第6話

部屋で香絵ちゃんに

「なんで香絵ちゃんは、ボクの部屋にいるの?」

って聞いてみた。

「なんでって、最初から、うちは、この部屋に住んでたからやけど」

「ふ~ん。そうなんや。香絵ちゃんは芸術家?」

「文章とか絵とかを描いたりしてるよ。うちは伊勢さんの弟子やから」

「伊勢さん?」

「百人一首とかの伊勢さん、あやめちゃんも知ってるやろ?うちは伊勢さんの弟子で、あやめちゃんは、うちの弟子なんやで」

「えーっ、やっぱり。なんか、そんな感じしてた」

「あやめちゃんのことも、伊勢さんから『よろしく頼みます』って言われてるから」

「えーっ、伊勢さんから?凄~い」


高校の同じ美術部で仲良くなった愛ちゃんに、部屋の女の子の香絵ちゃんの話をしてみた。そしたら愛ちゃんも

「うちの部屋の女の子は、紫式部さんの、お弟子さんの方やで」

「そうなんや!愛ちゃんの部屋にも、いてはるんやね」

「中3になると、話しかけてくるみたいやね。みんな」

「えーっ、でも、妹の空里は、まだ中1やのに『しおりちゃん』って言ってたな~」

「早い子だと、中1くらいで話すらしいよ。空里ちゃんとしおりちゃんは好きなこと似てるんだよ。きっと」

「ふ~ん。そうか~」


夏休みに、美術部で、琵琶湖に合宿に行った。

愛ちゃんと、2人の先輩もいっしょに。

みんなで、琵琶湖のきれいな風景画を描いた。

夜は、みんなでいっしょに、お風呂に入った。

お湯につかってたら

「着いて来ちゃった」

って香絵ちゃんの声、聞こえてきた。

だんだん香絵ちゃんも、お風呂に入ってる姿、見えてきた。

「うわ~、香絵ちゃん、来てたのかあ?」

「あやめちゃんにしか見えてないから」

「香絵ちゃんのおっぱい可愛いなあ」

「えへへ」


家に帰って、空里の部屋に行ってみた。

「しおりちゃん、こんにちは~」

「しおりちゃんも『こんにちは~』って言ってるよ」

「しおりちゃんは、どんな女の子?」

「水泳をやってる子だよ」

「えーっ、空里といっしょやん。凄~い」

「水泳を教えてくれるんだよ」

「良かったやん」

「うん。しおりちゃんで良かった。ね~、しおりちゃん」

って言って、たぶん、しおりちゃんのいるほうに微笑みかけていた。



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