第6話 ソフィアは報酬をもらう
「ソフィア殿よ、騎士団と娘を凶暴なモンスターから救ってくれたこと、それだけでなく私の命を救い元気にさせてくれたことに対して報いたいと思う」
このような状況になるなんて考えたこともなかった。
玉座の間という、国の中で最も重要な場所で私は陛下に向かって跪いている状態だ。
床も赤いカーペットが一直線に王座まで敷かれていて、その両サイドにはお偉いさんらしき人たち全員が綺麗に規律の姿勢をとっている。
緊張しまくりだ。
「あ……あの、既に報酬は受け取らせていただきました。昨晩に続き、朝までご馳走を……」
陛下とその横にいる宰相という国で二番目に偉いと言われているお方が顔を合わせた。
すると、クスクスと笑うのだった。
「はっはっは。それは報酬などではないのだよ」
「へ?」
「私の命を救ってくれた者に対して食事を提供したことが報酬だとしたら、他国に笑われてしまうわい」
美味しいものをたくさん食べて私も元気になった。
これ以上の喜びがあるだろうか。
「改めて……。ソフィア殿には謝礼金、拠点とする家を授けよう」
「家ですか!?」
「王都の中央部に位置する主に王族が住む場所に、一軒建設したばかりの屋敷がある。活用してくれたまえ。むろん、今後王都から出ていくのであれば無理に住み続ける必要はない」
「そんな至れり尽くせり……」
「ソフィア殿は生きていく上で今後拠点がいるのだろう? 屋敷の管理は執事を中心に使用人たちに任せるし、いつでも帰ってこれる場所だと考えてくれればよい」
そんなに都合のいい話があって良いのだろうか……。
だが、大勢のお偉いさんが見ている中で私が断ってしまえば、陛下の面目もよろしくないだろう。
素直に戴くことにした。
「そして私のサイン入り通行手形を渡す」
「通行手形?」
「私が直筆で書いた証明書だ。これを見せれば国内にある検問所は全て素通りができる。貴族や王族しか使えない店も利用できるようになる。つまり、私が認めた者という証でソフィア殿の味方だと考えてもらえれば良い。行動もかなり有利に動けるであろう」
今の私にとって願ったり叶ったりな報酬だ。
これで、もしも義父様から再び囚われてしまいそうになってもある程度は反抗ができるだろう。
自由に色々な場所へ行けるようになったことも嬉しい。
「ありがとうございます!」
ところで、最初に謝礼金と言っていたけれど、家まで貰ってしまうのに良いのだろうか。
まぁ多くとも三日間くらいご飯を買うことができるくらいの額だろうし、遠慮なく受け取っておこう。
私の考え方が甘いことに気がつくのはすぐのことである。
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