第7話

「あやめっち、人魚の小学生に、絵と合唱を教えてくれない?」

って空里に頼まれた。

「ボクで良いなら、教えるけど」

「やったあ。じゃ、今度また、いっしょに行ってみよう」


次の日曜日に、空里といっしょに海に行った。

「あやめっちは、みんなに、絵と合唱を教えてくれるよーっ」

って紹介してくれた。

「わ~い」

って、可愛い、ちっちゃな人魚たちは喜んでいる。

その日から毎週日曜日に、絵と合唱を教えはじめた。

高校でボクも油彩画を習っていたから、人魚たちにも、同じく油彩画を教えてみた。

みんな面白そうに絵を描いている。

それから、小学生の時に、少年少女合唱団で歌ってた歌を、みんなにも教えて、いっしょに歌った。

ちっちゃな可愛い人魚たちは、みんな歌うことも好きで、ボクの教えた歌を喜んで歌っている。

毎週日曜日、4回教えたら、給料をもらえた。

ボクも週1回、先生としてのお仕事を始めた。


学校で愛ちゃんや先輩に、絵と合唱を人魚に教えてる話をしたら

「いいなあ~」

って、みんな言ってた。


高2の時、富士山に修学旅行に行った。

高校からバスに乗って、空を飛んで富士山の5号目まで行った。

5号目からは歩いて登った。

愛ちゃんと手をつないで登っていった。

頂上付近に、大きな鳥居立ってて、愛ちゃんといっしょに、その鳥居をくぐった。

その瞬間、真っ白い濃い霧、フワーッと急に立ち込めてきた。

今まで見えていた富士山の景色も、まわりのみんなのことも見えなくなった。

手をつないでいた愛ちゃんだけは、白い霧の中でも、ちゃんと見えた。

なんだか、めっちゃ神聖な感じもしてきた。

なんとなく、富士山に

「よく、ここまで登って来てくれました」

って祝福してもらえてる感じだ。

しばらく、真っ白い霧の中で、愛ちゃんと抱き合っていた。


「着いて来ちゃった」

って香絵ちゃんの声だけ聞こえてきた。

「えーっ、ここまで登ってきたの?」

「あやめっちの背中におんぶしてもらってた」

「こらーっ、あほかーっ」

香絵ちゃんの姿、うっすらと見えてきた。


そしたら

「あっ、これはこれは、はじめまして。紫式部さんの...」

って、愛ちゃんのほうの霊の女の子と、香絵ちゃんは、あいさつし始めていた。

「あ~、そうですね~」

って、しばらく、愛ちゃんの霊と、しゃべっていた。

「うちの弟子なんですよ~。ほんとに、もう...」

って、たぶんボクのことも話してた。

「ほんとに、もう...」って、どういうことだ?

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