第8話

「...理解し難いのですね。ですが続けさせていただきます。昭和102年に年老いていかぬ陛下の異変に気付き、国会議員が宮内庁に申し入れをしましたが却下。105年に出口総理大臣が面会時するも物言わぬ姿で棺へ。」


汗が出た。宮内庁、いや、天皇陛下かその側近が?


「そこからは徳川江戸時代と同じような状態です。陛下が全てなのです。ですからドイツで開発されたタイムマシーンの偽造版で時代ハッキングし、陛下から見られることがないように南極から約2400地点を経由して送っているんです。それくらい伝えたいことがあるのです。」


歴史は好きな方だ。だけど、それとこれは違う。変なトロリとした汗と動悸と呼吸の浅さと貧血の時のような頭のふわふわした感覚と。


[うそだ]


やっとの思いで書いた拙い文字。目線はルーズリーフを見ていない。脳みそが拒否して書いている。これ以上の情報を与えないでほしいと言わんばかりに。


「私だって信じたくありませんがパラレルワールドに入っているのは確かです。昭和198年アメリカの学者エドガーが歪みを発見。本来ある日本と現在の鎖国にも似た状態の日本に歪みが発生していると。データもありますがそれはまあ、音声では難しいですし、貴方には解読不可能でしょう。だから事実なのです。」


[うそだ]


何故か泣きそうになった。どうしてだろう。突然の真実が怖いからなのか?それとも嘘をつかれていることに腹が立っているから?


「...では、歪みのない、本来の日本と現在の日本の歴史改竄が始まる昭和72年のあなたに日本の歴史をプレゼントしましょう。それを受けて、わたしたちを信じるか、明後日またこの時間に会いましょう。」


生唾すら飲み込めない。


「本来ならば明後日月曜日、神戸でハンマーで女子生徒が殴られる事件が発生します。但し、このパラレルワールドのこちらの世界線では明日『10人ほどでたまたまその地域を巡回していたところ、ハンマーを持った少年を発見。職質の際警官一名を強打、幸い命に別状なし。公務執行妨害と暴行のため現行犯逮捕』に繋がります。では、また会いましょう。」


そういうとザーといういつもの音に変わった。

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