シーズン1ラスト・8話まで

 なんだか開いた口が閉まらない。

 ストーリーが、脚本があんまりに悪いとは思っていたけれど、こんなラストですかい?

 まぁ、シーズンが5まであると言っているので、さあこれからが冒険ですよ、ってわけなんでしょうね。

 でも、はっきり言いますが……この作品を名作にしたいなら、脚本家を変えるべきだわ。

 幼稚すぎる。小学生並みじゃ。


 とにかくこの最終回はツッコミどころが多かった。

 ハルブランド、死にかけの大怪我で馬に乗るのかよ? と思っていたら、やはりほぼ馬の上で寝ていた。で、この行程が六日間? どこかで落馬して死んでるだろ?

 そうなれば、サウロン死んでめでたしめでたし、だったかも知れない。


 相変わらずの影像美なので、見ていて苦痛ではないんですけれどね。

 最初はニヤリとできた映画へのオマージュもここまで来ると、飽きがきます。オリジナルで見所が作れないのか? これも、あれも、映画で見たシーンじゃないか! になってくる。

 感動的な旅立ちのシーンのはずも、今までの盛り上がりがないから、くどすぎる。そうそう、これも、フロドの旅立ちシーンやビルボとの再開シーンなどを意識した演出だから、長くなってしまうのだ。

 お母さんお父さんが、ノーリを旅立たさせる心境に変わったことも、全てが唐突すぎる。しかも、前回一緒に旅立った仲間は、早々と解散なのだし。


 美しい敵役も、一体なんだったのかわからないまま、退場となってしまった。

 そもそも、イスタリとサウロンを間違えて追いかけるのは、一体どういうわけだったのだろう? その謎も解けていないけれど、今までの展開を考えると、特に理由はないのだろう。そこが、このストーリーの薄っぺらなところだ。


 結局、第一シーズンは、ガラドリエル様が勝手に勘違いして周りを振り回した結果、散々な目にあって、サウロンに利用されておしまい、って話だった。

 ハルブランドがサウロンだった説は、かなりあったようだけれど、ガラドリエルと出会った頃は、中つ国にすら戻る気持ちはなく、作中でも言っていたように、ヌーメノールで鍛冶屋をやって平凡に暮らすつもりだった。これも演技だったのだろうか?

 だとしても、これらは、ハルブランドが失われた南方国の王の末裔というアラゴルンにも似た設定で、それと被らせるためで、むしろ、そのための演出。

 そのために、そもそもが南方国というサウロン側についた人間たちの国だ、という怪しい設定はあったものの、あまりに唐突な正体になってしまった。

 せめて、エルフの治療を受けて、本来の自分を取り戻すような演出がなされれば、ああ、そうだったの! になったかも知れないのに。


 何よりも「小学生並み」と思う展開は、ガラドリエルがハルブランドの言葉から彼を疑い出して、調べに行かせる……で、すぐに調べがついて、正体がわかる、という馬鹿馬鹿しい種明かしだ。

 そもそも、持っていたアイテム一つで勝手に王の末裔と思い込んで戦いに巻き込んでおきながら、そこまで調べていない、わかっていなかった、ってのがおかしい。サクッと調べてわかるような事実を、だ。

 実は、サウロンが生きている、と確信した件もそうだ。馬で走っていって、ヌーメノールの古書を見て、大興奮、確信して、兵を出せ、と言い出した。

 この安直な展開は、まるで小学生が書いたみたいじゃないか!


 凝った伏線がない衝撃の展開は、とことん馬鹿馬鹿しいだけだ。

 余所者がサウロンだったと勘違いさせようとする展開も、取ってつけたようで、しかも、あっけなく人違いだった……になっている。

 まぁ、敵側もサウロンが記憶を無くしている、彷徨っているという認識だったなら、ハルブランドもその状態で、共通の敵アダルを倒すために必死だったとも言えるけれど、その辺も何も書かれていない。

 この二人は、確かにいわくがあるし、アダルはサウロンを殺した、とも言っている。

 アダルとの戦いで、サウロンとしての記憶を失い、ハルブランドとして生きようとしていたのかも知れない。

 いずれにしても、圧倒的な悪であったサウロンが、少し人間性を持たされて邪悪ではない、そっちにも正義のある立ち位置の違う存在として描かれていくのかも知れない。


 その展開は、私は悪いとは思わない。

 でも、こんなどっちつかずな薄っぺらさでコロコロと動いていたら、説得力がなさすぎるだろ?


 遅すぎる展開。

 これだけ時間があったのだから、ハルブランドの過去を明かすべきだった。

 ハルブランドがサウロンと正体をバラすことなく、ガラ様が共感し、ハルブランドを鼓舞するような、そんな気持ちにさせるような演出を見せる、それが上手にできると、見ている方も、ああなるほどな、と納得できただろうに。

 そういうことができないってことは、やはり、脚本家が稚拙としか言えない。


 散々な書きようだけれど、アマチュアとはいえ、数多くのファンタジー作品を書いてきている身としては、やはり許し難いんだよね。

 映像が美しい分、勿体無いと思っているし、映像で誤魔化してストーリーをサボっているな、と感じてしまうからだ。

 それと……この力の指輪は、二次創作の範疇を越えていない。

 原作愛と映画愛は強く感じられるけれど、作り手側に「ファンだけ楽しめばそれでいい」という一般人への配慮、新しいファン層を掴もうという意欲を感じない。

 ゆえにとことん難解で、しかも、内容が薄っぺらいという状況に陥っている。



 力の指輪を見終わった後、映画をもう一度見直して夜ふかし。

 改めて映画の凄さを感じた。どんどん引き込まれてゆく。

 実は、期待値が大きかった分、二つの塔の出来が今ひとつ気に食わなくて、その後、かえって何度も見てしまう、という羽目になり、お陰で理解度が上がって好きになった、という経緯があります。

 カットされすぎて、エクステッドエディションで、やっと理解が深まった、というのもあり。

 だから、力の指輪も何度も見返せば隠された伏線に気がついて、なるほど、と思うのかも知れない、とも思うけれど、それはなさそうだ。ドラマだから、十分すぎるほど伏線を張れる時間はあったのだから。

 ただ、原作ファンにしか気がつかないような小ネタは見つけられるかも知れない。








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