第7話 魔力とトレーニング

「それじゃあ……最初に、みんな魔力を感じて動かすことはできる?」


 周囲は暗闇が支配する街道沿いの広場。焚火を囲みながら、あたしは少し考えてまずそこから話し始めることにした。


「おそらくは」


 少し自信なさげにヒイラギが答えた。


「わかんねぇ!ってか、魔力ってなんだ?MPか?」


 タケルは分かっていないと、素直に両手を上げた。

 コノハは二人を交互に見て、どう答えるか迷っているようだ。


「ステータスの項目にスキルって欄があるだろ。その中に魔力感知と魔力操作って項目がないか?見直してみて」


 そういうと3人とも首を傾げた後に。各々ステータス表示を見直して、一様に驚いた顔をする。


「どういうことだ?いきなり二つとも現れてる」


「わたしもだよ」


「俺は操作しかない」


 どうやら3人とも魔力にかかわるスキルはあったようだ。


「えっと、まずステータスの表示は、全く知らない知識は教えてくれないらしい。存在すら知らないと、持っていてもそこには表示されないんだとか。いままで見えてなかったってことは、ボラケの冒険者ギルドでは魔力感知、魔力操作については教えてないってことかな」


 この二つは、職についてスキルを使っていると自然発生するスキルらしい。

 存在が分かったところで、普通にスキルや魔術を使う分には不要なので、教えていないのだろう。あたしの故郷だと『そういうスキルが生える』とだけ教えられているらしい。


「二つとも基本的にみんな持ってる。スキルや魔術を使うと勝手に身につくらしい。タケルが感知を持ってないのは、多分魔術を使ってないからだと思う。スキルを使うのに操作は前提っぽいけど、感知が無くても発動するから」


「すまない。すでに着いていけないのだが……ステータス表示には隠された記載があるのか?」


「隠されてはいないよ。“自分が知らない”だけ。効果が無くなってるわけじゃないし、知れば見えるようになる。どうしてそんなことになってるのかはあたしも知らない。秘めたる力があるかも、くらいに思っておけばいいんじゃないかな」


 師匠は、神様が何を考えてこんな仕様にしたのかはよくわからない、とぼやいていた。


「それで、二人は感知を持っているってことは、魔力を感じて、自分で操作できる最初の段階はクリアしてるってことだな。タケルは……どうすっかな」


 感知がないってことは、スキルを発動できるけど、魔力の動きでそれを感じ取れてはいないってことだな。

 ええっと、感知を得るのに手っ取り早いのは魔術を覚えることだっけ。侍のような近接前衛職のスキルを使っていると、感知の取得は時間がかかるはずだ。


「とりあえず感知がないと話が先に進まないんだけど、手っ取り早く覚えるには魔術を使うのがいいらしい。タケルは魔術の素質はあるか?……その前に、素質として表示される魔術について知ってるか?」


 想像もしていないと表示されない場合があるはずだ。


「火の素質はあるぜ。魔術の種類くらい知ってるさ。火に水、あとは土に風、光と闇だろ」


表の6属性と言われるやつだな。


「それに無属性もだよ」


「ああ、それもあった」


 どうだ、という顔をするが、それでは足らない。


「ヒイラギ、追加はある?」


「たしか……魔術を打ち消す対魔属性、それに重さを操る属性もあったはずだ。重さのやつは、実家で少し聞いたくらいだけど、対魔属性については書物で読んだことがある」


 重さは重力属性の事だろう。


「あってる。重さは重力属性。そのほかに雷を操る雷属性、それから時間を操る時属性。空間を操る空間属性なんてのもある。無属性、対魔属性、雷、重力、時間、空間の6つで、裏の6属性だな。えっと、これも魔術師ギルトが勝手に定めてるだけで、あんまり意味は無いんだけど、一応ステータスの表示も人類に合わせてくれるらしい」


 神様の方が都合をつけてくれるらしい。

 祈ればちょいちょい啓示もくれるし、ありがたい話だよな。


「他にも、錬金術、召喚術、付与術……えっと、後は死霊術に、符術なんてのもある。魔術師が覚えない系統はメジャーじゃ無かったり、そもそも2次職以上に分類されるのもあるけど、『素質欄』に出る内容は結構多い。これも、全く想像にしないと表示されないらしい」


 自分が知らない素質について知るためには、ギルドなどで調べるか、あるいは他の人にステータスを見てもらって教えてもらうのが早い。

 ステータス表示は見る人によって違うらしい。


「お!見ろよ!雷が増えてる!これって素質ありって事か!」


 どうやらタケルには隠れた素質があったらしい。

 二属性もそれなりに貴重だけど、表と裏で一属性づつは割と良くあるんだっけ?それでも火と雷は中々に攻撃的な属性持ちだな。


「あ、私も光だけだったのが、召喚ってのが増えているよ!」


 コノハも魔術2属性の適性持ちか。召喚は結構希少だけど、師匠は確かほぼほぼ死に素質って言っていたっけ。ちょっと興味があるから、帰ったら詳しく話を聞いてみよう。


「僕は……増えているのは無いな」


 ヒイラギは変化なし。

 どんな素質持ちなんだろう。ステータスについては、プライバシー?的な問題があるから詳しく聞かないし、表示も見せ合ったりしないのだけど……。


「ヒイラギは何の素質を持ってるんだ?」


 タケルはそう言うのを気にせずズカズカ聞くよなぁ。

 まぁ、すんなり答えてくれたから話しやすかったし、良いと思うけど。


「僕は土と闇。それに無属性もある」


「ヒイラギは三つか!」


 これは中々に珍しい。

 表の6属性の内2つの適性が有れば、魔術師から上の職に転職する際に賢者が選べるはずだ。


 適性があったからと言って能力が大きく変わるわけでは無いが、幾つかメリットはある。

 今回の場合、タケルが火属性の適性があるので、それを利用させてもらおう。


「それなら、うちの師匠からの教えの又伝授。ヒイラギ、タケルに詠唱魔術としての炎弾ファイア・バレットを教えてほしい」


「詠唱魔術を?……すまない、何を期待されて居るのか分からないんだが」


「ああ、えっとそこからだよな」


前にちょろっと話した気もするが、やり方を本格的に見せたわけじゃない。

 

 詠唱魔術というのは、魔術師が発動する”魔術”を、魔術師でない者が使えるようにした一つの技術である。

 冒険者ギルドでも、魔術師ギルトでも講習会を開いており、一版には大体1~2カ月から、長いと数か月かけて”魔術師がスキルとして発動している魔術”を取得する。


「詠唱魔術ってのは、名前通り詠唱……まぁ、長ったらしい呪文を唱えて魔術を発動する技術だな。あったら便利って物もあるから、ギルドでも講習で話位は出ただろう?」


「ああ、知ってるぜ。結構金掛かるよな」


 うん、金がかかる。


 冒険者として有用なのは、動く際の音を低下させる忍び足スニークとか、物の重さを軽くする軽量化ライトウェイトなどかな。

 後は、眠りの霧スリープ・ミストを医療関係者が覚えたり。安静が必要な患者を寝かしつけるのに使ったりするらしい。


「金銭的な事もそうだが、余り実戦的でない印象だな。初級魔術は詠唱が不要、なんなら発声も不要なのだが、詠唱魔術は明らかに長い。戦闘では使いづらいだろう。魔術師でない者が使っても威力も効果も出ないしな」


 それもまた事実。タケルの侍、コノハの治癒師ヒーラー、ヒイラギの魔術師ウィザード、それにあたしが名乗った盗賊シーフ。これらは全て1次職と呼ばれ、覚える魔術やスキルは初級と呼ばれている。


 この初級に分類される魔術やスキルの良い所が、いわば念じるだけで発動する点だ。とても実戦向き。スキルや魔術名である力ある言葉キーワードを叫んだ方が威力が出る、なんて話もまことしやかに囁かれているが、まぁ、言わなくても困らない。


 詠唱魔術は、このメリットを失う。

 さらに言えば、魔術を使う場合にはINTと呼ばれるステータス値を参照するのだが、この値は魔術師系とそれ以外で大きく差があるため、魔術師以外が使っても効果が薄い。

 治癒師ヒーラーのコノハはINTが高くなりやすいが、前衛のタケルが魔術を覚えてもそこまでメリットは無い。攻撃魔術なら特にだ。


「ってのは分かった上で、魔力感知を得るには魔術を使うのが一番なのも事実なんだ。スキルより魔術の方が、魔力を軸に効果が発揮している時間が圧倒的に長いからな。んで、ええっと……百聞は一見に如かず、だったかな? まぁ、やってみる方が速いんだけど……炎弾ファイア・バレットの詠唱、わかる?」


 そう問いかけると、ヒイラギは首を振った。まあ、そうだよ。


「ステータスの、職業欄か、火魔術の部分から、習得しているスキル一覧が見られるよね。その中から炎弾ファイア・バレットを選ぶと、簡単な説明や消費MPが出ると思う。そこに、知っていれば詠唱って項目が出て来る」


 ヒイラギは改めて自分のステータスを確認しているようだ。


「確かにある。なるほど、これも知らなければ見えないのか」


「そう。持ってるスキルや魔術は、昔の名残で自動的に見えるようになるらしいけどね」


 昔はレベルアップの度に”ステータスがいくつ上がった”だとか、”●●のスキルを覚えた”だとかが、天からのメッセージとして届いていたらしい。

 数百年だか前に無くなったらしいけど。


「そこに表示された詠唱を、ヒイラギがタケルに覚えさせるつもりで読み上げて、タケルがそれを繰り返して言う。復唱って言うらしいけど、それを何回か繰り返すと、タケルが炎弾ファイア・バレットを使えるようになる」


 これを復唱法っていうらしい。


「そんな事でか?」


「一対一でやるのがポイントだな。後は素質。適性が無い魔術系統だと何日もかかる。まぁ、すぐに終わるから信じて真面目にやってみ?」


 この方法は二人がどれだけ真面目にやるかにもかかっている。


 ちょっと抽象的な話に成るが、教える方は詠唱を唱えることで『この人に魔術を教えて良いですか?』とその属性を管理する神様に問いかけ、教わる方は復唱することで『教えを守って正しく使いますから使わせてください』と神様にお願いする、くらいのやり取りらしい。

 何度かそのやり取りを聞かせると、そこまで言うなら、と神様が許可してくれるのだとか。適性があると許可がもらえるのが早く、ないと『日を開けて出直しておいで』と言われるらしい。


 ヒイラギは半信半疑と言った感じだが、タケルはいい方向に素直だ。

 とりあえずやってみようぜ!と練習を始める。


 ……危ないから向こう向いてやれ。


「……偉大なる炎の神の力もて、紅の衝撃をここに刻まん!炎弾ファイア・バレット!」


 5回ほど復唱をしたと事で、タケルがかざした手の先から、握りこぶしより小さな炎の弾丸が飛び出していき、森の手前で弾けた。成功したらしい。


「!!」


「おおおっ!なんか出たぞ!」


「今魔術を放った時の感覚を良ーく思い出してみな。それが、魔力を感知してるって事だから。感知が生えて来てなかったら、もう一度、よく感覚を研ぎ澄ませながらやってみて」


 タケルのMPだと炎弾ファイア・バレットは打てて4発くらいか。1発撃つのに5分は休憩が必要だから、威力を考えると実用的ではない。

 これはあくまで魔力を感じるためのトレーニングだ。


「おお、確かになんだコレ!身体の中に動く物があるな!」


 タケルは魔力を感じていなかったから、感知を得たら明確に魔力が意識出来る様になった。


「ん〜……多分、動かせていると思うんだけど、ちょっと自信ない」


 コノハは感知を持っていたが、意識していなかった為魔力の認識が甘い様だ。


「何か魔力を使ってみると良いんだけど、なんか無い?」


 あたしも治癒師ヒーラーのスキルを全部覚えては居ない。

 治癒ヒール聖衝弾ホーリー・バレットは分かるが、その二つだけか?


「それなら鎖鎧メイルを使ってみるよ。防御力を上げる魔術だけど、MPの消費が大きくて普段は使いづらいから」


「へぇ、そんな魔術が」


 コノハが魔術を発動させると、彼女の体の周りに光の格子が一瞬だけ張り巡らされる。それはすぐに透明になって消えるが、あたしの目には術の残滓か、はたまた術その物かコノハを取り巻く魔力の流れが見えた。


「あ、これ判り易いかも。今までと明らかに違う」


 コノハも明確に魔力を感じ取ることが出来たらしい。


「ヒイラギはどうだ?」


「……魔力は多分理解している。それよりも聞きたい事が増えてしまった。詠唱魔術とは、あんなに簡単に覚えられるものなのか?」


「初級だけな。タケルの炎弾ファイア・バレットを見れば分かる通り、威力も無いし、使い勝手も悪いけど、先生と生徒、それに素質がかみ合えば詠唱がある物はすぐに覚えられるよ。もちろん、あんまり知られて居ない。魔術師ギルドは積極的に隠してるらしいしな」


「……どうしてだ?」


「さあ?あたしも師匠に聞いただけだし。魔術師の地位が揺らぐとか、唱えるだけで魔術が使えるのは危ないだとか、いろいろ言われてるな」


この方法が発見されたのはずいぶん昔で、実際何が決定打で秘匿することになったのか、正確な記録は残ってないとかなんとか。


「……逆に、こんな簡単に教えてしまって大丈夫なのか?」


「いいんじゃね? なんか師匠があたしの国でめんどくさい事になったとか言ってたけど、それは全部魔術師ギルドに責任を押し付けたらしい」


 魔術師ギルドってのは、魔術を研究している魔術職の組合だ。

 発足は冒険者ギルドと同時期だとかいうくっそ古い組織で、あたしの出身でもある東大陸で一国を牛耳っているというか、主体となって建国するくらいの事はやってのけた組織。


 ただ力が強いかっていうと微妙な印象。あんまりかかわる事がないせいかも知れない。錬金術師が別の組合だから、生活にも関わらないし、何がしたい組織なのかあたしには判らん。


「素質が無い場合も、1日一時間付きっ切りで練習、を繰り返すと数日から長くても2週間くらいで使えるようになるぜ。あたしが使ってる清潔クリーンとかは、そうやって覚えた」


 あれ、気が知れた相手じゃないと結構しんどいと思う。


「師匠曰く、広めてもいいけど自己責任で、って話だ」


 悪用も出来なくは無いけど、捕まるからな。

 街には嘘が見抜ける職について居る役人が必ずいる。街の出入りは領主のスキルによって感知されるから不法な入出は不可能だし、悪いことをすれば度合いにもよるけど、まぁ大抵は捕まる。


「そうか。……しかし使い方を考えれば便利かもしれないな」


「ああ、それはそうだと思うぜ。魔術師は魔術を一杯覚えるけど、そうじゃない魔術師系も居るだろ」


 付与魔術師や錬金術師は使える魔術のレパートリーが少ない。

 師匠は付与魔術師からスタートしたらしいから、最初は詠唱魔術に頼っていたらしい。今もちょいちょい唱えている。


「それで、そろそろ本題に移っていいか?」


 前置きが長くなったが、そもそもの話の発端は、あたしがしていたトレーニングについてのはずだ。


「今、3人が感じている魔力ってのは、スキルや魔術を使う時にMPとして消費されるだけじゃない。あたしたちのステータスを維持するのにも関わってる」


「ステータスを維持?」


「えっとな。あたしたちの肉体的な力、つまり成人前に発揮できていた能力は大きく変わって無くて、魔力によって補正されてるんだ。元の肉体的な力のみってのは、いうなればHPが0の状態。HP0って状態が、神様の加護を使い果たして、ほんとに生物としての力しか残ってない状態らしい」


 HPが0になるようなダメージを受ければ、大けがをしているのでそのまま死ぬ。

けれどHP0事態はあくまでそう言う戦闘不能状態らしい。もちろん、試したことは無い。


「逆に言うと普段、あたしたちの力は魔力によって強化されてる。だからステータス通りの能力が発揮できるんだけど、逆に身体にかかる負荷は小さくなってるんだ。成人する前は、やっぱり体が大きかったり、ごつい奴が力が強いだろ」


「それはステータスが高いからでは?」


「成人まで神様の影響はないってされてる。つまり、ステータスが高い奴が力が強いんじゃなくて、力が強い奴のステータスが高く表示されるんだよ。んで、じゃあなんでその違いが出るかって言ったら、いっぱい動いてるからだ。未成年の間は、それがトレーニングに成ってる」


 実際、あたしの居た孤児院でもよく動く奴の方が身体はデカくなったし、ステータスも高かった。


「ところが、成人すると神様の奇跡で全部のステータスが10くらいまで引っ張り上げられるだろ。判り易いのは力かな。昨日までバケツの水一杯運ぶのがやっとだった奴も、なみなみ二つ余裕で持てるようになる。でも、別に身体がでかくなったりしないよな」


 あたしたちの身体は、15歳の成人を迎えるタイミングで、全員神の奇跡によって健康体になる。

 流石に腕とか足とか生えてきたりはしないが、病気は無くなるし、麻痺とかそのほかの傷害なんかも一度だけなら治る。

 なんなら頭もちょびっとだけ良くなる。


「でも、神様の奇跡は魔力による補正がメイン。この補正が入っている分、身体を動かした時にかかる負荷は小さくなっていて、結果出来に身体を鍛える効率は悪くなっている……らしい。こっから先は想像がいっぱい入るんだとか」


 この効率低下を回避する方法が、あたしがやっていたステータスを抑え込んだトレーニングだ。

 体中に行き渡っている魔力を制御して体内の濃度を調整し、肉体的に負荷がかかる状態にすることで、効率よいトレーニングを実現……できているかは微妙。


「素の肉体の能力が高い方がレベルアップの時に成長しやすいとか、いろいろ言われてはいるけど、実際よくわかってない」


 こじんじょうほう?って奴には神様がうるさいらしくて、あんまり情報が得られないと師匠が嘆いていた。


「まぁ、筋肉はつくらしいぞ。師匠はこの方法で肉体改造したって言ってたし」


 魔術で思い出さないと分からないレベルなんだけど、師匠はあたしが初めて出会った時と比べると、確かに腕とか足とか引き締まって来ている。そもそもあたしと会ったのは冒険者に成ってそんなに経っていなかったらしいしから、効果はあるんじゃないかと思う。


「ええ、筋肉つくの?止めたほうが良くない?」


 あ、コノハが姉さんと同じ顔している。


「いや、別にそんなに付くわけでもないから」


「で、でも……やっぱりさ、筋肉は可愛くないと思うんだ」


 食い気味に突っかかられても……。タケルとヒイラギに視線を送るが目をそらされた。

 ちくしょう、役に立たないな。


「あ、ほ、ほら、将来的に垂れたり弛んだりするのの防止にもなるから」


 そう言うとぴくッと反応して、スーッと席に戻って行った。

 ……まだ垂れたり弛んだりを気にする年齢じゃないだろ。


「っと、まぁ、あたしがやってたトレーニングはそんな感じ。ステータスの影響を抑えているから、タケルにはあたしの動きが遅く見えたわけだな」


 しかし、良く気づいたとも感じる。

 あたしはこのトレーニングを始めてそれなりになるし、全力を見せても居ないから、あたしの動きの良し悪しなんてそんな分からないと思うのにな。


「……難しいな。理屈は分かるが……ステータスを抑制するか。考えたことも無かった」


「魔力ってのはなんとなく分かったけどよ、抑え込むのはわかんねぇ」


「まあ、そんな簡単にはな。でも、意識できたなら1週間も練習すれば、抑え込みの効果くらいは分かるようになるぜ」


 体動かしながらそれが実践できるようになるのは、もう少しかかるかも知れないけどさ。


「さて、トレーニングの話はともかく……お客さんみたいだ」


 森の方から、ガサゴソと茂みをかき分ける音をあたしの耳は捕らえていた。

 数は1、雰囲気から言って魔物だろう。あたしにとってはそう強くないが、3人にとってはそれなりに強敵。30Gくらいの魔物だと推測する。


「敵か!?」


 半分喜々として立ち上がったのはタケル。やる気があるのは良い事だ。


「やり過ごしてもいいけど、倒せるなら倒しちゃおうか。そろそろいい時間だし、まずは様子見からな。小結界キャンプ


 スキルを発動した瞬間、柔らかな光の膜が天幕を含めた直径10メートルの範囲を包み込んだ。

 さて、どんな魔物が寄ってきたのかな?


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夏にはコロナ、クリスマス前には胃腸炎と、今年の後半は想定外の流行り病に苦しめられました。皆さま体調にはお気を付けください。


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俺は地球に帰りたい~努力はチートに入りますか?~

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