第18話 ソフィアは伯爵から酷い目に遭っていた経緯がバレてしまう

「記憶戻りませんね……」

「やはり考えすぎで呪いではなかったということだったのか……。もしくはリリスの魔力がソフィア殿をも上回るせいでソフィア殿の魔法では解呪ができないかのどちらかだろう」


 自分で言うのも変だが、辺境地へ向かっている間に私自身の魔法はかなりコントロールできるようになったし、魔力自体の向上鍛錬も行った。

 もちろん、二度と雷属性魔法を使わないようにするためである。

 オロチの弱点だった雷属性を使わなくても倒せるくらい鍛錬しないとまたあの『ドッカン』という恐怖を味わうことになる。

 それだけはなんとしてでも避けたかったのだ。


 かなり鍛えた状態でもお母様の魔力に全く敵わないのだとしたら……。

 むしろ余計、お母様に会ってみたくなった。


「リリスは魔女だ。魔女同士ならば魔力の察知が可能かもしれぬ。近くにいればゾクッという感覚がきっとくるだろう」

「教えていただきありがとうございます」

「それにしても……。まさかあのゼノ伯爵に拾われるとは運の悪い……」

「あ……えぇと……」


 アーヴァイン様には義父様のことを知られたくない。

 公爵様これ以上喋らないで。

 と、言いたかったがすでに遅し。


「ゼノ伯爵もリリスの呪いにかかっている。まさか呪いをかけた張本人の子供を拾うとはな……」

「え!? そのことをおと……、いえ、ゼノ伯爵も知っていたのでしょうか」

「そこまではわからぬが……。まさかひどい目にあっていたのではないだろうな? あの男の本性を知っているからなぜ捨て子を拾ったかくらい想定はできる」

「そもそも、どうしてゼノ伯爵が拾った子供と、リリスというソフィア様の母親とで結びついたのでしょう?」


 アーヴァイン様は、私も聞いてみたかったことを尋ねてくれた。


「簡単なことだよ。ゼノ伯爵から相談を受けていたからだ。その時のソフィア殿は今よりも小さかったが、実は一度会ったことがある……。ここに来たときはまさかあの時の子供だとはわからなかったがね」


 公爵様はこれ以上は喋りたくないというような素振りをしていた。

 私も無理に追求するつもりはない。


「結論だけ言わせてもらうと、リリスはソフィア殿のことが憎かったり嫌ったりという理由で捨てたわけではない。それだけはわかっている」


 公爵様はこれ以上は喋れないと言った感じだったため、聞くのはここまでにしておいた。


 結局のところ、私のお母様が魔女で私も魔女だということ。

 そして、今もどこかでお母様は生きているという二点知ることができた。


 辺境地まで来て収穫は大きかった。

 公爵様も喋れるようになったし、陛下から頼まれていた目的も達成できた。

 私としては万々歳である。


「ところで、ソフィア殿よ。私個人としてはゼノ伯爵へ制裁を加えようか考えているのだが……」

「はい!?」

「当然のことだ。ソフィア殿が今まで受けたことを考えれば許されるべきことではない」


 ちょっと待った。

 私、そこまで喋っていない。

 まるで、公爵様が私の心を読んだかのように……。


 そんな魔法が存在するけど、まさか公爵様……。


「常に発動できるわけではないし、断片的なものしかわからぬがな。ソフィア殿に呪いを解いてもらえたおかげで、どうやら私の魔力も戻ったようだ」

「あぁ……。やっぱり……」

「伯爵の件については、あとで二人でゆっくりと話をしたい」


 心を読まれるって恐ろしい。

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