第5話 隠れ里

 そして、里に着くと人気はなく静かであった。イヤ、違う、気配はする、隠れているのだ。


「我が名は、リズムの盗賊、ブルー・ザ・イスマールだ。ここの民は占いができると聞いた。心当たりのある者に会いたい」


 わたしは里全体に届く大声で反応を待つ。すると、老婆と12歳ぐらいの少女の二人が現れる。


「お主は『氷宝』が目当てでないのか?」


 『氷宝』聞いたことがある。氷目こと雪女が死した時に『氷宝』なる宝石に変わるとの噂だ。


「わたしは生き別れた妹を探しているだけだ」

「そうか……では、条件がある。この紗雪に勝てたら、占ってやる」

「わかった、勝負だ」


 わたしは短剣を抜くと紗雪もまた、白い長い髪からかんざしを取り出す。そのかんざしは弓の形になり、更に白い髪の毛を抜くと矢となる。


 うん?目の色が変わった、漆黒の瞳が青白くなる。


 本気ってことか……。わたしは改めて作戦を考える。さて、長距離型の攻撃か……『天殺』でふところの間合いに入れば勝機はある。少女は高速で矢を放ってくる。戦闘開始であった。当たり前だが、余裕はない。そう、矢の連射は高速であったからだ。ここは力押しでいくか。わたしはスピードを加速させて紗雪に特攻する。そして、紗雪の首に短剣が届く間合いに入った。


「勝負ありだ」


 わたしの一言に紗雪は笑顔でいた。


「単純なお姉さんね」


 この笑みはヤバイ、わたしは急いで紗雪との距離を取る。少女が『大地の氷刃』と叫ぶと地面から氷の刃が噴き出す。


 ふぅー


 一瞬の判断と得意のスピードでかわせた。しかし、紗雪は自ら放った氷の刃で重症をおう。それは弓矢で敵が倒せなかった時の自爆攻撃かと推察する。普通なら氷の刃で串刺しだ。わたしはこの得意のスピードで命拾いをしたのであった。


「客人よ、お主も血族であろう。だから、本気で戦ったのだ。この氷目の里の者が哀れだと思うなら、血を分けて欲しい」


 老婆が語り始めた。


 血か……。


 わたしは少女に近づくと腕を捲り上げて差し出す。すると、少女はガブリと牙を向ける。血族の血は特別である。それは血の契約に等しい。紗雪はわたしの血を吸って傷が治っていくのであった。元気になった少女は立ち上がり。頬を赤くしている。


「血の契約を結んでしまいました。これでわたしは貴女の刃です」


 刃か……。


 この少女は一生、わたし無しでは生きられない体になってしまったのだ。


「老婆よ、何故、この様な事をする?」


 わたしの問いに老婆は真剣な表情で語り始める。


「はるか昔、東方の国から逃げてきて、この地に住み始めたが、ここは閉ざされた血族の里です。若い者には外の世界を見て欲しかった」


 それは紗雪に出合ったのは運命的なことだとおもった。


「わたしでいいのか?」

「はい、貴女は剣術だけでもなく、心も強い。この出会いは、良いきっかけなのです」


 しかし、強引だな、わたしなんかに旅の案内をさせるとは。


「お姉様、わたしは紗雪、よろしくお願いします」


 わたしは紗雪の挨拶に頭をポリポリかいて対応すると、紗雪は頬を赤らめる。


 若干の百合展開は戸惑うしかない。


 そうだ、占いであった。わたしが老婆に占いの事を言うと。老婆は頷き、家の中に案内される。


 占いの道具は石と鳥の羽根、独特のカードなども使う。わたしは静かに見守ると占いが始まる。カードを並べてその上に石と羽根を投げる。

結果が出たらしいが、老婆は難しい顔をしている。


「何も出ないね……」

「失敗したのですか?」

「イヤ、違う。これはわたしの能力を超えた事象です『二つの三日月が合わさる時に……』と、しか出ない」


 わたしは落胆していると。紗雪がやって来ると。


「ババ様、お姉様、お食事にしましょう。鹿肉をご馳走します。わたしはこの氷目の里での最後の晩餐です」


 そうか……。紗雪は明日にはこの里を離れて一緒に旅に出るのであったか。やはり、紗雪と血族の契約を結んだことに若干の後悔をする。すると、わたしの表情を見て紗雪は嬉しそうに話始める。


「お姉様、わたしはワクワクするのです。明日から世界中を周る旅ができるのです」


 その表情に曇りは無かった。わたしは試しにグータッチをしてみる。拳が触れ合い何とも不思議な気分であった。


「えへへ、お姉様ったら、大胆です」


 子供の様に喜ぶ、紗雪であったが、確か12歳くらいだと言っていた。しかし、血族によっては歳の取り方が違う場合もある。ここは、深く考えるのは止めよう。わたしの心は決まった、この紗雪と共に旅に出ることだ。


「よし、世界の果てまで一緒に行こう」

「はい、お姉様!」

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