エルフエナジー 幻想と現実の狭間
たけのこ
ミッション
朝の森の空気は清々しく、背伸びをしていっぱい新鮮な空気を吸うと、体の細胞が若返ったかのようにリセットされる。今日も良い天気で気持ちが良い。王研での出来事を忘れさせてくれる非日常的な極楽の地がここにある。清流に手を入れると物凄く冷たく、思い切り顔にかけると一気に目が覚めた。
相棒の伝書バトジョブと島鳩のセブンは仲良く巣から顔をだしている。
ジン博士の翻訳機をonにしてジョブ達に語りかけた。
「おはようジョブ・セブン、今日もいい天気だね!」
「おはようございます。ヒロノスフィア」
セブンは礼節があり、私によく似てとても紳士的のある鳩だ。
セブンはジョブに惚れ込み電撃結婚したばかりの鳩鳥でジョブの夫だ。
「おはようヒロノスフィア!相変わらず口をパクパクさせながら、寝言を言いながら寝ていたよね」
相変わらず自分の事をデッスてくるジョブだ。
「今日も相変わらず綺麗でかわいいですよ、ジョブさん」
「あたりまえでしょ!」
パンをかじってコーヒーを飲みながら、昨夜、流星群と無数の蛍が共演した
桃源郷のような絶景を思い出しながら、一変した朝の森の景色を見ていた。
ジョブは卵から孵化してから手塩に育てたかわいい鳩だが、翻訳機を通じて聞こえてくるジョブはとても気丈なメス鳥だった。ルーフとジョブはよく似ているとつくづく思った。さあ、今日も古来から脈々と受け継がれている島の生き物や植物を観察するとするか。腰を上げようとしたらスマホが鳴った。シン博士からだ
「昨夜にハレルヤ大流星群が観測された。この流星群は1000年に一回の頻度で発生する。「ハレルヤの欠片」といわれる小隕石が数多く西の島に落下したと宇宙科学部門長から連絡があった。1000年前にもこの欠片が採取されている。その時のデーターによると、この欠片にはこの星に存在しない地質成分が含まれている。光を通すとカレイドスコープのような様々な色が見えるという不思議な欠片だ。この成分がもしかしたら、私が長年研究している「時空間」を探る手掛かりになると考えている。
過去にこれと同じ欠片が研究所内で残されているかと思い、宇宙科学部門の協力を得て資料室を探したが見つからなかった。どうやら、当時の欠片は成分研究で全て使われてしまったようだ。「時空間」が解明できれば人類の歴史、生物の歴史が解明される。仮説だが、エルフエナジーのように、ハレルヤの欠片を機器に埋め込んで、人間に照射する事で、記憶を司る海馬と松果体と呼ばれる目覚めを司る部分が同時に活性化されるはず。祖先の記憶、場合によっては再生転生してきたアカシックレコードといわれる記憶も蘇ると思われる。長年物議を呼んでいる死後の世界、生まれる前に人生物語という青写真を描いて人は生まれてくるという説、つまり、異世界そのものが在るのか無いのか、時空間で解明できるかもしれない。自分が何者であるかという謎を紐解いてくれるかもしれない。自分が何者であるかが分かったとき、未来を憂いる事なく将来設計もできるかもしれない。すまんが、ハレルヤの欠片を探してくれないか」
昨夜見た流星群はハレルヤ流星群だったのか、、、いつもに無く闇と光の競演が
圧巻だった理由が分かった。
「博士、西の島は小さい島ですが、中央に1000m級の山、周囲はジャングルの樹海。所々に崖や滝があり、いくつもの支流があります。目的の欠片を探すのは大変困難です。何か手がかりはありますか」
「その欠片は西の島全土に落ちている。流星は隕石の一種だから、落下地点には衝撃で小さなクレーターが出来ている。昨夜落下したばかりだから、白い蒸気が出ているはず。やけどには十分注意するように。なるだけ、大きな鉱石を見つけてほしい。小さいものは力が弱いので、採取せずにそのままに自然に返してほしい。大きさに例えると、小さくてもゴルフボールの大きさの物を最低10個は集めてほしい。できれば、それ以上の大きさのものがあれば拾ってほしい。数や大きさがおおきいと試行錯誤ができるから、頼むよ」
「鉱石の資料を送付してください」
「今、君のスマホに送信するから」
スマホの呼び鈴とバイブレーションと共に写メと説明文が送られてきた。成層圏に突入する事で燃えて黒く焼け焦げた石かと思っていたが、水晶のような玉の石ころだった。よく観察するとクレーターのような凹凸が無数に出来ている。これは、成層圏に落下する際に加熱され、落下の過程で急激に冷やされるために凹凸ができるのだろうか。この流星の欠片は黒くならずに水晶で存在する。太陽の光にかざすとカレイドスコープを見ているような、何色もの色が無数に見えるという不思議な石と記載されていた。
「分りました。では、欠片を探して持ち帰ります」
「たのんだそ。ところで、試作品の翻訳機は試してみたかい」
「博士、ジョブは気の強いメス鳩でした。ジョブが怒って羽ビンタを喰らいました。
動物言葉が翻訳されて聞こえてくる羽ビンタは精神的にも流石にキツイです」
「そうか、そうか、なんて言われて、ビンタされたんだ」
「変態、、、」
「変態!ヒロノスフィアは変態だったのか!人は見かけによらずというが!」
「違いますよ、、、ジョブの身体を撫でようと思うと、いつも、嫌がる理由を聞いたのです。過去に私が性別の確認をするためにお尻の羽を過去に何度もめくろうとしたのに対して怒っていて、変態と言われて強烈な羽ビンタが飛んできたのです」
「なんと、ヒロノスフィアはメス鳩と知らずに育てたわけだ。そりゃ傑作だわ、ルーフに言ったらどんな感想が返ってくるか・・・」
「ルーフの事は思い出したくもない、ハレルヤの欠片探しまんよ!博士」
「まあ、まあ、まあ、落ち着いて、悪かった、悪かった。そうか、鳥類まではコュミニケーションが取れるという事だな。両生類は辛うじて聞き取れるが言葉が単調。脳が発達しておらず、種の保存の為に交配相手を探すための単一な言葉を発し、人間とのコュミニケーションを取る能力は身に付いていない。なかなか、面白い結果が得られるな。引き続き試して報告を。それとだ、エルフバリアも異常がないか見てきてほしい」
「はい、博士わかりました」
「流星の欠片は陸とは限らず川や滝つぼにも落ちている可能性もある。取れないものは無理をする必要はない。欠片を優先して体を怪我しては台無しになる。ヒロノスフィアの人生はこれからも長い、怪我で人生棒に振ってはいけないよ。散発している魔物にも十分気を付けて、出くわしたらエルフショットガンで撃退するように。気を付けて収集するのだよ」
「お気遣いありがとうございます博士。それでは、これより準備をして捜索します」
と言って電話を切った。
この高台からも、細い白煙がちらほらと見える。その場所に、大きめの流星の欠片が落ちているものと思われる。時間が経過しても、白煙が見えるという事は冷めるのに時間がかかる、つまり、大きい破片の可能性が高い。
緯度付の地図を広げた。この場所から白煙が上がっている場所をマーキングした
地図に直線を引き、直線状に一番多く点在している方向に向かう事にした。
およその座標点を腕時計型のGPSに入力する。その座標点から高台までの距離と到達時間を計算させる。計算値なので実際には悪路となるため数倍は時間がかかると思ってよい。一番濃い白煙の場所まで2時間の距離だ。そこから、戻るようにして拾い集めれば、重量の負荷を減らす事ができ、体力の消耗が減るので一石二鳥だと思った
エルフショットガンと弾をベルトに装備し、怪我の回復や解毒、滋養強壮の効能があるエルフエナジードリンク、水筒、食糧、スマホをリュクに詰め込む。マリンシューズを履いて準備が完了した。口笛を吹いてジョブを呼び寄せたが来なかった。巣がある木を見上げるとジョブは寝ていた。昨日の移動の疲れが出たのだろう。そのまま寝かせておこう。また、黙って行ってしまったら、ジョブはきっと怒って強烈な羽ビンタが飛んでくるのは間違いない。
あからじめ、予防線を張っておかなければ、、、
翻訳機を使ってセブンに事情を話した。
「気を付けてヒロノスフィア、ここで、ジョブと留守番しています」
「ジョブが起きたら、よろしく言っておいて」
「はい、わかりました」とセブンは頷いた。
ヒロノスフィアは白い煙の立ち上る箇所を目指して高台から一歩ふみだした。
早速、滝つぼでその欠片をみつけた。滝の方にも目を遣ると大きな欠片が岩に
引っかかっていてキラキラ輝いていた。ゴルフボール位の破片が自らの存在を示すかのように太陽の光に反射して光って見えた。興奮をおさえながらその石を拾い上げた。解説にあったように、太陽の光を浴びさせると赤、青、貴、緑が幾何学的な模様に見え、カレイドスコープを見ているような石だ。見惚れてしまうような不思議な石だった。これは探すのが面白くなってきたぞ。
滝の岩場に目を遣ると大きい欠片がキラキラと光っていたが、取れそうもなく諦め
て目標地点の座標を目指して移動する事にした。朝露でぬかるんだ獣道を歩いていると川の流れる音がしてきた。岩場につかまり流れの早い渓流の水を掻き分けてしっかりと足に重心を置きながら前に進んだ。途中、足を水の流れに取られそうになったが
何とか耐える事ができた。
対岸に辿りつき、GPSを確認した。あと500メートルで目標地点に辿り着く、この辺りには数カ所の白煙が見える。白煙は時間と反比例して消えてゆくため、欠片の回収を急ぐ必要がある。この先は勾配がきつく、木の合間をぬって登山していった。滑落しないように、木の幹に手をやりながら一歩一歩と慎重に登ってゆく、時折、木漏れ日の光も差し込んでまぶしく感じられた。
ハア、ハア、ハアと息が上がってくる。額の汗も滲んできて目が痛い。タオルで拭いても熱帯雨林気候の高い湿度に体内の水分が奪われてゆく。沢で汲んだ冷たい水筒の
水で喉を潤しながら前に進む。さっきから、風の切る音ではない、ザワザワとした獣が歩いている不気味な音も聞こえ、誰がが居るような気配もするが気のせいだろうとおもった。ようやく、小高い丘に到達できた。GPSのビーコンが鳴った。
クレーターの中をのぞき込むと、かなり大きい欠片が白煙を上げていた。
高熱だと忘れて不意に触った
「熱い!!」
反射神経でその石は手から滑り落ち、山の斜面に沿って勢いよく滑落していった。
やけどを我慢し、木の枝に捕まりながら、見失わないように後を追いかけた。
欠片は木の生え際に上手く引っかかって止まった。それを取ろうとした瞬間、
左腕に激痛が走った。
目を遣ると、眼光が赤く光り、頭部が二股に割れた蛇様のモンスターが左腕を嚙んでいたのだ。心拍が一瞬止まり、背筋が凍るような体感をした。我にもどり、急いで反対側の腕でエルフショットガンを取り出しそうとしたが、モンスターの生存本能が活性化したのか、もう片方の頭部の口から長い舌が右手を絡めてショットガンを取り出させないように抵抗される。蛇の毒で体が痺れてきた。渾身の力を籠めその舌を伸ばして切断しショットガンで蛇型モンスターの胴体を撃ち抜いた。弾の当たる音と共に光分子となって魔物は消えた。
しかし、足を滑らせ一気に谷へと滑落し、次第に気を失ってしまった。
暗いがどことなく温かい。身体は痛くなく、穏やかな気持ちに包まれていた。自分も死を迎えたと悟った。自然の摂理によって私の体は時間と共に微生物に分解されて自然に還っていくのだと異常に冷静になっていた。天国はお花畑で美しい虹色の空の麓で、別れた懐かしい人が現れるのかと思っていたが、そうでもなく、穏やかな闇が
目の前に広がっていた。
「あなた!いつまで寝ているの!今日は大事な日なのに!起きて!」
どこか聞き覚えのある女性の声で目が覚めた。
ここは、どこだ・・・あたりを見回すと、使い慣れた机や本棚、
自分の家だ。
起き上がったが、なんだか、いつもより、体が重く違和感がある。
悪夢を見ていたのか・・・昨日ルーフの研究について部門チーフと大げんかした。
今日から長期休暇をとったから、さあ、西の島でリフレシュを兼ねて植物、生物観察でもするかと気持ちを切り替えて、部屋のカーテンと窓を開けた。まぶしい朝日が
差し込んで心地よい風が部屋の中を吹き抜ける。
音楽堂からバラード調のピアノの音色が聞こえてくる。これはOh, Come, All Ye Faithfulという神を祝福する讃美歌。母さんか妹が弾いているんだろう。噴水の周りの色とりどりの花が良く映えて見えた。その横でその役目を終えたかのように土に還ろうとしている枯れかかった草花もみられた。大地の営みに逆らうことなく、生き物は生と死を繰り返しながら、自然に還り新しい命として生まれてくる。まるで、この星で命のダンスをしながら、互いに比べる事、競う事もなく、自然の循環の中で、それぞれの個性を尊重し個性を発揮している。庭師のサンチェが緑の芝を芝刈り機で手入れしていた。こちらに気づいたサンチェは手を止めた。
「ご主人様、おはようございます。本日はイザベル王即位50周年パーティーに奥様とご出席との事で執事係からお聞きて居ります。伝書鳩のジョブ様とセブン様もご主人様と共に国の危機を救った事との事ですから、祭壇に飾ってあった二羽の羽が入った化粧箱を居間にご用意しておきました。ジョブ様たちもお喜びになると思います」
「は、何を言っているサンチェ、ジョブとセブンは生きている。それにだ、
イザベル王ではなくイーサム王ではないのか、私は独身だ」
「ご主人様が記憶喪失になられた、、、奥様!奥様!」サンチェは慌てた様子で
視界から遠ざかっていった。
ジョブとセブンが居ない、私が国の危機を救った、イザベル王子が王に即位して50年、奥様って俺は未だ独身だ、頭が混乱してきた。そうだカレンダーだ、2250年5月15日、2250年!2199年ではないのか!鏡を見て唖然とした、顔に濃いしわが出来て白髪交じりの自分の姿に驚いた。道理で体が重いわけだ。
部屋の扉が開いた。そこにはルーフの面影がある老女と若い男女と小さい子供が中に入ってきた。
「あなた、、、」
「もしかして、ルーフか、、、」
「あなた、そうよ、ルーフよ、記憶が戻ってきたのね」
「俺とお前は結婚しているのか、、、」
「やっぱり、サンチェが言っていたように記憶喪失になっているわ」
「落ち着けルーフ、これは夢だよな」
「いいえ、ちがうわ」ルーフは涙目になりながら語りかけていた。
「夢じゃないよ!私は父さんの娘、こちらは私の旦那!子供は父さんが溺愛している孫だよ、思い出したと言って!」と強い口調で女性が叫んだ。
俺に子供と孫が居るのか、、、私が知っている、男勝りの気が強く何かと反論してくるルーフとは180度ちがって唖然とした。落ち着きがあって、どこか、かわいらしさがある。年を重ねる事で性格はこんなにも変化するのか、側にいる女性は若い時のルーフによく似ているし、私の面影もどことなくある。自分の子供だから当たり前だよな。でも、ルーフや子供と過ごした日々が全く思い出せないという事はどういう事なのか、自分が鮮明に覚えている記憶を確かめてみょう。ルーフは何か私の記憶を呼び起こすヒントをくれるはずだ。
「俺は現在王立科学アカデミー研究所生物科学部門に所属している。ルーフは帝国生物科学研究所の研究員でケーター首相の肝いり政策で王研に派遣された研究員だよな。君がしていた魔物にエルフエナジーを照射する実験に私は猛反対していたよな」
「そうよ、そうよ、あなたは私の実験にいつも怪訝そうに猛反対してたのよ。私は
あなたが認めてくれたないからムキになって張り合っていたのよ、私がジャックエルフを誕生させたことで、私がやっている研究をあなたが初めて認めてくれたのよ」
「そうか、、、今日はイーサム王、いや、イザベル王の即位50周年記念式典だったよな、イーサム王はなぜ亡くなったのか」
「イザベル王と妹君のアーニャル王女に会ったら、きっと、思い出すわよ。さあ、早く身支度して、式典に間に合わないわよ。今日は湖上の大聖堂で国宝ブルーエルフエナジーストーンを見せてもらえるんだから。そして、私達の伝記が基になった小説「妖術使いの詭弁師ケーター首相の野望」は奥付に
限定したんだって、相変わらず意地悪なところがあるんだから」
「奥付に私家版?なんだそれ」
「これは、本の巻末についてある著作名や出版社などの情報が書かれたページの事だよ、映画で言ったらエンドロールの事だって、その奥付を読む事で物語の余韻を楽しむって、あなた良く言っていたじゃないの。。。」
「そうか、、、ルーフと私は犬猿の仲であった事ははっきり覚えている。チーフと喧嘩して西の島へ旅に出たところ、自分が研究員で生態学を研究していたのも思い出すが、私とルーフが互いに認め合い恋に落ち結婚したプロセス。子供が出来て子育てをした記憶が全く思い出せない。なぜ、私がイザベル王を救った事も思い出せないんだ。愛した愛された記憶も含めて無くなり、いつか、遠い過去の記憶も私の中から消えて無くなってしまう事がとても怖い、ルーフ、記憶が消えても私を受け入れ愛してくれるよな」
「もちろんよ、あなたと、ずっと一緒だから安心して、記憶は必ず戻ると信じて
頑張りましょ」
「ありがとう」
礼服に身を包み、国王陛下から貰った勲章バッチを胸につけて送迎車に乗った。
空飛ぶ列車まで登場して街並みもすっかり変化した。思い出そうとするが思い出せないその歯がゆさに苦しんだ。送迎車は王宮に続く一本の水道橋を走り、
車窓に映る岸の街並みを何も考えずに見ていた。
突然、どー---ん!と爆音がして車体が大きく揺れ、家族一同は阿鼻叫喚した、
「うあ~~」とヒロノスフィアも叫けんだ。記憶が戻らないまま人生を終えるのか、
意識が遠のいた。しばらくすると、冷たい水の感触が顔に当たったような気がした。
その感覚がするという事は、まだ、自分は生きているという事なのか、ゆっくりと目を開いた。
「気が付かれましたね。怪我と高熱で3日間寝て居られたのですよ。エルフエナジードリンクを投与したので、解毒され傷口も塞がりました。もう、起き上がって歩けるはずです」
「これは、夢ではありませんよね」
「はい、夢ではありませんよ」
「今年は何年ですか」
「2199年10月2日です。あなたは、左腕を大けが怪我されていました。つる性植物リアナがあなたを包み込み、九死に一生を得られたのですよ。リアナが無かったら、あなたは死んでいたかもしれません。自然に助けられてよかったですね」
「助けてくれたあなたと自然に感謝します。私はヒロノスフィア、王研の研究員です。あなたは?」
「私はエルフ精鋭隊アダムス。この島のエルフバリアの力価を調査するために来たのです。そしたら、ショットガンの音と共に人の叫び声がしたので、あなたの携帯電話の電波を拾って見つけたのです。今、大きな爆撃音がしたので、外をみましたがエルフバリア塔が何者かによって爆破されました。島に魔物が侵略し多く徘徊するものと思いますから、早急に島を脱出する必要があります。私の携帯電話の充電がもう無いので外部との通信ができません。なので、急いで支度してください」
「何ですって!伝書鳩のジョブとセブンを呼びますから待っていてください」
鍾乳洞から出て直ぐの大きな大木の木をよじ登り、渾身の力を込めて口笛を何度も
吹いた。二羽の鳥影が近づいてきた。ジョブとセブンだ!
「こっち、こっち」手を大きくふって、ジョブ達に居場所を伝えた。翻訳機は幸い
壊れていない。電源をonにした。
「ちょっと、何日も留守にするなんて、酷いじゃない、私、本当に心配したんだから
セブンと一緒に島中を探したのよ!いつも、勝手にふらふらとタコの糸が切れたように蛇足するんだから、もう!」
強烈な羽ビンタが飛んできた。病み上がりとはいえジョブの羽ビンタは突き刺さった。ジョブが生きている事がうれしかった。
「ジョブ頼みがある、携帯型充電器をベースキャンプから運んできておくれ」
「分ったわ、セブンと一緒に取りに行くわ」
「頼んだぞジョブ」
しばらくすると、大きな鳥影がヒロノスフィアを包こんだ。鷹がリュックサックを持ってきてくれた。
「セブンの友達に頼んで、荷物を運んでもらったのよ」
「ありがとう、セブン、鷹くん、助かったよ」
「どういたしまして、ヒロノスフィア」
アダムスは感心したように、「鳥類と会話ができる装置があるんですね。ジン博士は
天才だ」と褒め称えていた。
「 助けて!・・・助けて!・・・」
かすかな声が鍾乳洞の奥から聞こえてきた。
アダムスと目を合わせ、耳を澄ませた。
「 誰か助けて! 助けて!・・・お兄ちゃん・・・お兄ちゃん」
女の子の泣き声が聞こえてきた。
「ヒロノスフィア、女の子がこの鍾乳洞の中で助けを求めている、行くぞ」
二人は荷造りを終え、携帯電話の電波をヒロノスフィアのGPSで拾いながら、鍾乳洞の奥へと進んだ。洞窟の中は悪路続きだ。時には地下水が溜まって行く手を阻む、この先に息継ぎポイントがあるのか無いのか解らない状態で泳ぎ酸欠寸前で助かった地下水を泳いでいるときに、まぶしい光を放つ、キラキラした腕輪が水の中で輝いていた。アーニャル王女が身に付けている王女の腕輪だった。二人は何故、ここに腕輪があるのか不思議に思ったが、GPSが示す目的地に進んだ。地下水から上り、しばらく歩くと、アーニャル王女が怯え泣きながら鍾乳石の影に隠れていた。
「アーニャル王女!なぜ、王女がこちらに」アダムスが駆け寄った。
「お兄ちゃんを助けて、外で魔物と戦っているわ、お兄ちゃんが死んじゃう」と嗚咽して訴えた。
「アーニャル王女、ご安心下さい。エルフ精鋭隊アダムスがこの剣に命を懸けて王子をお守り致します。ヒロノスフィア!ここで、王女を守ってください」
アダムスは王子に参戦した。
「イザベル王子、助けに来ました」
イザベル王子が短剣で、頭部が三つまたの大蛇の魔物と戦っていた。舌をイザベル王子が切り落としても、その舌がトカゲのしっぽのように動いてイザベル王子の動線を邪魔をしてくる。アダムスが応援に入った。アダムスの剣は怒りの炎で赤くなっていた。回転斬り技で大蛇の舌を焼き払う。その隙に、ヒロノスフィアはイザベル王子を洞窟に避難させた。エルフエナジードリンクを王子に与え傷口を回復させた。
アダムスは大きくジャンプをして大蛇の眼球を突き刺した。大蛇は大きく抵抗をして、もう一つの頭部から長い巻き舌を出してアダムスの身体を拘束し、呑み込もうとし、アダムスは大蛇の眼球に刺さった剣の鍔を強く握りしめて抵抗している
「イザベル王子、ここで王女様をお守りください。必ず、倒して戻ってきますので、ご安心ください」
「頼んだ。ヒロノスフィア、私は妹を守る」
ヒロノスフィアは口笛を吹き、ジョブとセブンを呼び寄せた。
「セブン、鷹くんを呼んでくれ。私を鷹の足で上空まで運ぶように頼んでくれ、エルフショットガンで打ちのめす。ジョブは王子と王女の側にいてくれ」
「わかりました。直ぐに鷹を呼んできます」セブンは鷹を呼び寄せた。
直ぐに鷹の大群がやってきた。
鷹の大群は大蛇を一斉に攻撃し始めた。大蛇の舌が緩みアダムスが解放された。
アダムスの体力は限界だったが、直ぐにエルフエナジードリンクを飲み干し、
再び体部と尾部を攻撃した。
ヒロノスフィアは鷹の足に捕まり、エルフエナジーショットを上空から何発も
頭部をめがけて撃った。そのほどんどが命中し、大蛇の魔物は消滅した。
大きな魔物の脅威を排除する事に成功し、急いで島を脱出した。
アダムスの船の中で王子と王女から事情を聴きジン博士に報告した。ジン博士のやり取りでヒロノスフィア達は驚いた。TVで戴冠式の模様が中継され、偽者のイザベル王子とアーニャル王女が映しだされた事に、二人はショックを受けた。ケーター首相とラマズド科学技術長官が画策した国を乗っ取る作戦に、イザベル王子は強い憤りを覚え、偽者を討伐し国を救う事を固く誓ったのだった。
エルフエナジー 幻想と現実の狭間 たけのこ @Noritake117
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