異世界のレーディングは厳しいし、メンヘラは追ってくるし、

 さて、異世界1日目、てゆうか着いてまだ10秒程?


 クソったれ!俺の目の前には…落ち着け、落ち着け。既に危機だよ…


 漫画で見たことある…トカゲ人間より禍々しい、人間と竜の亜人、ファンタジーでいうと、現代風でいうと、ドラゴニュートとかいう種族の女が立っている。

 外見は人間で言えば発育の良い女子高校生ぐらいか?

 身体の所々に鱗があり、禍々しい角が左右非対称で生えている。目は爬虫類のそれだ。

 それがボディーラインの分かるなめした革の水着みたいな服とサイハイブーツ、長めのグローブと何やら宝石をジャラジャラ付けて立っている。

 ぶっちゃけ美少女だ…しかし…筋肉が…喧嘩は間違いなく強い…


 せっかく異世界転移したのにさ!

 訳の分からない森にいきなり置かれてさ!

 女神は何もくれなかった!

 チートもねぇ!魅了もねぇ!勇者は別のどっかで召喚か?一緒にさ!転移とかした仲間もねぇ!

 化け物が(俺の)周りをぐーるぐる!ふざけんなよ!

 なんだコレ、弱肉強食の世界ときたもんだ。

 メンヘラに刺されて死んで、転移してまた即死なんて嫌だ!


 「だからなに?なんだお前?…異世界から来たやつだろ?特徴がニンゲンっやつに似てるんだよなぁ?つえぇらしいなぁ?知ってんだゾ?オレでレベルとやら上げんだろ?なぁ?」


 近くに来て顔を覗き込んで来る…シッチャカ怖いし、この圧力…多分メッチャカ強い…シッチャカメッチャカだよ俺はもう…


「なぁ?なんか言えよ?お前はニンゲンかって聞いているんだが?強いんだろ?ニンゲン。勝負しようぜ?んん?お前、何か…アレ?何だ?お前…」


 こえぇけどやるしかない…俺は転移前は素人ヌ○ド写真雑誌の編集者兼スカウトマン兼カメラマンだった。だから何だ?

 俺に出来る事は…何とかこの化け物を手籠に…ぬ、ヌ○ドモデルに?…喋る…嘘を…閃いた!


「私は異世界では医者をしていました。貴方を治療出来ますよ?何かお悩みはありませんか?」


 医者=公然とヌ○ドを見ることが可能だ…まぁ日本だったら逮捕案件だがな…後、何も解決してないな。


「お前どっかで…い、医者?治療?ウ~ン…突然言われても…お腹が張ってる感じはするけど…いっぱい食べちゃって…」


 …良し!コイツ馬鹿だ。そして竜人の腸内をチェックだ!尻、つまり直腸検査だな!何も解決してないけどな! 


「分かりました…それでは尻の穴を…」


―――そのまま続けるとレーディングアウトになります―――

 

 は?何この声?ナイナイ尽くしで蹴り入れたクソ女神か?レーディングあんのかよ…アウトになったらどうなんの?基準は?


―――貴方の存在が消えます、貴方の世界のト・ジョーレーと同じですね―――


 まじかよぉ…即死かよ…しかもここまで来てまたト・ジョーレーかよぉ…

 何か、何とか何ねぇかな…俺は一か八か、脳内でカッコイイ、ドラゴンの姿を想像する。


「そこのイケてる貴女、ちょっと問題がありまして…あの、ドラゴンに変身とかって出来ませんか?」

 

 すると化物女はニコっと笑い、ちょっと嬉しそうに言う。


「おう、なれるぞ?でも力加減できなくなるからな

。ちょっとしたミスで殺しちゃうぞ?いいんか?」


 死ぬんかい…いや、やるしかねぇ…どちらにせよ選択肢は無いんだ…余裕ぶった態度で…イケッ!


「構いませんよ、ドラゴンになったら四つん這いになってお尻を見せて下さい。触診します…」


 すると大気が大きく震えると同時に全長10メートルぐらいのミニ…でもないな、十分デカイし暴れたら余裕で死ねるサイズの竜になった…

 その竜がまるでメス犬の脱糞ポーズ様に、大股開きの四つん這いになった。

 尻尾を柴犬の様に上にあげ、穴を見せつけて来た。


「それではイキますよぉ?」


「何だ何だ?よく分からね~が、ガハハハ、ドンとこいのすけ」


 なんか態度と発言にムカついた俺は、手に布を巻き(何かバイ菌とか入ったら嫌だからね)ネットで学んだ腰を使った右ストレートを思いっきりドラゴンのケツの穴に突っ込んだ。


『オオアっ!?アアアア?♥アアアオオオッッッ♥!?!?♥!?』


 ドラゴンはその姿らしからぬ、情けない声を上げ背中を丸め沢山の涙を流し、ヨダレと鼻水を垂らした。

 でも、何故かとても嬉しそうなのは、なんだろうな、このドラゴン…

 なんか見た事ある気がしたが気にしない。だって見た事ある訳ないしな(笑)


―――それはレーディングアウトです―――


 は?医療行為だって言ってんだろう?だったらエネマグラのwiki見てみろよ。胃腸科の先生舐めてんのか?前立腺肥大の患者が泣いてんぞ?それにコレ、ドラゴンだろ?俺の目にはドラゴンだぞ?格好いいドラゴン!


―――それは屁理屈です。分かりました、ではそのドラゴニュートが、その行為をどう思うかで判断しま―――


 よし!許可が出た!俺は全力で前立腺マッサージをする。前立腺!実は男性だけじゃない、何と女性にもあるんだぜ!それにこれは医療行為だからな、間違いなく。

 右腕をグアっと下方に下げポイントを探す…

 ドラゴンの腰がカクカクカクカクっと小刻みに震える。


「患者様あぁぁぁ!お名前はなんですかぁぁぁ?」


『シェロれしゅっ!♥どろこにゅーりょんのっ!シェロっれすっ!♥おいしゃしゃま♥なにやってるんれすきゃっ?♥こしが!こしがしゅごい♥』


「治療ですょぉぉぉぉ!まさかピンクなぁきもちでえすかぁぁぁぉぁぁ!?そんな訳ないですよねぇぇぇえ!?エ■漫画じゃあ!あるまいしイイィィ!」


「きもちよくっ♥ないれすっ♥ちりょー!♥おちゅちゅちゅちゅげくりゃしゃひ♥おにゃか!♥おにゃかガァ!♥」


 見ろよ女神、本人が治療だって言ってんじゃん。


―――あなたは、もう一回死んだほうが良い。今度は拷問とかのミスで一番辛い方法で―――


 うるせーなぁ、批判ばっかり…とりあえず終わらせるか?何か腸内に無いかな?言い訳出来そうなの…なんか…あ、なんかあった!丸い石っぽい!

 セイッ!


「アエアアアアアアアアッッ!?♥♥♥とぶんじゃう?♥にゃにかとぶんじゃう?♥わらしとぶんじゃう?♥トビッッ!?♥」


 ドスーンっ!シュワシュワ~…


 土煙の中からうつ伏せになった角女が涙と鼻水とヨダレを出し、白目を向き痙攣している、その他色々出た状態の女。横に衣服が置いてある。

 多分、彼女がドラゴニュートの…セロだっけ?

 ドラゴン形態は全裸なんだな…


―――レーディングア…―――


 分かったよ、アウトは分かったから。

 素早く布を被せる。

 しかしまぁナカナカの美女だな、これは眼福眼福…とか思っていると、右目に違和感…何だこりゃ?と思っていると何かカメラを覗いたときのピント調整みたいなのが出てきた。


 あ~ん?良く分からんなぁと思いながら左目を瞑ったまま瞬きしたら『ガシャァッ』とゴツめのシャッター音がした!?

 何これ!?怖い!!


―――ヤバい…このクズにスキルバレた―――


 何がだよ…なんだろうなコレ?今度は逆に左目だけ開けるとまるで右目で撮った写真の様なものがフォルダ化されている。

 一枚だけ入っている。さっきガシャって言って見えてた視界の写真がある。

 セロだっけ?フォルダ名にセロ@ドラゴニュートって書いてあるな。左目を動かして選択、瞬きすると決定みたいな感じで拡大された。

 

「ほえぇー詳しく何か書いてあるなぁ…」


 なんていうかステータス?みたいなものが表示された。この数字、高いのかなぁ…色々書いてある…な…ぁ…


 セロ@ドラゴニュート

 たいりょく 9821

 まりょく 6200

 ちから 9999

 かたさ 4801……

 ………前世・谷中芹香


 ウオアッ!?俺はその場を逃げた!

 芹香?谷中芹香!?あの芹香!?

 オイッ!女神ィ!巫山戯んなよ!芹香の前に落とすなんて気が狂ってんのかっ!?


―――美しいジャありませんか?貴方の後を追ったのですよ(ニチャア)―――


 顔は見えないが間違いなく凶悪な笑顔をした女神…畜生!現世で殺した奴の前に落とすって頭おかしいだろ!?この鬼畜っ!


―――そう言いなさんな、見てご覧なさい―――


 俺の頭に映像が、映し出される。

 刺されたときの新宿だ。

 血塗れで白目を向きながらニヤニヤしてる俺…抱きしめている芹香…アレ?こんな感じだったの?


 『誰かぁっ!彼が!婚約者の彼が刺されたの!助けてくださぁい!』


 は?お前が刺したんだが?何で新宿の中心で嘘を叫んでんの?救急隊員に搬送先の病院聞いてる芹香…


 シーンが変わり病院へ…俺の遺体の横に立つ芹香…


『何で死んじゃったの…私が…前世の幼馴染のセリカ・フォンテーヌって…言えないまま…大事な事…何も伝えられないまま…』


 いや、お前が殺したんだが?…ついでに俺に女の幼馴染なんていないし、撮影の時に住民票見たらお前の地元は青森だったじゃん、俺、地元神奈川だよ?幼馴染要素ゼロだけど?いや…フォンテーヌって…


『すいませーん、警察です。ちょっとお話を…』


 芹香は覚悟を決めた顔で俺を刺したナイフを自分の頸動脈に当てた。


『今からそっち行くね…絶対に追いかけるから!次こそは…素直になるからっ!』


 俺の遺体の前で血飛沫を上げ一度拭いたのに再度血塗れになる俺と芹香…ことセリカ・フォンテーヌ。パニックになる警察の皆様。そこで映像は終わった…


―――どう?気持ち分かった?愛ゆえよね―――


 どこがだよ!気が狂っとるっ!

 ちなみに多分だけど、俺の持っていた特撮エ■動画のヒロインがセラ・フォンテーヌという名前だった…つまり芹香の妄想である可能性が極めて高い。

 隠れて俺のスマホ見てたからな、コイツ。


 で、転生して出会い頭、素直に俺を殺そうとした…と。

 バカかよ!クソ!


 俺は全力で逃げた、後ろから『おいしゃしゃまーっ!♥まれーっ!♥』と聞こえたが、気にしない。

 とにかく逃げた。逃げ続け…なんか小屋があったからそこに入り…色んな意味で疲れ切っていたのでそのまま寝てしまった。最悪の異世界1日目だった。仕事どころじゃないんだが?


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