第6話 人魚襲来

 たまらず大量の気泡とともに悲鳴を上げながら尻もちをつくサンゴー。


 彼は床に転がった缶詰を触手で一つずつ回収していくクリちゃんを眺めながら小刻みに震えていた。


 全ての缶詰を回収すると、クリちゃんの頭部から飛び出していた触手がしゅるしゅると体内に格納され元の可愛らしい丸頭に戻った。


「フ……フゴー……フゴー……」

「なにをビビっている。クリオネなんだから触手くらいでてきて当然だろうが。ほらさっさと探索を再開しろ!」


 博士に怒鳴られ再び探索を始めるサンゴー。


 客室をすべて確認して廊下の先に進むと、床の一部が薄緑色に光っているエリアに入った。


「まずいな……」


 博士の声に緊張の色が滲んでいた。


「このエリアにはおそらく人魚がいる。みつかったら襲い掛かってくるから気をつけろ」

「フゴ?」

「人魚は地球を水浸しにしてくれたクソ惑星エウロパに生息していた地球外生命体だ。紫外線を嫌って深海に住み、どんな生物でも食べる貪欲さとある程度の知能を有するキモい生き物だ。しかも蓄光性の鱗や不死性まで兼ね備えている。気をつけろ」


 エウロパには長年何らかの生物が存在している可能性が示唆されていたが、皮肉なことにその可能性はエウロパが地球に衝突したと同時に事実として立証されたのである。


「フゴ」

「もしも遭遇したら右腕の義手に搭載されているブラックライトを使え。そいつを浴びせてやれば一定時間麻痺させることができる。その間に蹴り殺してもいいが奴らは不死だ。麻痺させるよりも時間は稼げるだろうが、まぁ状況次第だな」

「フゴッ!」


 サンゴーがさらに奥へと進むと、かすかに歌声が聞こえてきた。 

 薄暗い廊下の奥にぼんやりと赤い光が見えた。


「止まれサンゴー!」


 指示に従い立ち止まるサンゴー。


 赤い光は徐々に近づいてくる。


 金髪の長い髪を揺らし頭頂部には貝の髪飾りを付けた女性が姿をあらわした。


 ところが人間に近い見た目をしているのは上半身だけで、下半身は赤い鱗に覆われた魚そのものだった。


「赤人魚だ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る