第13話 スラムで春を売る花

 「くそう‼どうなっていやがる‼」

 東スラムの元締めである、アランは苛立ちを隠せない。

 ここ数日間、1日で4、5人の部下が襲われる。骨を折った者もいて、満足に動けない。

 戦力低下は免れなかった。

 王都には3つのスラム街がある。北と、東と、南西だ。

 東は冒険者ギルドが近く、ひいてはイオの家も近いことがすべての原因……と言うか、アランにとっての不幸だった。

 彼らはいわゆるマフィア、非合法な荒くれ者達の組織である。

 手下達曰く、

 「冒険者証を首から下げた5、6歳の小僧だ。」

 「新しい服を着ている。スラムの子供じゃない。」

 「迷い込んだ馬鹿なガキと思ったんだ。」

 「有り金を巻き上げようとして、気づいたら転がされていた。」

 「投げられた拍子に肩が外れた。」

 「肘から投げ落とされ、骨が砕けた」、云々。

 正体不明の化け物が、我がスラムにいるらしい。

 とは言え、情報によればまだ子供だ。成人前どころか、『祝福の儀』を受けたばかりの少年なら。

 集団でかかればいけると思った。

 この判断は間違いで、あまりに大きな代償をアランは支払うこととなるが……

 その日動ける構成員10数名を連れて、アラン自身が侵入者退治に向かう。


 嫌なものを見た、とイオは思った。

 王妃様候補を探して、東スラムをうろついて4日目の夕方だ。

 スラムの路地の、さらに奥の薄暗い中に……

 少女が4人いる。

 イオは魔力で判断する。中の1人が丸刈りで、明らかに性別を偽装していたが正確に少女だと受け止めた。

 1番年嵩な子が13歳。

 後ろにいるのは10歳と9歳。あとオレと同じ6歳か。

 13の子が、男と交渉している。

 つまり、そういうことだろう。

 体を売って、後ろの子供らを養っている。

 イオの中身は16歳。

 経験せぬまま転生したが、知識だけは山ほどある。

 JKなめんな❤️(←いつもと違うテンションで)。

 いや、後ろの子供らを養っていると言うのも、ロリコンが来ればそれで終了。

 彼女らが客を取ることとなる。

 虫唾が走る。

 「あっ‼ちょっと‼」

 交渉は決裂したらしい。

 男は少女を突き飛ばして去った。

 女の子に乱暴しやがって。

 あいつ、後で見つけてボコっておこう。

 ボンヤリと見つめていると、見られる側からは遠慮のない、不躾な視線だったらしい、

 「ちょっと‼何見てんのよ、あんた‼」と、半ば八つ当たりだ、少女がイオに迫ってきた。

 引っ叩こうとでも思っているのか?

 大きく右手を後ろに引いて……

 でも‼

 「悪い‼」

 謝罪の意味が分かったか、どうか?

 イオは少女に体当たりする。

 身長差から、ちょうど彼女の腹部にラグビーのようにタックルし、勢いでその場からズレた。

 ビュッと言う風切り音と、武骨な刃が石畳を叩く、ガンッと言う衝撃音。

 2人のいた場所に、青龍刀が振り下ろされた。

 「オルト‼」

 顔見知りらしい、少女が叫ぶ。

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