第10話
例の時間5分前。僕はヘッドホンをつけている。ザーという音だけがまだ響いている。ドキドキしながら紙と製図シャープペンを用意して、ペンは握りしめた状態で膝の上に両手はある。
ペンを握っていない手にも力が入っているせいか爪が手の内側に食い込んでいるのが自分でもよくわかる。
どうしよう、何を話せば良い。まるでしたこともない、デートで待ち合わせている時の男の気持ちだ、と思う。きっと。
起承転結?
結果から話す?
疑問に思っていることから始める?
まずはこんにちは?
いやいや何を考えているんだ。
「やっほー!!!!きーこーえーてーまーすーかー??」
体がビクッとした。紅と名乗っていた方だ。
[どうも]
「よしよし成功成功!どーだったー??なったでしょー?」
一瞬躊躇ったがもう言うしかない。
[はい]
「いやーよかったよかった!!!」
良かった?何がだ?警官一人は怪我したのになんて事を言うんだこの女。
「実はねー、その犯人児童連続殺害しようとしていたのー。それを例の医師が情報流して済んでのところでってことなの!」
連続殺人犯?!そんな。
[僕と同じくらいの年なのに?]
「殺人に年齢は関係ないよ。」
ごもっともすぎた。そりゃそうだ。メアリーベル事件なんてのもあったし、年齢がどうだとか関係ない。結果として殺したか、殺されたかのどちらかの世界なだけだ。
それならばある程度信じて相手の言い分でも聞こうじゃないか。
[僕は何をすれば良いんですか]
「お、話が早いですなあ。」
相手はノリノリだ。そんな事件を話すくらいだ。僕に何かしらを求めているに違いない。でも正直いってその、例えば国家に楯突いていけとか言われても困る。僕はどちらかといえば平凡に普通の生活がしたいんだ。
「一緒にその医師を探してください!」
[医師を探してどうすれば]
「殺すかこちらで連行しますので拘束していただきます!」
ちょっと待ってくれよ...何を言っているんだこの人。
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