第15話 妹との再会は
決着をつける為にラフエル帝国に向かうことにした。ペジタの街から南西に歩き出した。今回も歩きである。旅の商人の馬車を使う選択肢は無かった。
そう、命がけでラフエル帝国に向かうのである。旅の商人を巻き込む訳にはいかない。
それから、帝国領地に入っても何事も起きなかった。更に進むと首都のガリに着く。
「お姉様、何も起きませんでしたね」
「あぁ、怖いくらい順調に首都に着いた」
とにかく、『零式』の情報通り、大図書館に向かってみよう。図書館の中は思いのほか広く静かであった。
「歌姫?なんの事だい?」
職員に聞くが軽くあしらわれる。
「そうだ、この図書館にある本から魔導の事が調べられないかな?」
紗雪は後ろ向きの返事を返す。
「だって、わたしは勉強が苦手です」
仕方がない、一人で探すか。
えーと、魔導、魔導、と……。錬金術に黒魔術と続き、この辺か。わたしは魔導に関する場所を見つける。
あるのは、二冊だけである。
『魔導入門書』
『魔導で滅ぼす世界』
はて、どちらが正解なのだ?両方とも色あせているが、ただ違うのが『魔導で滅ぼす世界』の方が最近、読まれた痕跡がある。
こちらか……。
わたしが『魔導で滅ぼす世界』を本棚から出そうとすると。本が途中で止まり、横の壁が動きだす。隠し扉!確かに正解だ。隠し扉の先は地下に続く階段であった。中に一足入れると自動的にオイルランタンに火がつく。
お、降りるのか。
わたしは少しの戸惑い共にゆっくりと進んでいく。そして、行き着いたのは書室であった。魔導関係の本がずらりと並び、机の上にはメモが大量に置いてあった。更に何か調べていると……。
日記帳だ。
『〇月×日、陛下から魔導の研究の命令がくだる、断れば死刑である』
『〇月×日、この世界にある凛銀は極めて少なく、通常軍備には使えないと進言』
『〇月×日、魔導の技術でゴブリンの強化に成功、陛下は血族の村で威力を試せと言われる。その後の悲劇は……』
『〇月×日、陛下は血族の奴隷を買い、魔導の実戦配備に使えとの指示。その奴隷は暗殺部隊に所属が決まった』
『〇月×日、凛銀の残量がほぼ無くなる。凛銀の大量消費で世界の終わりとなった、神龍との決戦を話し出す。それは魔導の天敵である神龍に目をつけるモノであった』
『〇月×日、陛下は神龍の復活を決断、魔導の研究者であるわたしは自由になれた。故郷の村に帰って、引退しようと思う』
日記帳はここで終わっていた。
わたしは図書館の前で待っていた。紗雪と合流して国立大図書館を後にした。
「お姉様、元気がないですね」
「あぁ、血族の村とか、血族の奴隷など、引っかかる単語があって」
地下にあった日記帳の文書である。それは、日記帳が本当なら双子の妹はラフエル帝国の暗殺部隊にいることになる。しょげていても仕方がない。わたしはトボトボ歩き始めると。
「お姉様、とにかく、ご飯にしましょう」
わたし達は安そうな店を探すが、あるのは最高級のレストランばかりである。
「少し、裏通りに行ってみる?」
「はい、お姉様。でも、嫌な予感しかありません」
そう、この街は綺麗過ぎるのだ。それでいて活気はなく。ゴーストタウンに近い。
で……。
裏通りに入ると死臭である。ペジタの裏通りには生活の臭いがしたが、ここの街は死臭であった。
「どうやら、紗雪の予感は当たったな」
それは、貧しい者は死あるのみと見えた。すれ違う人々は目が死んでいた。
そうそう、ご飯であった。わたしはすれ違う人に食べ物屋がないか聞く。
「食べ物屋?ここは酒とタバコしかないよ」
うーん、パブに行けばつまみくらいあるか……。わたし達はパブに一歩踏み入れると、明るい歌声が聴こえてくる。
♪♪♪
その歌姫はハーモニカとギターで歌っていた。そして、その歌姫は少し小さめの三日月銀のペンダントをしていた。
「アリサ?」
わたしの問いに歌姫は「ブルー姉さん?」と返す。
そう、生き別れた妹のアリサであった。
「姉さん、会いたかったわ、こうして三日月銀を持ってきてくれた」
!!!!
アリサはわたしに近くに寄ってくると、三日月銀のペンダントを奪い取る。
「な、なにをする?」
「わたしはこのラフエル帝国の暗殺部隊のメンバーなの、陛下の願いである神龍の復活の為にこの三日月銀が必要なの」
アリサ……。
「その、幸せそうな顔は何?わたしはあの晩から奴隷になってアドギス皇帝に買い取られて、血族と魔導の力を使って、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺しつくしたわ」
「……すまない」
わたしは古都リズムでベルサーに拾われて生きるすべを教えてもらった。そう、辛いことなど無かった。
「そうだわ、ブルー姉さんも一緒に神龍の封印されている。凍結湖に向かいましょう、そこで、絶望を与えてあげる」
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