第6話 真実
第四章
夜中になって、ギンガたちは屋敷に到着した。ワットたちを地下の牢屋に入れると、シドたちに部屋でゆっくり休むように伝え、自身も部屋に戻った。部屋に戻ると、そのままベッドに倒れこんだ。ギンガはいろいろ有り過ぎた今日のことを思い返した。思いもよらない犯人たちに、闇の者まで殺していたという真実。一番衝撃を受けたのが、カレンが花冠を受け取った時のあの嬉しそうな表情・・・・・・。ギンガは今まで見たこともないカレンの表情にやるせなさを感じていた。ギンガは自分の立場に甘えて、ちゃんとカレンを見ていなかったことを恥じた。シドたちも本当は自分に言いたいことがあったかもしれない。いろいろな想いが頭の中を駆け巡っていた。その内に疲れたのかそのまま眠りに落ちていった。
朝になり、シドに起こされてギンガは目を覚ました。
「ギンガ様、起きてください。カレン妃とアールさんたちが到着しました。接客の間に通しましたので、用意が出来ましたらそちらにいらしてください」
シドの言葉でギンガは飛び起きると、急いで仕度を始めた。支度が終わり、接客の間に行くとアールたちは部屋で待っていた。
「呼んでおいて、待たせてしまってすまない。ここに来るまでは大丈夫だったか?」
ギンガは不安に思っていたことを口にすると、アールが「大丈夫だよ」と言って、ここまでの経緯を話した。
「狭間のところで光の国の住人に会ってね、人数分の羽織を用意してくれたんだ。それに、ここに来るまでの間はカレン殿が先頭に立ってくれたから特に何も聞かれることなくここまで来ることができたよ」
アールの言葉にギンガは安堵した。そして、今回の犯人であるワットたちの処刑内容に関して、その場に立ち合って欲しいことを伝えていた時だった。大きな音を立てて接客の間の扉が開いた。そこには、息を切らしたシドがいた。
「大変です、ギンガ様!騎士団長と騎士長が屋敷に押し寄せてきて、どこで犯人が捕まったのを知ったのか、会わせるようにと詰め寄ってきています!」
ギンガは予想のしてなかった来訪に唖然としたが、いつもの謁見の間に通しておくように伝えた。そして、アールに向き直った。
「アール殿にも立ち会ってもらいたいのだが、彼らのことだから闇の者と言うだけで何か悪口を言うと思う。しかし、そこは私がなんとか彼らを制するので一緒に謁見の間に行ってもらっても良いか?」
ギンガの申し出にアールは快く引き受けて、カレンとライカはその場に残り、ギンガと一緒にアールとレインたちがその場に同席することになった。謁見の間に着き、部屋に入るとギンガはいつもの席に腰を掛けて、アールたちをその近くに用意した椅子に座ってもらった。そして、ビッキーたちは床に付きそうなくらいまで頭を垂れていた。いつものようにシドの声が部屋に響いた。
「ギンガ様がお見えになった!一同、顔をあげるように!」
シドの掛け声でビッキーたちは顔を上げた。そして、顔を上げたと同時に目に飛び込んできたアールたちを見て一瞬、表情を固まらせた。しかし、すぐに気を取り直して言葉を発した。
「ギンガ様!奴らが今回の犯人ですね!この闇の者め!優しい顔をしていてもやる事は悪魔そのものだな!ギンガ様、今回の犯人であるこいつらには剣でめった刺しにして首を皆の前に晒しましょう!」
ビッキーはそう言うと、剣を抜き出してアールたちに切りかかろうとした。そこへ、ギンガが「待て!」と、強く制した。そして、ギンガは静かに言った。
「彼らは今回の犯人ではない。今回のことで同席してもらっているだけだ。それより、今回の犯人は先程のビッキー殿が言った処分が必要だというのか?」
「本当なら、生ぬるいくらいです!出来る事なら戒めとして闇の国に住む者たちには私たち光の国の住人の手足として働かせてやりたいくらいですよ!しかし、それはあまりにかわいそうなのでこれくらいの処分で許してやろうとしているまでです」
ビッキーから出た言葉にオメガとラックスも同意した。ギンガはビッキーたちの残酷さを垣間見たような気がしていた。そして、
「シド、犯人たちをここへ連れてこい」
ギンガの言葉に、シドが部屋を出て行った。しばらくして、捕まえた時と同じ頭から足先まですっぽりとマントを被った状態でシドとガローとクレムに連れられて犯人たちが部屋に入って来た。そこで、ギンガは再度ビッキーたちに質問した。
「彼らが今回の一連の犯人だ。もう一度聞く、彼らにはどういった処分がふさわしいと思うか?」
ビッキーは少し感覚を苛つかせながら言葉を発した。
「・・・・・・ですから、剣でめった刺しにして皆の前に首を晒すことが一番良い処分かと・・・・・・」
「・・・・・・そうか。では、やつらのマントを剥がせ」
ギンガの言葉にシドたちが犯人たちのマントを一斉に剥がした。そこから出てきた顔ぶれにビッキーたちは唖然とした。マントを引き剝がされて出てきた顔はオメガの息子のコルトーにラックスの息子のバックス、そして、ビッキーの息子のワットだった・・・・・・。
「彼らが今回の一連の事件の犯人だ。ロンガル氏殺害も供述が取れている。それに、殺害したのはロンガル氏だけではない」
ギンガはそこまで言うと、視線をアールに向けた。ギンガの意図を受け取り、アールは言葉を発した。
「彼らは犯行をやりやすくするために、私たちの仲間である闇の国の住人だったミット、レックス、シンドーも殺害していたことが分かった。そして、闇の者に成りすまし、犯行を重ねていた」
そこまで言うと、唖然としていたビッキーが絞り出すように声を出した。
「・・・・・・嘘ですよね、ギンガ様。私の息子が犯人だなんて、何かの間違いですよね?これは、何かの悪ふざけですか?悪ふざけでしたら、質が悪いですよ?ギンガ様、こんな悪ふざけが許されると思いますか!!」
ビッキーは叫ぶように言うと、剣を片手にギンガに切りかかろうとしてきた。それを、シドたちが制した。ビッキーの足をつまずかせて、倒れてもらい、その状態でシドが頭を押さえつけてガローが手に持っている剣を取り上げた。ビッキーは呻くように「嘘だ、これは何かの間違いだ・・・・・・」とひたすら繰り返していた。オメガやラックスも目の前に犯人としている息子たちを信じられないというような目で見ていた。ビッキーはシドとガローに押し付けられたまま、ワットたちになぜこんなことをしたのか問いただした。返答は次のような内容だった。
ワットは父親が騎士団長と言うこともあり、厳しく育てられた。その厳しい教育に嫌気がさしていた。ある日、学園内である生徒にちょっとした悪さの仕掛けをしたら、見事にその生徒が嵌ってしまい、その時の感覚が楽しくなってしまった。そして、一人でするのも限界があるから仲間を作るためにコルトーとバックスを誘った。この二人もまた、騎士長である父親から厳しい教育を受けていて毎日が息苦しかったという。こうして、三人で学園内で悪さをするようになったのだが、もっとすごい悪さをしたいという欲求に駆られて、ある日、狭間の川で三人一緒に釣りをしながら相談していると、遠くにミットたちの姿を見つけて、「彼らに成り代われば犯行は闇の者のせいにできて、自分たちの素性はばれないかも知れない」と、考えて彼らを殺害して服と家を奪い、そこを根城にして犯行を繰り返すようになった。しかし、ロンガルがなにかを感じ取ったのか、ある日、盗みに関してワットたちを呼び出した。そして、最近起こっている盗みは君たちではないのかと問いただしてきた。ワットたちはなんとかその場は誤魔化したものの、このままではまずいと感じ、ロンガルを殺害することを決めた。それが、一連の事件の真相だった。
ギンガは、話を聞いて今回の処分を告げた。
「では、今回の処分内容を話す。今回の一連に事件はあまりにも身勝手な犯行だ。ワット、コルトー、バックスは光の当たらない地下に住み、永久に苦しかない地下の仕事をしてもらう。そこから出ることは許されない」
その処分にワットたちはもうしないから許してほしいと懇願した。しかし、ギンガは「人殺しは断じて許されることじゃない」と言い、その処分を覆すことは無かった。ただ、ビッキーたちの立場を考慮し、ワットたちは勉強のために他国に行ったことにすることを伝えた。ビッキーたちは何も言えなくなっていたが、その処分に了承した。
こうして、一連の事件は解決した・・・・・・。
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