第15話

しかしなんてことだ。よりによって明日だなんて。学力テストは3月10日だから2、3日潰れたところでなんとかなるけど。

その決戦(?)とも言うべき日付は僕の誕生日だ。先日母さんはお寿司買ってケーキ買って、と色々キャッキャしていた。時計を買ってくれる約束をした。「高校生だったらちょーいい感じの時計くらい持ってないとヤバいでしょ」って。時計なんてCASIOの安いやつをお小遣いで買って2ヶ月で壊してそれっきりだから、今度は慎重にしなければなあと思っていたのに。

そんなワクワク感は一切今の僕にはなくなっている。今はひたすら殺されない程度にどう接触するかで焦っている。


地図の方は大体でルートも決まったため、次は精神分析の本を手にした。精神分析というよりは、カウンセリングに近い内容の本である。ざっくりいえばこう言う問題を抱えている人は話を聞くとか、聞き方とか...。

人を殺すような危ない人物ならば会話で避けて、危険が迫ったら大声を出して逃げるが勝ちだ。

今日はひとまずこの精神的な本を読破し、明日は朝から組み手やらなんやら(想像だが)やろう。もう一夜漬けだけど致し方ない。


そういえばと思いハンバーガーを手に取って一口食べた。もう味なんてわからない。でも何かしら食べないと頭も回らないから「入れる」しかないのだ。水をぐっと飲み干すと、あらためてまた本に集中した。

ただある程度の時間になったら渋谷に行ってイヤホンで聴けるポータブルラジオを買いに行かないといけない。


「やることがこんなにも山積みになるとはなあ...。」


勉強は正直いい感じで高校受験は間違いなく希望校に行ける自信があった。それまで毎日勉強していたため、その息抜きのラジオのつもりが急展開を迎えて暇を与えてくれない。

小学校の頃もよく母さんの水商売(?)のせいで揶揄う奴がいて必死な抵抗を毎日していたけど、また必死な抵抗が必要になると思わなかった。

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