俺とハンサムは異世界で暮らす、仕事をする、おっさん頼むわ

 ハンサム…お前は幸せだったか?俺はお前がいれば幸せだった。お前がいれば変な女に手を出さなかったかも知れない…なんで死んじまったんだ…ハンサムよぅ…

 何で死んだんだっけ?あぁ老衰って言われたな、そういえば…マウンティングの動きしながらベッドの下に移動してそのまま死んだんだよなぁ


 突然目の前に昔住んでた家とハンサムがいた…

 夢の中のハンサムはさっきまでマッサージしていたハンサムと違っていた。


 ハンサムが語った…

「もう僕の事は忘れてくれ…僕のマウンティングは犬の世界でナンバーワンだった。犬だけに」

 中身が全く無い一言が…夢の中のハンサムの最後の一言だった。



 光が差し込む…目が痛ぇ、耳も鼻も後頭部も痛ぇ…


「ご、ごしゅじんたまぁ…目がさめましたかぁ?」


 はぁ?なにそれ?なめてんのか?女神か?女神がまた煽ってんのか?

 よく見えないが何か人の形をした影が何かぬかしている。俺、また死んだ?


「ごごごご!ごしゅじんたま!おきてくらはひ!はやくはやく!」


 目の前に映る女、うわぁすげぇ美人。目鼻整い過ぎぃ!これモデルで確保したら俺編集長だわ、間違いなく編集長だわ。てゆーか、ヌ○ドなんか撮らなくても芸能人でいけるわ。これがあれか?異世界でのエルフって奴か?なぁエルフなんだろ?


「エルフですか?でもドスケベではないですよね?まいったな、状態異常かけないとな。麻痺、麻痺かけてハァハァ言わせたい」


 これはあれだ、状態異常が強い世界だ、女神はクソだしな、あそこに行った。やったぜ!


「エルフではごじゃいましぇんよぅ!えーっと…ハンサム?です?」


 ブチっ!


「貴様ぁ!軽々しくハンサムを語るなぁぁぁぁぁ!!!!」

「ひいいいいいい!?許してくらはい!許してくらはい!」


 なぜハンサム知っているのか知らんが、俺のハンサムを騙るとは笑止千万!

 あっさりと綺麗な女が土下座したが、これは俺を騙そうとしている。

 美人が俺に関わろうとするわけない=騙そうとしている=危険!関わるな、俺。

 そうやって危険を避けてきた。結果、メンヘラに刺されたがな!


「落ち着けよセーシ…お前、顔面から血を出しすぎてヤバい事になってたぞ?もうちょっと安静にしておけ…」


 あ、汚いおっさん。元トラックのおっさんだ。おめでとう、おっさん。

 おっさんは前世でデコレーショントラック。高速道路で炎上という情報もステータス画面で見た。

 しかも運転手は無事。高速道路で炎上したトラックが転生するなんて聞いたこと無い。すごい事やね?

 運転手は泣いてたぞ、アクションゲームのボーナスステージみたいに。


―――アンタ、本当にろくでもない事しか考えてないね。本当に死んだ方が良い…のに死なないし、アンタのおかげで世界は大変よ?―――


 何がだよ?俺なんにもしてないぞ?俺はただハンサムを撮影…ハンサム!?


「ハンサムは!?おっさん、ハンサムはどこだよ!?名犬ハンサム!」


 すると横の海外モデル顔負けの美女が自分を指さしてニコニコしている。馬鹿か!?

 俺は犬の話をしてるんだ!なんで見える地雷を踏むんだよ!

 奴隷商人見習いを狙った美人局詐欺にはかからない。俺は詐欺には超強いからな!


「ハンサムハンサムうるせぇな。いるだろうが、目の前に。お前がハンサムとか騒いで身体触りまくってた奴だよ」


 は?犬は?俺の愛犬であり、名犬のハンサムは?


「わらしは…いぬじゃありましぇん。神獣ドビエラという種族になりましゅ。いごよしなにっイタ!」


 なんか馬鹿にされた気がしたので頭を叩いてみた、だってそうだろう?いきなり意味分からない女用意されて『ハンサムです』ってドッキリだろ!おい女神!クソ女神っ!クソ!聞いてんのかクソ!


―――本当にどうしよもない野郎だなお前、どこの世界に女神をクソ呼ばわりするんだ―――


 いや、俺の読んでいた小説では高確率で女神はクソパターンが多かったが?


―――偏っているな、読む物がおおいに偏っている…まぁクソ人間に説明してやろう。それお前が犬だとか騒いでいた生き物だよ。途中でお前が狂ってハンサムとか騒いだ後、絶対気づいたらヤバいから内緒にしといたスキル使ったろ?【神眼】って言うんだけどな。転生する時に転生ステータス特権を全部犠牲にして、転生状況、死因、その前の人生を加味したら付いちゃった訳よ、トップクラスにヤバいのが。何がヤバいってお前みたいなエ■い事しか考えない奴に付いちゃいけないやつだよ。分かるだろ?【神眼】って言われれば。ちなみにこの神獣犬もどきにかけたのが【魅了】の10段階ぐらい上の最大の隷属【神従全隷】って奴だ。王族や魔王が喉から手が出る程欲しいやつぅそれ欲しくて戦争起きるねぇ―――


 何それ…俺、魔王とか戦争とか嫌なんですが…雑誌の編集長に…


―――ゥヒヒヒ、安心しろ。まず【絶対隷属】はアレだ。簡単に言うとお前の世界で言う所の「いつ如何なる時も愛する事を誓います」って奴だ。命をかけるどころじゃない、お前の意思関係無く、魂単位で永遠に離れない。本来は両方の同意でかかるもんなんだけどな?つまり同意したんだよ、2人とも。動物とご結婚おめでとうござます。ちなみにその、ドビエラ族のハンサムちゃんな?この世界だと、姿を現したらその国に革命が起きて滅びるって曰く付きの物件です。その熊っぽい耳と七色の髪、丸まってるけどドラゴンの様に強そうな尻尾、誰が見てもすぐ分かります。何せソイツは腐敗した権力者、まぁ権力者全般だな。見つけたら、ろくに調べず問答無用で襲いかかるバカだからです、権力者なんて少なからず腐敗しているのにねぇ〜なので見つけたらその国の権力者が全力で殺しに来ます。おめでとう!―――


 いやだから…俺は異世界で初めて雑誌の編集長にだね?なりたくてね…


―――そしてもう一つ!お前の【神眼】の使い方がヤバかった。ドビエラ族が完全服従している腹部の紋章を見せる姿で、何者かに従う、絶対服従すると宣言している非れもない痴態、本来ならレーディングアウトのチラシを世界に紙媒体でばら撒いた!まぁレーディング的にはアウトだけど?ある意味宣戦布告だし?エ■じゃなくて「お前ら殺す」という宣戦布告ですから勘弁しちゃう!凄いですね、一気に百万部以上のチラシの編集長ですよ!よ!革命編集長!世界は混乱の坩堝、今や各国が内外全てに疑心暗鬼になってるよ!どこにドビエラの主人がいるんだってね★ウケる!何故、私がこんな余裕かと言うと、直前でお前の担当をドビエラに変えたからな(笑)他人の不幸で飯が美味い―――


「いい加減にして下さい!セーシしゃまの事を悪く言うと怒りますよ!ね?セーシしゃまぁ❤また、マッサージ、してくりゃあ❤」


 く、くう、エ■漫画…命をかけたエ■漫画展開か?悪くない…訳ないだろ…平穏が…


「セーシしゃま!わらしにおまかしぇくだしぃ!いのちのきけんゼロ!足元ヨシ!安全確認ヨシ!お股の安全、確認なしぇ❤」


 何だ、このバカは…左目のフォルダを見る。あった…神獣ハンサム…何だよ、これ…ステータスもうむちゃくちゃじゃねーか…


 ハンサム@神獣ドビエラ

 たいりょく おおい

 まりょく だいぶおおい もりがあればむげん

 ちから つよい

 ぼうぎょ しなくていい

 ちのう 19……………

 前世・神獣ドビエラ族【反逆に生きる神】………

 “接続”ハンサム▶セーシ【えいえんしゅきしゅきだいしゅき】


 やばい…メンヘラに刺されその直後に遭遇し…次は昔の愛犬の名を騙る問題を呼ぶ馬鹿…俺の異世界生活が…夢のスローライフが…

 

「セーシしゃま!ちょっといいたい!わらしはバカじゃないれす!ちょちょちょことばはまだにがてだけど、これでもなんこも!くにをほろぼしイテ!」


 俺もバグっているのか、さっきから神獣とやらの頭を何回も叩いている…でも…馬鹿すぎて…


「だからばかじゃないれす!でぃぇもぉ♥たたいていいのはせーししゃまらけれすよほ❤」


 まさかコイツ…女神と同様に俺の思考が分かるのか…バカに…思考が…イヤだイヤだイヤだ!


「そのとおりれす!ばかじゃない!わらひはばからないれすよほ❤しゅきしゅきセーシしゃまぁ!」


―――おめでとうクソ人間、お前の異世界生活は始まったばかり!まぁ編集長になれて良かったですね!いっつ死ぬかなぁ?死んでもドビエラ付いてくるから安心しな、セロと一緒にね(笑)―――


 コイツ…いつかハンサムと転生勇者と人間族と他の神々と結託してこの女神ヴァージニアを殺す事を俺は誓った…これはその旅路の始まりである…


「よーし!ゔぁーじんなぁころしゅぞー!ごしゅじんたま!ふぁいと❤わらしはかたっばしからくにをほろぼします!わるいやつらはなまくびだー」


―――プフー!ドビエラがいる限り結託して殺すのは無理です、残念でした(笑)もっと私を愛せよ!尊敬せよ!―――


「なぁ…休めとは言ったけど…白目でブツブツ、女は意味不明な事言ってるし…お前ら大丈夫かぁ?」


 あ、おっさんの事、忘れてた…


「とりあえずおっさん、仕事くれ。出来れば最初は肉体労働が良い。何も考えたくない。ただ、身体を動かしたい」


 とりあえず俺の異世界生活の始まりは…普通に日雇い肉体労働するところから始まった…事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る