第8話 政局図
今回の一件は、実は王家とも関係がある。
第一王子と第二王子のどちらが王になるかはまだわかっていない。ただ、第一王子というのが確定路線らしい。
どこの世界も同じようで、寵愛された妃の存在と王子の後ろ盾が関わってくる。
わがソーランド公爵家は第二王子派。
一方のバーミヤン公爵家は第一王子派とズブズブの関係、カーサイト公爵家は第一王子派に近い、つまりあの根性の曲がったキリルというクソガキ王子を二大公爵家が擁しているというのが現状の勢力図のようだ。
その下に付く侯爵家たちも第一王子派が多く、第二王子派が少数派であるのは明らかなことだった。もちろん、どちらにもつかない中立派もある。
バーミヤン公爵家の血筋の人間が第一王子の母親であり、第一王子とバーミヤン家とのつながりや結びつきは強い。
これにカーサイト公爵家も乗っかっているように見えるが、定かではない。
この王妃がまた一癖も二癖もある人間のようだ。あのクソガキ王子の母だ、さもありなんといえよう。
一方の第二王子と第一王女の母親は、ソーランド公爵家とも関係が深い。
けれども、後ろ盾が弱いのは事実であり、それに第一王子が年長なのであえて第二王子を推すというのも少々不自然なのである。
ただ、長子だから必ず王になるわけでもなく、過去には第一王子が廃嫡された事例もあるようだ。
いずれにせよ、第一王子派の専政がこれからこの国で起きてくる、ということだった。
それが表に現れたのが、ソーランド家を公式な場で嘲笑するという、なんとも嫌がらせにしてはタチの悪い事件だったのだ。
私だけならともかく、子どもにまで手を出すのは断じて許しがたい。
バーミヤン公爵家がアリーシャとの婚約を提案した日から先日の一件までは計画通りというわけであり、第一王子もそのことに一枚噛んでいる、そう思う。
あれは全てを知っていて、私とアリーシャを嘲ったのだ。
救いがあるとしたら、現在の王は正式に第一王子を推すとまでは公に宣言していないことくらいか。
王もまだ40手前で若い。すぐに譲位するわけでもないのだろう。
しかし、その王は今回の件について何も言わないようだ。愕然とした。
その真意はわからないが、まことに腹の立つ話である。
親としてではなく王として中立に振る舞うべきだと考えているのだろうか。
だったら親としての姿はいったいいつ見せるのか。クソガキ王子を臣下にたしなめさせようとでもいうつもりなのか。子育てをなんだと思っているんだ。
それに王として振る舞うのであればバーミヤン家に何か一言くらいあってもいいだろう。
本当に組織の腐敗というのはたいてい上から腐っていくものだとつくづく痛感する。
「ふーむ、何から手を付ければいいものか」
今、ソーランド公爵家の立ち位置を考えながら、屋敷の周りを地味にウォーキングしている。やりはじめて45分経った。身長180㎝に、体重145㎏の私としては、一刻も早くこの脂肪から手を付けたい。
しかし、これだけに集中していては乗り遅れてしまう。同時にいくつものことを考えて実行に移していかなければならない。
脂肪を燃焼させつつも、今着手すべきことに優先順位をつけていった。
バラード王国は隣国にいくつかの国があり、この大陸では比較的大きい国である。
地図を見せてもらったが、この大陸といくつかの大陸や国以外はあまり詳細なことがわかっていない。ガバガバ設定だからなんだろう。何ともいい加減だ。
だから、世界全体の地図はないらしい。世界を象が支えていると言われても不思議ではない。
わが公爵家という立場は強い。曲がりなりにも「公爵」だ。
しかし、そんなものは王家と他の公爵家が力を合わせればあっという間に潰されてしまうだろう。まずは家の力をさらに強くしなければならない。
ソーランド公爵家には手を出せない、いや、手を出したら末代まで祟られるとまで思われるくらいに強くせねばなるまい。
バラード王国はだいたい九州地方くらいの大きさで、たとえるなら真ん中の熊本県あたりに王都がある。ソーランド公爵領はそこから北の福岡県に位置し、他の県もそれぞれの貴族たちが治めていると考えていい。
それぞれの領地を各貴族が統治し、その長がバラード王国を支えているという統治形態である。それぞれの領地で定められた税を納めて、貴族たちはその地位を与えられている。
県知事のようなものだがそれよりも遙かに権限があるようだ。いうなれば、行政権、立法権、司法権を一人で行使できるようなものである。
ここまで来ると一国の王とも言えるが、「王」は名乗ることができない。しかし、実際過去の歴史にはそういう例もあったようだ。
王都で過ごしながら代理の者に統治させている貴族も多い。バカラ公爵は王都には住まないが、王都には本邸がある。
今はアリーシャとともにソーランド公爵領の別邸に移動している。
ソーランド公爵領の商業や農業、産業を確認し、財政問題から手をつけていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます