第3話 真相 1

第三章 真相

 五日後の朝が来て、ギンガたちはまた早朝から出発するため、馬に荷物を括り付けたりして準備をしていた。カレンが見送るために出てきたが、その表情は不安そうだった。シドたちが馬に跨り出発を待っていると、ギンガはカレンの様子が放っておけなかったのか、「大丈夫」と言って、カレンを優しく抱き締めた。それから、馬に跨り騎士に門を開けてもらうと、声を張った。


「・・・・・・出発だ!!」


 ギンガの言葉に、物凄い勢いで砂煙を巻き上げながらギンガたちは飛び出していった。あっという間に姿は見えなくなり、カレンはギンガたちが無事に帰ることを祈りながら、屋敷の中に入っていった。そして、そのまま「祈りの間」に行き、光の国の守り神の前で、手を合わせて祈りをささげていた。それからは、ティーマットに刺しゅうを施したり、育てているハーブの手入れをしたりしていた。そして、ベランダで花に水を上げている時だった。一羽の鳥がカレンの元にやってきた。カレンは指を差し出すと、鳥はその指に留まった。カレンはそのまま、部屋の中に入っていった。


 その頃、光の国と闇の国の狭間の森を抜け、闇の国にギンガたちは入っていた。しかし、馬の速度は緩めずにそのままアールの屋敷まで一直線に向かって行った。闇の住人たちは「何事だ?」と、荒々しい来訪者に唖然としていた。アールの屋敷について、前と同じところに馬を繋げるとアールの屋敷に向かい、錠を鳴らそうとした。錠を鳴らそうとして、手を掛けようとしたとき、ドアが開いてライカが顔を出した。ライカの表情から見るに、少し怒っている様子だった。ライカはギンガたちを少し睨みつけると、苛立ち交じりに声を出した。


「ここはあなたの国ではなく、闇の国ですよ?もう少し礼儀をわきまえてください。あんなに派手な登場では住人たちが驚きます。もう少し気の利いた配慮は出来ないのですか?」


 ライカの言葉にギンガは少し苛立ちを感じた。


「こちらは、そちら側から被害を受けている側だ。礼儀や配慮をする必要は無いであろう」


 ギンガの言葉にライカは怒りそうになったが、そこは気持ちを抑えてアールのところに案内をした。この前と同じ部屋に通され、アールに促されてギンガたちは席に着いた。そして、ギンガが口を開いた。


「約束通り、五日後に再度訪れた。それで、何か収穫はあったのか?」


 ギンガはアールたちに威圧感を向けながら言葉を発したので、その様子にライカは突っかかりそうになったが、アールがそれを手で制した。そして、アールが落ち着いた口調で言葉を紡いだ。


「話すより、見たほうが早いでしょう。今からある場所に案内しますので、一緒に来て頂いても構いませんか?」


 アールがそう言うと、ギンガは了承し、皆でその場所に行くことになった。ライカは「準備するから少し待っていて」と言うので、ライカの支度が終わるのを待っていた。しばらくして、手提げ鞄を持ってライカがやってきた。ギンガは「自分たちは馬で行く」と言ったが、アールがそれでは目立ってしまうから歩いていこうという提案を渋々受け入れ、みんなで歩いてその場所に向かうことになった。歩いて向かっていると、住人たちがアールたちに声を掛けてきた。住人の中にはジンに「アールをあまり困らすんじゃないよー」と頭を撫でながら茶化す声もあった。ジンはそれに「分かってるよ!」と言って撫でられている手を払いのけていた。ジンはやんちゃな雰囲気のせいか、住人たちに可愛がられているようだった。他にも、ライカに「木の実がたくさん採れたから今度また一緒にお菓子を作りましょう」と言う声もあった。住人たちに時折声を掛けられながら歩いていると、今度は親子に声を掛けられた。父親がアールに「ライカに少しいいかな?」と、声を掛けてきたので「いいよ」と言うと、父親はライカに話しかけた。


「ミミがライカに話があるみたいでね。少し聞いてくれるかな?」


 父親がそう言うと、父親の後ろから幼い女の子が顔を出した。そして、ライカにおずおずと尋ねた。


「あのね、この前のお姉ちゃんには今度はいつ会える?この前の時にお約束した冠を渡したいの・・・・・・」


 ライカは優しく微笑むと、ミミの頭を撫でながら言った。


「後で来ると思うから、その時に渡してあげてね」


 ライカがそう言うと、ミミの顔がぱっと明るくなり「うん!」と嬉しそうに返事をした。アールは父親に夕刻ぐらいに来て欲しいことを伝えると、親子はその場を後にした。ギンガはさっきからのアールと住人たちのやり取りを見て、口を開いた。


「アール殿は闇の国の頭領であろう?あれでは、示しがつかない。頭領なら頭領としての威厳を出さないと住人たちの好き放題になるぞ。もっと、強気に出るべきではないのか?」


 ギンガの言葉にアールは「なぜ?」と言うような顔をした。そして、口を開いた。


「僕も元々はただの住人だよ?」


 アールの言葉にギンガは虚を突かれたような顔をした。なぜなら、遥か昔からのしきたりで光の国も闇の国もそれぞれ頭領の家系から頭領になり、その妻になるものも頭領の妻として相応しい教育を受けている家系から妻を迎え入れているとされていたからだ。だから、ギンガは頭領の家系からその地位に着任し、カレンは妻になるための教育を受けている家から嫁に来ている。ギンガは闇の国でもそのしきたりは続いているものだとばかり思っていた。


「じゃあ、ライカ殿も・・・・・・」


 ギンガの言葉にライカはあっけらかんと答えを返した。


「私も元はただの住人よ。アールとは元々恋人同士だったからアールが頭領になった時に妻として一緒になったのよ」


 ギンガはその事実に驚きを隠せずにいた。そして、アールはなぜ自分が頭領になったのか、その経緯を話し出した。


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