第8話

しばらくして、真っ白な濃い霧も、フワーッと晴れ渡っていった。また、まわりの友達みんなのことも見えてきた。

山の頂上付近にいるとばっかり思ってたけど、ボクと愛ちゃんと、高校のみんなは、きれいな海の中でチャプチャプ浮かんでいた。


「みんな~、船に乗って~。大阪の高校に帰るわよ~」

って先生に言われて、みんな船に乗りこんだ。

「あれ?高校のみんな人魚だ」

まわり全員、先生も、みんな人魚だ。

愛ちゃんも。ボクも人魚になっている。


人魚のみんなを乗せた船は、海から、フワーッと浮きあがると、空に舞い上がって、そのまま空をビューンと進んで、高校に帰った。


高校は海の中に浮かんでいた。

人魚のボクは、自転車にも乗れて、それに乗って、空を飛んで、家に帰った。


家に帰ったら、空里もママもパパも人魚だった。

「おかえり~」

って普通に言われた。

「修学旅行どうだった?」

って聞かれて

「きれいな良き風景だったよ~」

って答えた。

「それは良かったね~」

って、みんな言ってた。


部屋に入ったら、香絵ちゃんに

「修学旅行おかえり~」

って言われて

「香絵ちゃんも、行ってたやろ」

「そうやった」

「なあ、香絵ちゃん。うち、人魚なん?」

「みんな人魚やで」

って言ってる香絵ちゃんも、人魚だ。


次の日、また自転車で高校に行ったら、高校は海の上に浮かんでた。

教室で、愛ちゃんに会った。愛ちゃんも、みんなも人魚だし、先生も人魚だ。

美術部で絵を描いて帰った。


日曜日になったら、空里といっしょに、可愛い小学生に、空里は水泳、ボクは絵と合唱を教えに行った。


高3になったら、空里も同じ女子高に入学してきた。

毎朝、いっしょに自転車で空を飛んで高校に通学している。


ボクは小学校の先生になろうかなと、大阪の教育大学の美術専攻を受験しようと思っている。

愛ちゃんは芸術大学を目指している。


家の部屋では、香絵ちゃんに

「うちと会えるのも、高校生までやから」

って言われた。

「え~、なんで~?」

「なんでって言われても、中学生から高校生までの間だけ、うちらは、部屋の子のところに現れることになってるからな~」


高校の最後の文化祭では、海の幻想的な風景画を描いて、展示した。

空里もクラスの友達といっしょに見に来てくれた。

「あやめっちの描く風景画、めっちゃきれいで好き。こんな幻想的な海に飛び込みたいなあ~」

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