第7話 和解 そして・・・


第五章 和解

 事件が終わり、ギンガはアールにあるお願いを申し出た。

「アール殿、今日はこの後で会議を開いて、今後の光の国の規律を変更するための話し合いをすることになっている。もし、良ければアール殿たちも同席して頂きたい」


 ギンガの提案をアールは快く受け入れた。そして、光の国の主要人物たちが集まり、大々的な会議が行われた。話し合いの内容は今回の一連の事件と光の国の規律の変更だ。事件に関しては、光の国でもない、闇の国でもない見知らない国の者が事件を起こしていたことを伝えた。闇の国の者を殺し成り代わって犯行を繰り返していたということで説明した。そして、その者は人知れずの場所で罪を償ってもらった・・・・・・と言う説明をした。そして、規律の変更に関する話し合いが行うために、ギンガが口を開いた。


「これまでの規律を大々的に変更する。今までの規定に白紙にして捕らわれず、何か良い案があるのなら話してほしい」


 そうギンガは言ったが、誰も口を開かなかった。そこに、シドが口を開いた。


「今回、ギンガ様と闇の国に同行して、闇の住人の上下関係のない穏やかな雰囲気に僕は圧倒されました。アール殿は頭領なのに、誰も頭領としてみているのではなく一人の『人』として接していました。上下関係を基本無くして、皆が皆一人の人として接する。それは、とても良好な関係を作るのかな?と僕は感じました。僕は出来る事なら、闇の国の規律を元に光の国の規律を作るのが良いと思います」


 シドの言葉に集まった主要人物たちも「それでやってみたい」という意見が多かったので、とりあえず、闇の国の規律を元に光の国の規律改正が行われることになった。細かい部分に関してはゆくゆく詰めていくことになった。大まかには、上下関係は基本無くして、上の者でも言うべきことは言う、ということになった。そして、もう一つ。光の国と闇の国を親善国として、お互いの国の行き来を認めることにすることが決まった。後は、お互いの国を雰囲気だけで噂をするのは止めにして、ちゃんと「その人」として見るようにするということになった。こうして、会議は終った。


 それからは、アールたちは自分たちの国に戻っていった。アールたちが去って、ギンガも部屋に戻った。部屋に戻ると、カレンがお茶を用意して待っていた。


「お疲れ様です、ギンガ様。お茶を用意したので少し休憩しませんか?」


 カレンの言葉にギンガは胸を締め付けられた。そして、カレンのそばに来ると優しく抱き締めて囁いた。


「カレン・・・・・・。私のことはギンガと呼んで欲しい。様付けをされると壁を感じるように思える。だから、私のことはギンガと呼んでくれ・・・・・・」


 ギンガの言葉にカレンは抱き締めてくれている体に腕を抱き締め返して、静かに言った。


「・・・・・・分かりました。これからはギンガ様ではなく『ギンガ』って呼びますね。お疲れ様、ギンガ。これからもよろしくお願いします」

「・・・・・・ありがとう、カレン」


 ギンガは静かに涙を流しながら、これからは何でも話してほしいことを伝え、これからはもっと仲良くしていきたいと話した。


 その頃、アールはライカと一緒に月を愛でながら月明酒を飲んでいた。


「やれやれ、今回は大騒動だったね。ライカもお疲れ様」

「どういたしまして。カレンとギンガはこれからどのようになっていくかしらね。まあ、私はあんな俺様的な奴がカレンの旦那で頭領だってことに腹が立ったけどね」

「あはは、確かにギンガは最初かなり高圧的な態度だったね。まあ、闇の国の住人の仕業だと思っていたからあんな態度になったのだろうね・・・・・・。ギンガとカレンがこれからは歩み寄って本当のところで仲良くなるといいね」

「そうね。・・・・・・じゃあ、光の国が良くなることとギンガとカレンのこれからに・・・・・・」

「「乾杯!!」」


 二人の声が重なり、グラスを合わせた音が優しく響いた。そこに、レインとケントとジンがやってきて加わり、宴会になった。

 

 こうして、光の国と闇の国の交流が始まり、長年お互いの国を隔てていた想いの壁は取り除かれた・・・・・・。



~エピローグ~


 あれから歳月が経ち、アールとライカの間に男の子が生まれて『キリト』と名付けられた。その翌年にはギンガとカレンの間にも女に子が生まれて『イン』と名付けられた。子供が生まれてからもギンガとアールたちの交流は続いていた。そして、キリトが六歳になり、インが五歳になった。今日もアールとライカはキリトを連れてギンガの屋敷に遊びに来ていた。庭でキリトとインが遊んでいるのを、みんなで見守りながらお茶をしていた。キリトは、穏やかで面倒見のよい子だが、たまに大人顔負けの発言をして周囲を驚かせるところがあった。インは控えめで大人しいが、キリトが危ないことをするとすごい勢いで注意していた。キリトとインはとても仲が良く、会うと殆ど離れることが無く遊んでいた。一度だけ、キリトの提案でかくれんぼをすることになってキリトが隠れてインが探すことになったのだが、キリトをなかなか見つけられなくて、心配のなってしまい、大声で泣き出してしまったことがあった。キリトはその泣き声に驚いてすぐに出てきてインを慰めていた。その後は、泣き疲れたのかキリトの膝で寝てしまっていた。その時の膝枕が心地よかったのか、インは疲れるとキリトの膝で寝ていくようになった。今日も、遊び疲れたのか、キリトの膝でインがすやすやと寝息を立てていた。その様子をギンガたちは穏やかに見守っていた。二人の様子を見て何かを感じたのか、アールが口を開いた。


「やれやれ、仲が良いね。ギンガ、あの二人がもし一緒になりたいと言ったらどうする?」


 アールの言葉にギンガは飲んでいたお茶を噴き出しそうになった。


「ま、まだ子供だぞ?そんな先の話をされても・・・・・・」


 そこへ、カレンが言葉を紡いだ。


「でも、もしそうなったら私は嬉しいです。インもキリト君には懐いているし、キリト君ならインを任せられるかなって思っています」


 そこへ、ライカも会話に入った。


「まあ、キリトもまんざらではないと思うわよ。帰るとインちゃんの話が止まらないからね。それに、インちゃんがキリトの膝で寝ている時のあの子の顔はとても嬉しそうな顔をしているもの。多分、子供ながら『守ってあげたい』っていう思いがあるんじゃないかしらね」


 みんなでキリトとインのことを話していると、インが目を覚ました。ぼんやりとしているインにキリトが優しく頭を撫でてあげていた。


 暖かな光と穏やかな風が光の国と闇の国の行く末を祝福していた。




                                    (完)

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光と闇のラプソディー 華ノ月 @hananotuki

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