第28話 王太子ハルトの華麗なる?日常

 「うっす、ハルト。」

 生徒会室のドアが開いて、イオがミウを連れてきた。

 王立学院の生徒会室にはハルト1人で、今日は8の日なのだ。

 毎月2の日(2日・12日・22日)にはマーベリック侯爵の娘と、4の日(4日・14日・24日)にはグラン侯爵の娘と、6の日(以下略)にはレッドローズビル侯爵の娘と、8の日にはリバーウェル伯爵の妹、ミウと過ごすことになっている。

 全員婚約者候補だ。

 本来なら8の日は4大侯爵家の最後の1つ、キングシティサウスプレーンフィールド侯爵の順番だったが、先の反乱で取り潰しとなった。

 もちろん娘を含む家族は平民落ち、侯爵自身は死刑となり……

 で、急遽婚約者候補に浮上したのがミウ・リバーウェル女男爵で。

 ハルトが学院を卒業するとき、候補を1人に絞り込み発表、現国王の体調も考え、良いタイミングで即位、婚姻となるのだ。

 「手ぇ出すなよ。1時間後に迎えに来るから」と、ひと威嚇してイオは立ち去ったが……

 いやいや、あくまで『候補』だからね。

 歴史上には候補全てを食い散らかした馬鹿王子もいたようだが、彼は廃嫡となっている。

 それよりも、万が一そんなことをすれば国を亡ぼすくらい溺愛してるよね、イオ君。

 ハルトは、イオとミウが本当の兄妹でないことを知っていた。

 イオの妹には昔辺境で会っている。イオと初めて会った11歳の頃、イオは6歳、妹は乳飲み子だった。

 だからミウは、血のつながった妹ではない。

 すごく大事にしてるのに、なんだって僕の婚約者候補にしてくるのか?

 イオ君も大概面倒くさい。

 残る3人の婚約者候補は、王太子妃、末は王妃が見えているから、少しでもごまをすろうとする。1番ひどいのはレッドローズビル侯爵令嬢・マリアンで、体を擦り付けてきたり挑発しようとする。

 その点、ミウは今日もやたら不機嫌だ。

 ムスッとして、面白くなさそうにソファーに座る。

 分かり易すぎる。

 「ご機嫌斜めですね、イオ君のお姫様。」

 からかうように言うと、

 「あ、ごめんなさい、王太子様。あの……兄に腹が立ってて……」と、困る。

 そりゃあ、別の男のところに置き去りにされたら面白くないよね。

 本当君達、分かり易すぎるよ。

 けれど、困ったことになっている。

 今王宮では、『次期王妃はリバーウェル女男爵を‼』という声が高まっている。

 『魔力の器』としての能力の高さと、残る3名の候補がいがみ合い、どれをとってもしこりが残るからだ。

 それにハルト自身、王家の婚姻は政治の道具と割り切っていても、あの3人は選びたくない。

 勝気すぎて、ウンザリする。

 1番他人を気遣えて、愛らしい4人目が特大の地雷物件と言う……

 

 王太子の気苦労は続く。

 「そう言えば。」

 ふと思い出した。

 「何ですか?」

 「いや、あなたの御父上のことです。」

 「ああ……」

 辺境を持ち出すまでもなく、イオとミウが他人である、それを証明する出来事が6年前にあった。


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