第5話 真相 3
突然のカレンの登場にギンガとシドたちが固まった。あまりの突然のことで声が出なくなっているギンガの代わりにシドが声を発した。
「な・・・・・・なぜ、カレン妃がこちらに・・・・・・?」
思いもよらないカレンの登場でギンガたちは固まってしまったので、それを見たアールが口を開いた。
「説明は後だ。この三人が優先だからね。ギンガ殿、この三人を私の屋敷に連れて行きたいのだが、よろしいかな?確かめたいことがあるのだ」
アールの言葉にギンガは今の起こっている状況が呑み込めないまま、「分かった・・・・・・」と言って、三人を拘束した状態でアールの屋敷に戻っていった。カレンは戸惑っていたので、ライカが「一緒に行きましょう」と、声を掛けた。こうして、皆でその場を後にした。
***
アールの屋敷について、アールは三人を庭に連れてくるように言った。そして、庭にある大きな瓶のある噴水の前に連れてくるとアールとレイン、ケントがそれぞれ三人の頭を持って水の溜まっている瓶に顔を近づけた。そして、アールが静かな声で言葉を紡いだ。
「お前たちは私たちの仲間である闇の者を殺したことはあるか?」
アールの言葉にワットが叫ぶように言った。
「そ・・・・・・そんなことしてないよ!!」
ワットがそう叫ぶと、急に噴水から水が勢いよく飛び出してきた。そして、止まったかと思うと、瓶の中の水が勢いをつけて揺れ出し、地面も揺れ出した。ギンガは起こっている現象に驚き声を発した。
「何が起こっているのだ!?」
ギンガの言葉にアールは冷静に答えた。
「直に分かるよ」
しばらくして、地面の揺れが止まり、瓶の水の揺れも止まった。そして、瓶の水が透き通るような透明になるとそこに映像が映し出された。それは、崖の上から釣りを楽しんでいるミットとレックスとシンドーの姿だった。三人は楽しそうに釣りをして遊んでいた。映像からも三人の仲の良さが伝わってくる雰囲気だった。そこへ、背後からミットたちに気付かれないように、ワットたちが近づいていった。そして、勢いよくミットたちを崖から突き落とした・・・・・・。そう、ミットたちは事故ではなく、ワットたちの手によって殺されていたのだった。その映像にワットたちは観念し、自分たちが殺したことを認めた。それから、アールは三人を家の地下にある牢屋にとりあえず入れて、ギンガたちに屋敷の上がるように勧めた。ギンガはそれに従い家に上がり、同じ部屋に通された。最初の時と同じように並んで座り、カレンはギンガの横に座っていた。そこへ、ライカがお茶とお菓子を運んできた。ライカは皆にお茶とお菓子を配り終わると、アールの横に座った。そして、アールが口を開いた。
「ギンガ殿、良かったらお茶でも飲んで気持ちを落ち着かせてください。美味しいですよ?」
アールに勧められて、ギンガはお茶に口をつけた。一口飲んで、その味に驚きカレンの方を見た。カレンは優しく微笑むと恥ずかしそうに言葉を紡いだ。
「・・・・・・実はこのお茶の淹れ方を教えてくれたのはライカさんなんです。ハーブの種もプレゼントしてくれて、それで育てるようになったんです」
カレンの告白にギンガやシドたちも唖然となりながら聞いていた。そして、ギンガが恐る恐る口を開いた。
「一体、いつから闇の者と交流があったんだい?」
ギンガの言葉にカレンはどう説明するべきか悩んでいると、ライカが「私が代わりに説明するわ」と言ってカレンと会った経緯を話し出した。
「もう、どれくらい前かしら?カレンは闇の国にしか咲かないという月光花を探しに来たのよ。でも、闇の国の噂は聞いていたからなかなか勇気が出なかったんですって。でも、狭間の森ならその花が見られるかも知れないと思って狭間の森に来たのよ。でも、なかなか見つからなくて、探していくうちに闇の国に入ってしまったの。そこへ私はちょうど用事でその近くに来ていてね、何か探し物をしているカレンを見つけたの。髪の色と格好で光の国の住人だとはすぐに分かったけど、雰囲気からして警戒しなくてもよさそうだったから声を掛けたのよ。そしたら、月光花を探しの来たというから、今の時期は無いわよ?って言ったのよ。そしたら、すごく悲しそうな顔をするから放っておけなくなって家に呼んだの。で、話していくうちに仲良くなっていって今も交流が続いているのよ」
ライカの話にギンガは「信じられない」と言う顔をして話に口が挟めずにいた。でも、カレンの方を向いて、なんとか言葉を絞り出した。
「・・・・・・カレン、闇の国の者の噂は知っていただろう?危険だとは思わなかったのか?」
ギンガの言葉にカレンは委縮してしまい、何も言えずになっていた。そこへまたライカが説明した。
「あなたは、光の国と闇の国に全く交流が無いと思っているみたいだけど、狭間に住む住人たちは交流がある人たちもいるのよ。カレンも最初は私を見て驚いていたけど、大丈夫と感じて警戒心は解いてくれたわ」
ライカの言葉にカレンがおずおずと話し始めた。
「・・・・・・私も最初は危ないかなって思ったのですが、月光花をどうしても一目見たくて訪れました。ライカさんに声を掛けられて最初は驚きましたが、雰囲気で危ない人じゃないとすぐに分かったのでライカさんに付いて行き、この家でいろいろお話しました。ライカさんとのお話はすごく楽しかったです。その、私、寂しかったのです。光の国では私は立場上、お友達と言うのが居なかったから、初めてお友達が出来て本当に嬉しかったんです。今日のこともライカさんが教えてくれて、それで、あの場所に行ったんです」
そこに、ギンガが疑問を口にした。
「でも、どうやって教えてもらったんだい?見送ってくれた時は屋敷にいただろう?」
「鳥よ」
ギンガの疑問にライカがすかさず答えた。
「カレンとはたまに伝書鳥を使ってやり取りをしていたのよ。だから、今回のことも、あなたたちが来ることはカレンから伝書鳥を通じて知っていたわ。だから、あなたたちが初めて来たときに、何の用って聞かなかったでしょう?」
言われてみればその通りだった。あの時のライカの言葉は、来ることを知っている口調だった。今まで感じていた疑問が一気に分かり、ギンガは言葉を発せなくなっていた。そこへ、アールが言葉を紡いだ。
「ギンガ殿、カレン殿が遊びに来た時に言っていたよ。僕とライカが羨ましいって・・・・・・。私もあんな風にお話が出来たらいいのにってね。カレン殿はギンガ殿と色々話してみたかったみたいだよ。でも、規律が邪魔をしてそれが出来なかった。でも、お互いを理解しあうにはお互いが話さないと何も分からない。それは時にはちょっとした口喧嘩になってしまうこともあるかもしれない。でも、そこから更に話し合って理解していく努力が必要なんじゃないかな?カレン殿はギンガ殿を大切に思っているよ。大切だからこそ伝えたいことも沢山あったと思う。一度、時間をとってちゃんと話をしてみてはどうかな?」
アールの言葉にギンガはどう返事していいのか分からない様子だったが、カレンの方を見ると、カレンは優しく微笑みながら「よろしくお願いします」と小さく言った。
「ギンガ様、私はギンガ様と信頼関係や絆をちゃんと築きたいです。だから、いろいろお話したいです。だから、私の言葉も時には聞いて欲しいです」
カレンは優しく微笑みながら言葉を紡いだ。その様子を見てギンガは「分かった・・・・・・」と言い、カレンの手を優しく握った。ギンガとカレンの距離が少し縮まったのか優しい雰囲気が流れた。そこへ、錠の音が鳴り響いた。ライカが「やっと来たわ」と言い、客人を呼びに行った。しばらくして、部屋にその客人が入って来た。入ってきたのはミミとその父親だった。ミミはカレンを見つけると小走りで近寄って来た。
「お姉ちゃん!これ、約束の冠だよ!」
ミミはそう言って、カレンに月光花で作った花冠をカレンに渡した。
「わあ・・・・・・。ありがとう、ミミちゃん。大事にするね!」
カレンは嬉しそうに冠を受け取り顔には嬉しそうな笑顔が溢れていた。そして、親子が帰り、時間も遅くなってきたころだった。アールが「良かったら・・・・・・」と、言って言葉を発した。
「もう遅いから、今日はここに泊まっていくといいよ。今から戻ったら着くのは夜中になるだろう。それでいいかな?」
アールの言葉にギンガは「いや・・・・・・」と言い、口を開いた。
「今の時間の方が彼らを連れ帰るのにはちょうどいいと思う。明日になってからでは人目があるから、何を言われるか分からない。それよりは皆が寝静まっている時間に戻った方が良いかもしれないと思っている」
「・・・・・・そうですか。分かりました」
「ただ、もし迷惑でなければカレンだけはここに泊まって明日の朝にアール殿たちと一緒に私の屋敷に来て欲しい。カレンが一緒であれば住人たちは特に何も言わないはずだ。よろしくお願いしたい」
「分かりました。では、明日カレン殿と一緒にギンガ殿の屋敷に伺います」
そして、ギンガとシドたちはワットたちを連れて一足先に屋敷に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます