第4話 真相 2

 三年前。

 闇の国では頭領であるゲンガルを筆頭として国を治めていた。ゲンガルは頭領の家系からその地位に就き、国を仕切っていた。その頃は闇の国も上下関係が厳しく上の者が言う言葉に逆らうことは許されなかった。住人たちは不満に感じていたが逆らうとどんな罰が課せられるのかが怖くて誰も意見が出来なかった。そこへ、正義感が強く、昔からのしきたりに疑問を持っていたアールが立ち上がった。アールは罰を受ける覚悟でゲンガルに規律の改正を求めて直接会いに行った。ゲンガルは最初、アールの話を聞き流していた。しかし、毎日のようにアールが「昔のからのしきたりに囚われてどうする」「皆の意見を聞くべきだ」と主張するので、ゲンガルは低い声で言った。


「では、どちらが頭領にふさわしいか住人に決めてもらおうではないか。お前が勝ったら頭領の座は渡してやろう。そして、頭領になれたらお前が新しく規律を作ればよい」


 アールはゲンガルの言葉に了承した。そして、二日後に集会を行い、投票を行うことになった。国中に御触れが出され、集会には沢山の住人が集まった。そして、ゲンガルが声高らかに喋った。


「皆の者!今から頭領を決めるための投票を行う!候補者は私と隣にいるこの生意気な小僧だ!それぞれ、この広場を中心とした右側に私が!そして、左側にこの小僧が立つ!皆は洞笛の合図で、頭領にふさわしいと思った方に並ぶ!良いな!」


 そして、しばらくするとゲンガルの側近が洞笛を吹き、その合図で住人たちは頭領にふさわしい方に並び始めた。その結果・・・・・・。

 ゲンガルの方にはあまり人が並ばず、ちらほらといるだけだった。逆にアールの方は沢山の人が並び収集がつかないくらいだった。圧倒的なアールの勝利にゲンガルは愕然とし、肩を落とした。アールはそんなゲンガルに言葉を掛けた。


「これが住人たちの答えです。約束通り、頭領の座は渡して頂きます」


 あの後、ゲンガルは大人しく頭領の座をアールに譲り、ひっそりと身を引いた。そして、アールが頭領となり、ライカを妻に迎えた。そこへ、頭領になったアールの元にレインたちが側近にして欲しいとやってきた。アールは「仲良くやっていこう」と、レインたちを受け入れた。そして、規律の改正を行い、上下関係の廃止をした。上の者でも間違いを言っているのであれば、下の者でも上の者に意見できるようにした。そして、みんなが笑顔になれるような国を作ろうとアールは決意したのだ。そんな新しく頭領になったアールは住人から好かれ、住人同士が一緒になるときや子供が生まれたときは皆、報告に来ていた。特にそういった規定があるわけではないが、何かあった時や相談があるときでも、住人たちはアールを頼って屋敷に訪れたりしていた。そして、今に至るのだった。


***


 アールが話し終わると同時に、例の家に着いた。アールはギンガたちに茂みに隠れて待とうと言い、アールはギンガと一緒に窓から一番近い茂みに身を潜めた。シドやレインたちもそれぞれ茂みに隠れた。ライカも別のところで茂みに隠れた。その時、ライカは一つの影を見つけて微笑んだ。しばらく、隠れていると三人がやって来た。この前と同じ、フード付きのマントを深々と被っていた。ギンガは気が焦ったのか飛び出そうとしていたので、アールがそれを制した。三人はこの前と同様に鍵を開けると中に入っていった。アールはギンガと近くの窓からこっそりと様子を伺った。三人は着替えが終わったのかくつろいでいた。何かを話しているようだったので、耳を澄ませて、会話の内容に聞き耳を立てた。


「全く、あの爺にはうんざりするぜ」

「そうだね。同じことを毎回注意してくるからね」

「あの爺、どうにかならねえかな?」

「とりあえず、今日の襲撃する家はその爺の家にしようよ。でも、毎回注意されるのは癪だね・・・・・・。どうする?」


 二人の会話をずっと黙って聞いていた残りの一人が口を開いた。


「そうだな・・・・・・。あの爺にもロンガルのように死んでもらうか・・・・・・」


 残りの一人の言葉に二人は「それがいいかもね」と賛同した。アールとギンガはこの三人で間違いないことを確認すると、シドたちに出てきたところを捕まえるように指示した。そして、玄関近くに待機して三人が出てくるのを待った。やがて、また頭の上からマントをすっぽり被った状態で三人が出てきた。そこへ、ギンガが大きな声で叫んだ。


「捕えろ!!」


 その声にシドたちが一斉に捕まえに掛かった。しかし、すばしっこいせいかなかなか捕まえられない。すったもんだの挙句、一人二人と捕えた。最後の一人もギンガが捕まえたが、砂を投げつけられて手が緩んだ隙に逃げ出し、来た道に走っていった。その時、何かにつまずいたのか、派手に大きく最後の一人が転倒した。どこか強くぶつけたせいか、その場からなかなか動こうとしなかった。それと同時に、ライカが茂みから顔を出して最後の一人に馬乗りになり、縄で最後の一人の手足を縛った。その様子にギンガとアールは唖然と見ていた。


 こうして、三人組は捕えられた。そして、ギンガが三人のフード付きのマントを勢いよく剥がした。マントの下からは、灰色の服を纏い、ぼさぼさの黒髪が現れた。ギンガはそれを見て口を開いた。


「お前たちが一連の事件の犯人たちだな!この卑劣な闇の者め!アール殿!これが本当の闇の者の正体だ!どう今回のことを詫びるつもりだ?」


 ギンガが勝ち誇ったように高らかと声を上げた。しかし、アールは冷静だった。そして静かに口を開いた。


「・・・・・・これを見てもかい?」


 そう言って三人のうちの一人に近づき、髪の毛を勢い良くつかむと思い切り引き剥がした。すると・・・・・・、現れたのは鮮やかな赤色の髪だった。他の二人も同様に引き剥がすと赤色やオレンジ色の髪が現れた。どうやら黒髪の正体は馬の尻尾で作った模造髪だったらしく、それを頭にくっつけていたらしい。ギンガは三人組の正体に唖然としながら三人の顔を眺めていると、その中に一人だけ知っている顔があった。その顔はかつてビッキーに紹介された、息子のワットだった。信じられない犯人たちにギンガは言葉が出てこなかった。そんな中、アールがライカに話しかけた。


「やれやれ、縄を張って捕まえるなんて原始的なやり方だが、見事だったね。怪我はないかい?」

「大丈夫よ。私が丈夫なの、知っているでしょう?」

「でも、縄を張るにしても一人では無理だろう?どうやって張ったんだい?」

 アールがそう言うと、ライカは縄を張った方向に顔を向けて、声を上げた。

「もう、顔を出してもいいんじゃない?」


 ライカが縄を張った方に顔を向けて言葉を発した。がさがさと音を立ててライカと縄を張った協力者が姿を現した。


それは・・・・・・カレンだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る