第8話 脱出イベント
階段を発見し上の階へとあがると、異様なまでに明るい部屋に出た。
「ここはエントランスか? しかし落ちている鱗が多すぎる……ここはもしかすると……」
「フゴ……?」
博士がなにやらぶつぶつ独り言を呟いている間、サンゴーはエントランスの中央に積み上げられた棚やベッドが気になった。
まるで祭壇のように左右均等に置かれたそれらの中央に鎮座しているのは赤と青のコードが伸びた銀色の物体。一見するとモーターのようなそれはコンクリート用のバイブレーターだ。
「フゴー!」
知能はなくとも知識は持っていたサンゴーはバイブレーターを見つけるや否や喜び勇んで駆け寄った。
「ばっ、待てサンゴー! それは――――」
博士の制止も間に合わずサンゴーがバイブレーターを持ち上げると、エントランスの隅の薄暗闇で赤い光が灯った。
最初は二つだった光は四つに増え、八つに増え、どんどんその数を増していく。
「フゴー?」と小鳥のように首を傾げるサンゴー。
「クリー?」と同じく首を傾げるクリちゃん。
「まずいまずいまずい! 二人ともすぐにそこから逃げろ! それは緑人魚の【宝物】だ!」
博士が叫ぶと同時にエントランスの物陰からぞくぞくと姿をあらわす緑人魚。
サンゴーが背負った剣の柄に手をかけるも「馬鹿者!」と怒鳴られた。
「緑人魚は赤や青みたいな単独行動をする人魚とはわけが違う! 奴らは特別に知能が高くて集団で生活する人魚だ! しかも緑人魚は人間が作った物に興味津々なんだ! 自分たちが気に入った物を宝物にして集団で大事にして、もしも宝物を奪う奴がいたら……多勢に無勢でボッコボコだぞ!」
「ラララー!」
「ウーウー!」
「ルルールー!」
物陰から姿をあらわした人魚は十体に増え百体に増え、その数をどんどん増やしていく。
サンゴーはじりじりと後ずさり、いよいよ踵を返して走り出した。
逃げ出したサンゴーを一斉に追いかけてくる緑人魚の大群。
サンゴーが階段を駆け下り廊下にでると、通気口や天上に空いた穴から緑人魚が先回りしてくる。
目の前の人魚をヴァイオレット・ソードで薙ぎ払い突っ走るサンゴー。
青人魚がいた宴会場にもすでに大量の緑人魚がなだれ込んでいたが、ブラックライトとヴァイオレット・ソードを使い分けて突破していく。
客室前の廊下に到着するも、天上から配管や機関部品が落ちてくる。
サンゴーは床の影を見ながらなんとか躱していった。
ようやく最初に訪れた客室に戻ると、サンゴーは丸窓から身を乗り出し、背中に装着しているバックパックを起動して一気に浮上した――――。
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