愛玩名犬ハンサムとなら何処へでも…まずハンサム写真集を作るわ
ハンサムが何か喋ったようだが無視した。
何故ならハンサムと俺の繋がりは音声ではない、肉体言語だからだ。
ハンサムが喋る訳ない。ハンサムはマウンティングで愛を語る。マウンティングで…全てを制す。
「おにぇがいしましゅ!♥わらひをダレだとおもってりゅ!♥やめれ!♥しんじゃう!♥カクカクカクキしてしんざゃう!♥にゃんれ!♥やめてれぇぇッッッ!♥うしょでしゅ!♥はんしゃむれすっ♥」
ガグクガクガクガグクガクガクガクガク…………
「おい…おーい…セーシ…おーい…お前…大丈夫か?」
―――お前、本気で頭がおかしいな―――
「ハンサムぅううううううううッッッ!!!」
外野が何を言っても無視、ハンサムと俺としか分からない戦いがある、言葉がある、愛がある。
見ろ、ハンサムの腰がガクガクしてる…これはハンサムマウンティングの愛しさと切なさと腰の強さ。
さすがハンサム、俺程度ではお呼びでない腰の強さ…
それに…忘れていた…ハンサムが亡くなってから俺が手に入れたもの…それはカメラ・ザ・テクニック…なんの興味も無いカメラ…適当にエ■でも撮るかぁと思いながら…それでも…いつか…もし会えたら…巡り会えたら…そう思って磨いた…技術、パターン、褒め殺し…
俺が撮りたかったのは一撮影2時間三万で群がるクソ女ではない!
パンツ回収されてんのに「私って芸能人になれるのかな?」とか抜かす女じゃない!
未成年なのに姉の保険証持ってくるやつじゃない!
パスタ作ったら靡くメンヘラ馬鹿じゃない!
全ては…この瞬間!ハンサムだった!ハンサムの姿を!ハンサムだけを俺のファインダーに収めたかったのだ!ウオアアアアアアアアアア
『ガシャァッ!ガシャァガシャァガシャァガシャァカシャカシャカシャカシャシャシャシャ…』
右目でシャッターを連射した、もはや目を閉じなくても撮れる!
上下左右、遠近全て!ハンサムのパーツを!全身を!まるで全てを写す様に!一片の取り残しも無いように!
「いいよぉハンサムいいよぉ!セクシーだねぇ、こんなのハリウッドスターでも出来ない顔だょぉ!躍動感ある足、素敵ですねぇ!いいですねぇ!」
俺の魂に連動するかのように、まずピントが超高速で合うようになった。
更にバタついてるハンサムから謎のハートマークが大量に出ていた。
「ギャア!♥ギャアアアアァァァァ♥ヤバビ!♥ぐるう!♥ぐるっぢゃうっ!♥なじぇわらひぎゃ!?♥」
「亜人になっちゃってるけど…これ、神獣ドビエラじゃねぇか…セーシ?聞いてる?」
―――うあぁ…コイツ、本当に、めんどくせえ事しかしねぇな―――
ハンサムはハートまみれだ!愛しているぞ!ハンサム!ハンサム!!ハンサム!!!
今度は俺の視界がバグった、ハンサムを撮っているのに、その空間小屋の中とおっさんの家(ボロ屋)、その他外の様子、全ての状況が分かった。
まるで大量にある監視カメラの様に、周りの状況が分かる。
そこから同時にその場にいるメスっぽい奴隷も撮った。
「皆きれいだょぉ!やっぱり人間なんかより君ら亜人が一番!心も身体もキレイキレイ!綺麗だよ!本当に何て美しい!可愛いなぁ♥皆、なんてキレイなんだ!俺おかしくなっちゃうよぉ!」
「「「「ヒギィー♥アギャアアアアァァァァァァァァァァ♥」」」」
「うわ、そこら辺の奴隷が騒ぎ始めた…セーシ、お前のスキルとやらか?いや、セーシ、お前ヤバいって…目と鼻と耳から血が出てるぞ…」
視界が更に広がる…この世界のあらゆる所が映る。草原、山、海、普通の街、栄えている街、城、戦争してる所…こんなもの、何も興味無い。
俺はただ、ハンサムをハンサムをおおぉぉぉ
「わらひはしんちゅーしゃないれす!♥はんしゃむれす!♥あらたにしたぎゃいましゅ!♥しゃかりゃったら!けしゅてくだしやひ!♥にゃんでもしゅてぇぇぇぇ!!!♥れいぞくしましゅ♥いっしょういましゅ♥」
―――あーあ、神にやっちまったか…お前が一番ヤバいじゃん…異世界勇者が最後にやるかやらないか悩む神への挑戦という選択を、異世界に来て速攻やるなよなぁ。しかしまぁメンヘラで…転生者しか持たぬスキルと狂った性能のドラゴニュートに、引きこもりで陰気でめんどくせぇ神々に挑んだ脱走者…神獣ドビエラのセットってマジ終わってるな…マジで同行しないで良かった、巻き込まれたら地獄だなコレ…テレパシーで煽るぐらいが丁度良いわ…まぁ、ドビエラ…今はハンサムだっけ、昔のよしみだ、せいぜい堕ちた神として頑張れよ(笑)―――
俺は一度世界に散った視界を全てハンサムに向けた。
視界が赤黒い渦巻きのようになり、目の前がハンサム一色になる…まるで俺の全てをハンサムにぶつけているような、ハンサム愛に尽きるこのエネルギーと感情のぶつかりを右目のシャッターに込める…
気づけば左目も開いており、ハンサムフォルダが何層にも発生していた。ありとあらゆる角度、顔、ポーズ、全てフォルダ分けされている。
更に印刷ボタンみたいなものが出たから左目で押しまくった。ハンサムの写真をばら撒くのだ!ハンサムにフォトショは要らない!モザイクは要らない!
世界をハンサムに染めるのだ!見よ!ハンサムの姿を!世界の愚か者共(現実世界で撮ったモデルの女)よ!
だって!そうだろう?ハンサム!そこら辺の雑魚女の為の俺じゃない!ハンサムの為の!ハンサムだけの俺…だ…ハンサム…お…れ…
「あいしゅて!♥あいしゅて!♥あいしゅて!♥あいしゅて!♥あいっ!♥あいっ!♥あいっ!♥あっ!♥あいいイイイイイイイっ!♥イイイイグウウウウウ♥♥♥」
「バババッバンザブーっ!いっじょにいぐぞぉあっ!ガっ!?」
ハンサムとピリオドの向こうへ行こうとした瞬間、後頭部の衝撃とともに、俺は意識を失っていった…急に冷静になり、ウンザリしたおっさんの顔が見えた…ヤベェ…おっさん黒幕…だった…の…か…?
「流石に仕事初日から、2人いきなり死人が出ても困るからなぁ…全く凄い拾い物しちまったよ…それにしても何だよコレ…大量に飛び散っているけど紙か?背中から大量に飛び散っていてけど…うわ、この亜人の卑猥な姿の紙が大量に出てる…この亜人…むか~し見た事あるけど…多分、神獣ドビエラ族だよなぁ…うわぁめんどくせぇなあ…こんな卑猥なもの…ヴァージニア様、怒らないかなぁ…」
―――フフフ、バーンズさん。貴方には伝えられませんが…一般人であればレーディングアウトですが?神獣であれば構いません、それが偶像になりますから…まぁとんだ恥晒しですけどね、天界には帰れないでしょうね…それにしても頼みましたよ、バーンズさん。馬鹿2人、責任を持って管理して下さいね…ぷぷぷ―――
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その日…世界中に謎の目玉が大量に発生した…「ガシャ」という謎の音が鳴り、転生してきた異世界の勇者達も駆り出された。
どのような攻撃も聞かず、どのような魔法も通用せず、目はギョロギョロ周りを見渡すばかりで全く意味が分からない。
そして目玉と目があったものは、謎の痴態が頭に入ってきて精神に異常をきたした。そりゃそうだ、いきなり痴態で頭一色になったら誰しも狂う。
さらに目玉から発生する謎の紙、美しい亜人の痴態である。
そして…知っているものは知っている。昔、人に、神に、矢を引いた亜人の神、神獣ドビエラ。
その姿を追って様々な獣や亜人が叶わぬであろう王に、神に挑んだ。熊と狼の中間の様な姿だが、勇猛果敢、美しくも神々しくもあり、その七色の鬣を持つ背中に、弱きもの、力無き者が希望を見た神獣のドビエラ族の姿。
そのドビエラ族の痴態、『奴隷になります』と宣言する哀れな姿に何を思ったのか?
そして王や権力者は知っている。
反乱と反逆の神、それが神獣ドビエラ。
あまりの事に戦争は中断し、幾つかの王国や帝国は混乱の坩堝におちた。
各国はドビエラを持つ者が…こちらが干渉出来ない目玉による視界共有を行っているのではないか?
つまり国の情報が筒抜けになるという恐ろしい技術、暗殺や作戦も全て抜ける、つまり現在最も恐ろしい状況にあると、各国がそれぞれの国を疑った。
どこの国が、どのような技術でこのような禁呪、もしくは狂ったスキルを持っているのか?それとも異世界のものなのか?
誰も分からない状況で、全てを疑う状況の中、戦争は停戦となった。
その恐慌状態の世界でスヤスヤと眠る2人と一匹?
片田舎の奴隷小屋では、もと愛犬への愛が暴発したバカと、天上界も下界も見下していた神獣と、元トラックの特に難しいことを考えない鬼が、昼寝をしていた。
この物語、異世界の楽しい職業という事で始まったが、どこへ行くのか全く分からなくなった。そもそも続くのかどうかも分からない。世界が困った。
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