第11話 一旦解散
「話が渋滞してきたッチ。一旦解散するッチ」
「は? ふざけんじゃないわよクソザル。こんな状況で帰れるかっての」
ルビィの言葉にマリエが噛みつく。しかし正直言ってチカとアスカはいろいろなことが一度に起きすぎて、少し状況を整理したくもある。
「明日も学校ッチ。もう帰るッチ」
「イヤなこと言うわね……」
義務教育の辛いところである。
とはいうものの、後ろ髪惹かれながらもアスカ達三人は帰路に就くこととした。謎の男も気になるが、やはりメイの事は気になる。それでも、明日は来る。
三人は変身を解き、元の制服姿に戻る。ルビィはまたどこぞの空間に消えるのではなく、アスカの肩の上に乗っている。
「結局、分かったことと言えばメイ先生が結構私生活は荒れてるってことくらいでしたね」
ちらちらと後ろを振り返りながらチカが呟く。
分かったこと……やはりあの魔法少女の正体は
いろいろと追い詰められすぎである。しかしまあ彼女が魔法少女(?)であることは確定したのだ。逃げるわけじゃないのだから問い詰めるのは明日以降でもよい。
メイは結局最後まで魔法少女の姿のままであった。スーツを着た長身の男性と魔法少女の格好をしたアラサー女性、なんとも言えない組み合わせである。見ようによっては凄く特殊なイメクラから飛び出して来た客と嬢に見えない事もない。
「やぁ~、でもあのイケメンは良かったな。あんなイケメンと知り合いなのかな? メイ先生。婚活してるのに」
「でもロリコンって言ってたし(自分で)、メイ先生もいきなり殴り飛ばしてたからね」
マリエはまだ突然現れたイケメンが心残りだったようだ。
「ルビィは、あの男の人の事も知らないの?」
「知らないし、興味もないッチ」
チカの質問にルビィはけんもほろろの態度である。
「あのロリコンもメスブタもどうでもよくって、そんな事より一般人に戦わせて、魔法少女が見てるだけなんて許されないッチ。このままなら、魔法少女としての力をはく奪することも考えられるッチ」
「剥奪されると……どうなるの? 私達魔法少女の事って、一般人には秘密なのよね? じゃあまさか、記憶を消される、とか?」
「記憶……って消えるッチ?」
三人の表情が微妙にかげる。「このサル、またバグりだしたぞ」と。
「いや、ルビィ。こっちが聞いてるんだけど……」
困ったような表情でチカが話を続けるが、ルビィはまだ、よく言えば純真無垢な目、悪く言えば感情の読み取れない不気味な獣の目で言葉を続ける。
「記憶が消えるとか言い出したのはチカちゃんッチ。言ってる意味が分からないッチ。説明責任を果たして欲しいッチ」
ダメだこりゃ……
三人は諦め、それ以降言葉を発することなく帰路についた。
――――――――――――――――
「くそっ、完全に酔いがさめちゃったわよ」
「お前こんな時間から酔ってるのか?」
メイが愚痴るとティッシュを鼻に詰めながらスケロクが尋ねる。どうやら殴られたこと自体はあまり気にしてないようである。
「どうだ? 積もる話もあるし俺の行きつけのバーで飲み直さねえか?」
「なによ、あんたそんなダサい口説き方する男だったの? 私の事が気になるの?」
「久しぶりに会った幼馴染みが三十過ぎて
ごもっとも。
メイは自分の服装を見直す。よく見れば返り血もついている。
「ま、いいわよ。その前にちょっと着替えてくるから待ってて」
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