第11話 海水浴 そして……。


 到着すると、早速、併設している、海の家で水着を買う。


「お姉様、恥ずかしいです」


 フリルワンピース水着のどこが恥ずかしいのだ?それに比べてわたしはビキニだぞ。


「だから、何故、海水浴なのです?」

「わたしは紗雪に世界の全てを見せると誓った。この海水浴もその一つだ」


 勿論、ただ遊びたいなど言えるはずもなく。わたしは世界の全てだと言い切る。そこでだ、海の家でカキ氷を注文して食べ始める。


「氷にシロップをかけただけの物がこんなに高いなんて……」

「そう言うな、このサンザキ港横の海水浴場では氷が珍しいのだ」


 そう、この港町はモンスターとの戦の歴史を刻んでいた。ペジタの様に強固な守りが無く。幾度となく町が陥落しているのだ。ゆえに、塩の供給が不安定になり、貴重品となっているのだ。


「さて、もう一泳ぎしてくるか」

「わたしは嫌です」

「そうか?でも、カキ氷を売ったりするなよ」

「……」


 この沈黙はマジだ。氷目がカキ氷を作る。コストはホントにシロップだけで済む。


 あーダメだ。大人の事情がある。


「ここは『海の家ギルド』が支配している。賠償金がいくらになるか分からないくらい取られるぞ」

「はーい、大人しくしています」


 紗雪は焼きそばを注文して食べ始める。この港町は遥か東方の文化でも売りにしているのか?


『零式』を眺めながら小首を傾げる。


 紗雪を海の家に残してわたしが海で泳いでいると。


「お嬢さん、一人?」


 何か嫌な感じのイケメンが話かけてくる。


 ナンパか?


 短剣があればこのウザイ、イケメンを追い払う事ができるのに。


「まぁ、そう怖い顔するなよ」


 愛想よく笑顔で言葉を発している。何だ?この違和感は……凄まじい負のオーラが満ちている。


「貴様、何者だ?ただのナンパでないな!」


 わたしが警戒の疑問をぶつけると不気味な笑みを浮かべる。


「これは失礼、わたしはラフエル帝国の皇帝アドギスである」


 皇帝アドギス?本物か?とにかく、ヤバイ人物、目をつけられた。ここは取って置きの体術を使う事にした。わたしは渾身の一撃を放つのであった。しかし、アドギスは軽くかわしてしまう。


「ちっ」


 下半身が海の中なので威力が半減したか。


「大丈夫、今日は挨拶だけだ。覚えておけ、我が名は皇帝アドギス・ラ・ラフエルだ」


 そう言うと、アドギスは水面に手をかざす。海面が滝の逆流ごとく水が空に上がり、水の壁を作る。しばし、動けない状態が続くとやがて、その術が解ける頃には皇帝アドギスの姿は無かった。


 とにかく、紗雪の下に向かおう。それから、紗雪と合流するとランチにする。ここは貿易都市ペジタの海の入口であるサンザキ港だ。パン生地をフライパンで焼いたモノや。唐辛子をメインした香料スープ。生野菜に謎の液体のかかったサラダ。食文化も混ぜ合わさっているのだ。


「お姉様、元気がないですね」

「あぁ、皇帝アドギスを名乗る者に会って」

「新手のナンパでなくて?」

「それが、オーラが違うのだよ……」


 ……。


 しばしの沈黙の後のことである。


「お姉様、ご飯が冷めてしまいます」

「そうだな、食べるか」


 そう、オーラ違っていた。一目会うと、カリスマ性のある人物であるが、その生活は贅のかぎりに、数え切れない部下、何より冷徹に拷問など、鬼になる人物のオーラであった。それは、わたしが説明しようとすればするほど難しく考えてしまうのであった。


「お姉様!」

「わかった、わかった、廃墟の街エスタに向かうのだったな」

 

 しかしだ、ラフエル帝国の暗殺部隊が動いていると言っていた。夜はどうしても危険になる、今晩はこの街に泊まろう

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