第11話

「一応今の昭和72年の何市に居たまでは把握しているんです。なので、そこに住んでいて、かつ傍受してくれそうで、かつ信じてくれそうな人を探してたのー!」


いやいや、もう、ちょっと待ってよ。


「武装いただく際はこちらから人気がない方への誘導は致しますのでご安心ください。」


ちょっと待ってよ。


「武器に関しては申し訳ないけど、現地調達って感じになるのー。防衛省が時空を超えての運搬を法律で禁止してるからさー」


「待てって言ってるだろ!!!!!!」


大声で立ち上がった。肩で息してワナワナとしている。

ラジオ(?)側も静かになった。

わかるだろ。僕に、人を殺せって簡単に言いやがって。


「どうしたの、敦久。何かあったの?」


ふと声のする方をみると黒のパーカーと赤いミニスカートを履いた母親が立っていた。心配そうにこちらを見つめている。


「いや、ごめん、なんでもない、ラジオドラマ聞いてて。ハハハ...。」


「そう?じゃあ私夜に向けて少し寝るね。おやすみ」


食卓テーブルにあるポテチの袋を持って台所に行ったようだ。ゴミとして捨てている音がする。


「ああ、うん。ごめん。静かにするね...。」


こんな「時代を超えて通信している」だなんて母親に言えるわけがなく、咄嗟に出た嘘ではあるが、なんとか乗り切れた。

一呼吸して椅子に座った。


[僕に人殺しの依頼ですか]


文章は冷静なフリをしているが、まあ多分色々筒抜けなんだろう。立ち上がったのもきっとビデオ映像みたいなやつで見ているんだろ。


「...理想は、そうだよ?だって時代を歪めてかつ防衛省もやつの味方なんだから、民間人の私たちには何も出来ないんだもん...。海外もアテにならないし。」


「でも無理はなさらずとも、確保さえしていただければ紅を転送して、紅に殺してもらいます。あなたの手は汚さず済みます。」


[でも僕自体も消される可能性はある話ですよね?]


返事が返ってこない。

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