、群盗団と言えども、戦えない者を連れて行く訳にはいかない。
窃盗する戦場で遅れを取らない様、雑兵相手一対一なら必ず討ち取れる技量を持たせる。
扱いに慣れたころ、防具を装備させ同じ長さのこん棒で、実戦訓練を始めさせた。
こん棒の物打ち部分は布を巻き、打ち付けてもそれ程痛く無い様に工夫している。
間違って、無防備箇所に当たっても、青アザが出来る程度だ。
食い物と給金に釣られたとしても、武士に成りたくて志願して来た者達、即殺される事の無い、戦場で何とか使える者にしてやりたい。
鍛えても、不細工な落ち溢れは、どうしても出る。
「サブロにゴンゾ!お前達には、別の仕事を与える」
剣術指導は諦めた。
手先は器用なのでコブの弟子にし、火薬兵器開発をさせてみた。
物を作る、指を器用に動かすと知能も発達する。
誰にでも取り柄はあるものだ!二人はたった一月で『自走火矢』の試作品を完成させた。
矢尻の下に推進火薬を仕込み、導火線に火を付けると飛んで行く、凄い物が出来上がった。
「殿様!試射やりますだ、ご覧下せぇ」
発射筒に仕込んだ『自走火矢』の導火線にサブロが火を着けた。
シュゴゥーーと、発射音を立て『自走火矢』は飛んで行き、凡そ2㎞先の山肌に突き刺さった。
「こ、これは凄い!」
サブロにゴンゾが、にかっと嬉しそうに笑った。
「新兵器完成!今夜は宴で祝う!」
コブは火薬製造、爆裂玉作りは凄いが、閃き工夫に関しては今一の単なる職人だが、サブロにゴンゾの発想力は儲けものだった。
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